絶対やめたい「脳に最悪」な3つの思考習慣。日常の “あの考え” が脳を破壊している

日常に潜む脳の悪習慣01

「最近、頭が思うように働かない」
「うまくいかないことがあると、すぐに諦めてしまう」
「人からほめられても、気分が晴れない」

もし心当たりがあれば要注意。脳にとって最悪な思考習慣が身についてしまっている可能性大です。日頃の行動や意識を少し変えるだけで、あなたの悩みは改善するかもしれませんよ。以下で詳しく見ていきましょう。

1. ネガティブなことばかり考える

物事を否定的にとらえたり、嫌な出来事を引きずったり、ネガティブな考え方をしたりするのは危険。じつは、マイナス思考は、脳を老化させる最悪な習慣なのです。

脳科学者で医師の米山公啓氏によると、ネガティブな考え方は脳にストレスを与え、海馬の神経細胞を壊してしまうそう。つまり、マイナス思考が癖になっている人は、自らの脳を破壊していることになります。

ではなぜ、私たちはネガティブになってしまうのでしょう。たとえば、以下のようなことはありませんか。

  • 上司との面談で、全体的にはよい評価を得ることができた。しかし、いくつか指摘されたマイナスポイントのことばかり考えてしまい、ポジティブな気分にはなれない。
  • 何年も前に友人に言われた嫌な言葉がいまだに忘れられず、そのときのことをいまでも反すうしてしまう。

ワシントン大学の心理学・脳科学教授ランディ・ラーソン氏は、こうした思考の傾向を「ネガティブ・バイアス」と説明しています。私たちの脳はポジティブな出来事よりもネガティブなことに注目し、それについて考え続けてしまうようにできているそう。

その起源は、私たちの祖先がまだ野生で暮らしていた頃に遡ります。脳は命を守るため、「あの場所は天敵がいたから近づいてはいけない」といったように、怖くて嫌な出来事を鮮明に記憶しておけるよう進化しました。その遺伝子を受け継いだ私たちは、いまでもネガティブなことに執着してしまう傾向があるのです。

嫌な出来事がトラウマとなり、ネガティブ思考になっていくのは、ある意味人間として正常なこと。だからこそ、意識的に改善していくことで、脳の健康を保つ必要があります。

そのために有効な手法として米山氏がすすめるのがほめ日記。やり方は簡単です。毎日寝る前に、今日のよかった出来事を5つほど箇条書きします。「朝早起きしておいしいコーヒーを飲めた」「先輩に感謝された」など、どんなに小さなことでもいいのだそう。ほめ日記を実践すれば、普段悪いことばかりに目が行きがちな人も、意識的にいいことに目を向けられるようになり、脳を喜ばせることができるのだとか。ぜひ取り入れてみてくださいね。

日常に潜む脳の悪習慣02

2. やるべきことを「あとででいいや」と考える

時間のかかるタスクや、面倒くさい事務作業、苦手なクライアントへの連絡など、ついつい嫌なことを後回しにしていませんか? メンタリストDaiGo氏によると、先延ばしをすると、後回しにしたタスクが気がかりな状態が続き、脳に負担がかかり、集中力を低下させてしまうそう。

また、ビショップ大学の心理学者フューシア・サイロワ教授いわく、先延ばし癖は健康被害のリスクも高めるのだとか。先延ばしを続ける人の脳では、ストレスによってコルチゾールという抑制ホルモンが分泌されます。それが継続すると、心臓への負担が高まるほか、肝臓に脂肪をため込むなどして、死亡リスクが高くなってしまうそう。

また、心理学者で、コロンビア大学などで先延ばしに関するコーチングを行なうクリスティーン・リー博士は、やるべきことを先延ばしにすると、自尊心が低下すると警鐘を鳴らします。

DaiGo氏いわく、先延ばし癖は次の3タイプに分けられるとのこと。みなさんは、当てはまっていませんか?

  1. 「明日やればいいや」タイプ
    面倒くさくてついサボってしまい「明日やる」と言い続け、結局テスト前に徹夜する羽目になる。
  1. 「なかなか始められない」タイプ
    エンジンがなかなかかからない。先延ばししているうちにほかのことが気になったり、誘惑があるとそちらに飛びついてしまったりする。
  1. 「どうせやっても……」タイプ
    やる前から言い訳をしたり、失敗を懸念したりし、勝手に自信をなくして足踏みしてしまう。

たとえば、営業の電話をかけなければならないのに、「1件も契約できなかったらどうしよう」「お客さんに怒鳴られたらどうしよう」などと考えながらいつまでも行動に移せていない人の場合、3のタイプだと言えますね。

