「0秒で動ける人」が大切にしている、たった1つのシンプルな思考

「いつまでも動けない人」から「0秒で動ける人」になるために――伊藤羊一さんインタビュー01

ヤフー株式会社コーポレートエバンジェリストであり、Yahoo!アカデミア学長を務める伊藤羊一(いとう・よういち)さん。その伊藤さんの仕事に対する信条は「即座に動く」こと。著書『1分で話せ──世界トップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』は電子書籍を合わせて40万部のベストセラーとなり、新刊『「わかってはいるけど動けない」人のための――0秒で動け』(ともにSBクリエイティブ)も話題の書となっています。

ビジネスパーソンの多くは、「失敗したくない……」という思いから、どうしても動き出す前の準備につい時間をかけてしまうもの。では、どうすれば「0秒で動ける人」になれるのでしょうか

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

かつてはまともに仕事ができず引きこもり寸前に

いまでこそ、『「わかってはいるけど動けない」人のための――0秒で動け』(SBクリエイティブ)というような本も出している私ですが、20代の頃にはどうすれば動くことができるのか、まったくわかっていませんでした

それどころか、基本的な仕事の進め方すらわかっておらず、もっといえば、仕事をしていなかったといっていいレベルだったのです。加えて、極度の人嫌いで、いまでいえば引きこもり寸前の状態でした……。ですから、仕事についてまわりにアドバイスを求めることもできなかった。

「いつまでも動けない人」から「0秒で動ける人」になるために――伊藤羊一さんインタビュー02

そんな私が変わるきっかけとなったのは、ある不動産ディベロッパーの経理部長との出会いでした。

当時、私は日本興業銀行に勤めており、時代はバブル崩壊後。その部長は、毎晩のように私に電話をしてきては「いま、私たちは新規の案件をストップさせているが、プロジェクトを再開するときには伊藤さんに力を貸してほしい」というのです。

当時の私はまともに仕事ができないのですから、そのことを正直に伝えました。するとその部長は、「全部教えてあげるから、わからないことがあったらどんどん聞いて」といってくれたのです。

そして、いよいよそのプロジェクトが動き出します。私は、その部長に対して恩義を感じていたことで、仕事に対して初めて「やりたい!」と思えたのです。

部長にはいろいろと仕事の手ほどきを受けていましたが、行内のことについては不十分でした。ただ、人から教わることに抵抗が薄れてきていたのか、そのプロジェクトについて上司に相談したところ、「俺を説得してくれたら、なんとかしてやる」といってくれた。そして、まわりの先輩や同僚も「おまえはなにもわからないだろう」「よし、一緒にやってやる!」と、どんどん仕事を教えてくれたのです。

「いつまでも動けない人」から「0秒で動ける人」になるために――伊藤羊一さんインタビュー03

ビジネススクールで手に入れたロジカルシンキングの手法

結果的にそのプロジェクトは成功しました。もちろん、まわりにたくさん助けてもらいましたから、自分がすごいことをやったなんて意識はありませんでしたけどね。ただ、「仕事って怖いものじゃないんだ」「知らないことは聞けばいい、一生懸命に仕事をしよう」と素直に思えるようになったことは大きかった。ようやく、普通に仕事をするという姿勢ができたわけです。

その後、事務用品メーカーのプラス株式会社にいたとき、友人のアドバイスによってビジネススクールのグロービスに行き、初めてロジカルシンキングについて学びました。入学前に受けた模擬授業は、私にとって本当にショッキングだった。「頭がいい人は、こういうふうに物事を考えているのか!」と電流が走るような感覚がありましたね

ただ、それもそれまでの苦労があったからこそのことだと思うのです。当時の私は自分なりの思考法によって仕事をしていましたが、どうしても時間がかかってしまっていた。そもそも本を読んで勉強しろという話なのですが……(苦笑)、当時の私は完全に自己流。それこそ無駄な努力ともいえますが、その無駄な努力があったからこそ、「これだ!」と電流が走って学ぶ意識が芽生えた。それを思えば、その苦労や努力も決して無駄ではなかったとも思えるのです。

