やりたいことがいつまでも見つからない。自分にはなんの取り柄もないような気がする。そんな考えがぐるぐるとうずまき、不安を感じてばかりいないでしょうか。
じつは、筆者もみなさんと同じような状態にいました。そこで実践したのが、「好き」を100個書き出す方法。今回は筆者の実践結果とともに、その有効性をご紹介します。
「好き」を書き出す意義
朝活の有効性を発信する “朝イチ業務改革コンサルタント” 池田千恵氏は、「好き」を100個書き出し、そのうちの1個でも朝に実行することをすすめています。その目的は、朝活を継続しやすくするためです。
朝活の習慣をつけようとする過程では、たった一度寝坊しただけでも、「できなかった……」という挫折感を強く感じやすいものですよね。でも、100個の「好き」のなかからひとつ選んで朝に実行することにしておけば、たとえ寝坊した日でもやりやすいはず。それが「できた!」という感覚につながり、朝活を継続しやすくなるのだと池田氏は言います。また、朝活の成功を通して、自己肯定感を高めることにもなるのだとか。
ライブ配信プラットフォーム事業を手がけるSHOWROOM株式会社の代表取締役社長・前田裕二氏も、「好き」を書き出すことは有効だと言います。なぜなら、いまの時代は自分の「好き」をよく深めている人が有利になるから。
前田氏いわく、個人のスキルや仕事力がフォーカスされる「個」の時代だからこそ、「好き」を深めることを通じて「自分が何者か」「何をやりたいのか」を知ることが重要なのだそうです。
実際に、前田氏自身もかつて就職活動をした際、30冊ほどの「自己分析ノート」に「好き」をたくさん書き出したとのこと。徹底的に自分を知ることが、社会を「個」で生き抜く強みになる――「好き」を書き出すことは、自己分析の第一歩ともなるのではないでしょうか。
「好き」を100個、実際に書き出してみた
さて、じつは筆者はこのところ、何に対してもやる気がいまひとつ湧かず、また何に悩んでいるかもはっきり言語化できずに、ずっともやもやしている状態が続いていました。さらに来年度から社会人ということもあり、人生に焦りを感じることも。そこで、「好き」を100個書き出してみることにしたのです。
池田氏いわく、「好き」は「小説」「フルーツ」など名詞で書いてOKとのこと。一方、「歩く」「人と話す」など動詞で書くとよいと述べるのは、マーケター・戦略家の森岡毅氏です。池田氏と同じく「好き」を100個書くことをすすめる森岡氏によれば、「『好き』と感じる行動」を書くことは、自分の強みを分析し仕事の適性を見極めるのに効果的なのだそう。
今回筆者は、書いたあとの実践にもつなげたかったので、森岡氏推奨の動詞しばりで書くことに決めました。とはいえ、さあ書こうと考えてみても、意外なことに「好き」はなかなか出てきません。結局100個を一気に書き出すことはできず、ノートを開いたままにして、思いついたら書き足していく方針に変更しました。
そうして100個達成するまでにかかった時間は丸3日。普段の趣味から、内面的なこと、ほんの些細なことまで、内容は多岐に渡ります。以下が、実際に「好き」を書き出したノートです。
「好き」を100個書き出したら、突破口が見つかった!
先述のとおり、池田氏が示す手順では、「好き」なことを100個書き出し、そのうちたったひとつでも朝に実現させるとよいとのことでした。そこで筆者も、「自分は何もしていないし、何もできない」と自己否定に陥ったときに、書き出した「好き」のなかからひとつ実践してみることに。
たとえば、仕事で好きなことに携わってみたり、好きだなと思うことを本格的に趣味にしてみたりすれば、人生のなかで「できた」が増え、自己肯定につながるのではないかと考えたのです。
また、森岡氏が提唱する自己分析法も一緒に実践することにしました。その方法とは、100個の「好き」を以下の3タイプに分類するというものです。
- T(Thinking・思考タイプ):問題を解く、計算をするなど
- C(Communication・コミュニケーションタイプ):人と会う、人と話すなど
- L(Leadership・リーダータイプ):自分で物事を決める、人の世話をするなど
森岡氏いわく、Tタイプが多いなら研究職やコンサルタント、Cタイプなら営業職や接客業、Lタイプなら経営者や管理職と、自分が何に向いているかがわかるのだそう。筆者も分類してみたところ、ひとつの「好き」が複数のタイプに当てはまるもの、どれにも当てはまらないものもありましたが、Tが36個、Cが18個、Lが8個でした。
ここから気づいたのは、断然「考える」ことに関する「好き」が多く、「考える」は筆者にとってひとつのキーワードとなるということ。答えのない問題について考えたり、他人の考えを知ったりするのが好きなのだという新たな発見がありました。また「歩く」「ひとりで行動する」ことも同じくらい好きだと気づきました。
そこで実際に、感染予防に十分配慮したうえで、ひとりで買い物や食事を楽しむ休日を過ごしてみました。ひとりであちこち歩いていると、頭のなかが整理され、気分も軽くなっていくことを実感。そして帰りの電車で、行き詰まっていたゼミ課題の小説創作のアプローチをひらめいたのです。「好き」を書き出して実践することで、もやもやの突破口を開くことができました。
これは筆者の例に限ったことではないはずです。「好き」を書き出してみて、人と話すことが心底好きだとわかったら、とにかくいろんな人と話してみて、気分が上がったり悩みが解消されたりするかもしれない。本や映画が好きなら、浴びるようにさまざまな作品に触れてみれば、何かに気づくかもしれない。「好き」を書き出すことは、「自分をどんな状況に置けばうまくいくか」を知ることにほかなりません。あなたがいま、何かもやもやを抱えているのなら、自分の「好き」を可視化し、実践してみることをおすすめします。
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この実践を通して筆者は、うまくいかないときやもやもやしているときに自分を肯定できたうえ、状況を突破する方法もつかむことができました。あなたのもやもやした感情も、「好き」を書き出すことで、きっと解決できるはずです。
【ライタープロフィール】
梁木 みのり
大学では小説創作を学び、第55回文藝賞で最終候補となった経験もある。創作の分野のみでは学べない「わかりやすい」「読みやすい」文章の書き方を、STUDY HACKERでの執筆を通じて習得。文章術に関する記事を得意とし、多く手がけている。
(参考)
朝時間.jp|「好きを100個」書こう!寝坊の罪悪感をリセットする朝ノート術
朝時間.jp|早起きがワクワクに変わる!「100個の好き」を書き出すコツと活用法
前田裕二(2018),『メモの魔力』,幻冬舎.
プレジデントオンライン|「天職」のキャリアを導き出すただ1つの方法