上記のどのタイプにも当てはまる話ですが、大切なのは考えすぎずにただ行動すること。DaiGo氏いわく「5分だけ」「1件だけ」などと決めて行動すると、もっと行動を続けたくなる心理傾向があるそう。悩む前にまず1件だけでも電話をかけてみればいいのです。

また、リー博士によると、先の「失敗したらどうしよう」のように自分自身を不安にさせる問いかけが始まってしまいどうしても不安なのであれば、誰かに打ち明けるといいとのこと。たとえば同僚に相談してみることで、アドバイスをもらえたり、同じように不安な気持ちをもっている人がいるんだという発見があったりするかもしれません。「自分はひとりではないしコミュニティの一部である」という感覚が生まれ、ストレスが軽減されるのだとか。

あれこれ考えすぎずに、何かしらのアクションを起こすことが大切なようですね。

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3.「努力しても無駄」だと思っている

「人の能力は固定的で、努力しても変わらない」という考え方を「フィックスト・マインドセット」といいます。「一度失敗したら『自分には無理だ』とすぐに諦めてしまう」「難しい課題に直面すると逃げてしまう」「うまくいかないことがあると他人や環境のせいにしがち」などに共感できる人は、これに該当しているかもしれません。その逆は「グロース・マインドセット」といい、「自分の才能や能力は経験や努力によって向上できる」「たとえ失敗しても、失敗から学んで成長できる」という考え方。

要は自分が成長できると信じているか否かの違いなのですが、じつは、フィックスト・マインドセットは、脳の活動にとってよくない思考習慣だと言えます。驚くことに、考え方ひとつで脳の動きは大きく変化するのです。これを証明するのがスタンフォード大学の心理学教授キャロル・ドウェック氏が行なった実験。

まず被験者となった学生らにアンケートに答えてもらい、【グロース・マインドセットの持ち主】か、【フィックスト・マインドセットの持ち主】かを判別しました。その後、2年間彼らの成績を追ったところ、グロース・マインドセットのグループは成績が上がり、フィックスト・マインドセットのグループは成績が下がっていったそう。

また、両グループの脳の活動を計測したところ、グロース・マインドセットの学生らは、間違いや失敗をしたときと次に同じ問題に遭遇したときに、脳の活動が活発になり、注意力が上がっていたことが判明。一方、フィックスト・マインドセットをもつ学生は、失敗したときは脳が活動的になったものの、再度同じ問題に遭遇したときは脳が反応しなかったのだとか。

自分を信じられずにすぐ諦める癖は改善したいもの。キャロル・ドウェック氏が提唱するグロース・マインドセットを育む方法を以下にご紹介します。

  1. 完璧ではない自分を受け入れる
    誰にでも欠点はあります。自分自身と、他人の完璧ではないところを個性として受け入れましょう。
  2. 勇気をもって挑戦する
    困難や新しい挑戦を「怖い」と感じてしまうかもしれませんが、恐怖があっても前に進み続け、新しいことに挑戦するワクワクを堪能しましょう。
  3. 自分の考えに目を向ける
    無意識に普段考えていることや、しゃべっているときに発している言葉に着目し、もしもネガティブな感情が主であれば、ポジティブな考えに変換していきましょう。
  4. 承認欲求を捨てる
    他者からの評価を求めるより、自分自身が自分を受け入れ、信じ、評価しましょう。

脳を活動させて成長し続け、豊かな人生にするために、ぜひグロース・マインドセットを育んでください。

***
毎日の無意識な思考や行動が、脳に悪影響を与え、仕事のパフォーマンスや人生全体の満足度に影を落とす原因となっているかもしれません。

心当たりのある人は、ぜひ改善につながる習慣を取り入れていってくださいね。

(参考)
Woman type|ネガティブ思考は「脳の老化」を早める! 人生100年時代に女性たちが意識すべき“脳ケア”とは/医師・米山公啓さん【医師監修】
Psycom.net|The Negativity Bias: Why the Bad Stuff Sticks
Verywell Mind|What Is the Negativity Bias?
PubMed|The negativity bias: Conceptualization, quantification, and individual differences
東洋経済オンライン|「すぐやる!」が習慣化する5つのアプローチ
LinkedIn|Productivity Hacks: How to Overcome Procrastination by Facing Discomfort
Forbes|Just Do It: How to (Finally!) Stop Procrastinating
キャロル・S・ドゥエック 著, 今西康子 訳(2016),『マインドセット ――「やればできる!」の研究』, 草思社.
Carol S. Dweck (2007), Mindset: The New Psychology of Success, New York, Ballantine Books.
Jo Boaler (2015), Mathematical Mindsets: Unleashing Students' Potential through Creative Math, Inspiring Messages and Innovative Teaching, San Francisco, Jossey-Bass.

【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。

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