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「0秒で動く」ことの基本は「直感に従う」思考

そうしてビジネススクールで学んだ私ですが、その後の仕事を通じて私が感じたのは、それこそ「0秒で動け」ではありませんが、すばやく行動に移すことの大切さでした

そのためには、「直感を大事にする」ことがなにより重要です。そういうと、ロジカルシンキングと対極にある思考であるように思われるかもしれませんが、そうではありません。

もちろん、ロジカルに物事を考えることも大切。いくつかの事実をグルーピングすると見えてくるものがあり、それを根拠とすれば結論が見えてくるというプロセスを経る思考です。それは、いわばAI的な思考ともいえるでしょう。

でも、人間というのは「結論はこうだ!」という思い込み――直感から逃れることはできません。だとしたら、その直感を避けるのではなく、フル活用することを考えてみましょう。つまり、直感に従って、「結論ありき」で根拠をあとづけで導き出すわけです。

すると、事実をグルーピングしたり分析したりする必要がないのですから、AI的な正攻法より思考のスピードが上がります。それだけ、早く行動に移せることになるのです。

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直感に従ってストーリーが見えたら、即座に動く!

そのように考えたもの(成果物)については、最初から完璧を求める必要はありません。全体の完成度が少し低い段階であっても、自分なりに結論に対する根拠がしっくり来ていて「ストーリー」が見えている段階であれば、上司の判断を仰げばいいと思うのです。というのも、その段階まで来たら、いくら時間をかけて頭で考え完成度を高めようとしても、その後の変化はたかが知れているからです。

もちろん、結論も根拠もすべてが中途半端な段階で上司に見せるのはさすがにダメです。それでは、自分のするべき仕事をせずに、ただ上司を頼るだけになってしまいますからね。

わたしがいいたいのは、実地の検証によって得られる情報は、頭で考えることの100倍にも1,000倍にもなるということ。もしかしたら、「Aという資料をつくるための素材集めとしては大失敗だ……」と思うような情報が集まるかもしれません。でも、それだって実地で検証したからこそ感じられることではないですか。その後の修正も、ただ頭で考え続けたケースと比較すれば、よほど早く進められるはずです。

上司によってはなかなかゴーサインを出さないタイプの人もいるでしょう。でも、「石橋を叩いて叩いて渡らない」ような上司につき合っていては、いつまでたっても行動できません。

その場合は、上司に隠れてでも実地で試してみてはどうでしょうか。自らの直感に従ってストーリーを描いたら、即座に動く――。そんなビジネスパーソンが増えれば、日本の企業ももっともっと元気になっていくに違いありません。

「いつまでも動けない人」から「0秒で動ける人」になるために――伊藤羊一さんインタビュー06

【伊藤羊一さん ほかのインタビュー記事はこちら】
人を動かすプレゼンの極意
ロジカルに納得させ、人生を賭けた「想い」で人を動かす
自分を導ける者だけが、優れたリーダーになる
「根拠→結論」だと遅い。その逆「結論→根拠」で仕事が圧倒的に速くなる。
直感が鋭い人は “この3つ” を大事にしている。

【プロフィール】
伊藤羊一(いとう・よういち)
1967年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト、Yahoo!アカデミア学長、株式会社ウェイウェイ代表取締役。グロービス・オリジナル・MBA プログラム(GDBA)修了。1990年に日本興業銀行入社。2003年、プラス株式会社に転じ、事業部門であるジョインテックスカンパニーにてロジスティクス再編、事業再編などを担当し、2011年より執行役員マーケティング本部長、2012年より同ヴァイスプレジデントとして事業全般を統括する。2015年にヤフー株式会社に転じ、次世代リーダー育成を行うだけでなく、グロービス経営大学院客員教授として教壇に立つほか、大手企業のアドバイザーなども務めている。著書には、『1分で話せ──世界トップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』『「わかってはいるけれど動けない」人のための──0秒で動け』(以上、SBクリエイティブ)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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