
編集部より
「アンラッキー君と博士の教室」では、日常でつい感じてしまう「運の悪さ」や「うまくいかない感覚」を、科学の視点から読み解いていきます。主人公は、何かとうまくいかないぬいぐるみのアンラッキー君。そして彼を温かく見守る認知科学の専門家、バイアス博士です。
デザイン会議を終えたアンラッキー君が、なんとも微妙な表情で席に戻ってきました。
「どうしたの?」と同僚が声をかけると、アンラッキー君は首をかしげながら答えます。
こうして、アンラッキー君はいつものネガティブモードに突入してしまいました。
人として欠陥がある? いや、そもそもこの仕事が向いていないんじゃ……
ぐるぐると考え続けるアンラッキー君の視界に、見覚えのある白衣が入ってきました。
なぜ褒め言葉が響かないのか?
博士はいつものように、ホワイトボードに図を描き始めました。
博士は説明し始めました。
研究によると、『頭がいいね』『もともと賢いんだね』というように『能力』を褒められると、その後自分を賢く見せるために間違いを恐れ、チャレンジしなくなるということがわかっているんじゃ。*2
あなたも経験ありませんか?
このように「褒められてもピンとこなくて、モチベーションが上がらない」という経験をしたことはありませんか? 身近な例を紹介します。
褒められたのにモヤッとしたときは……
自分が褒めて欲しい『褒め方』を相手に要求するのは至難の業。そこで、自分のことは自分で褒めるようにしてみましょう。
「自分で自分を褒めたって、嬉しくないんじゃないか?」このように思う方もいるかもしれません。
しかし、公立諏訪東京理科大学工学部教授で脳科学者の篠原菊紀氏は「自分で自分を褒めることでもやる気は出る」と述べています。*3
「脳は主語を理解しない」というのは有名な話。誰かから褒められるのも、自分で自分を褒めるのも、脳から見れば同じことなのです。
さらに篠原氏は、褒めることを繰り返すと、脳の線条体(行動と快感を結びつけるやる気の中枢)が『これをしたら褒められる』と予測し、活性化するようになると説明しています。*3
つまり、自分が「ここは頑張った、よくなった」と思うところを、具体的に褒めることを繰り返せば、気分がよくなるだけでなく、作業が捗る効果も期待できるというわけです。
自分で自分を褒めれば、モヤモヤは力に変わる
『頑張った点・よくなった点』を言語化できるようになり、会議でもわかりやすくアピールできるようになる。
そうすれば、周囲からもっと納得のいく褒め方をされるようになるじゃろう。
*1 東洋経済オンライン|東大卒であることが不安になった…中野信子が「頭がいいんですね」と褒められてもうれしくなかった理由
*2 Mueller, Claudia M. and Carol S. Dweck (1998), “Praise for intelligence can undermine children's motivation and performance,” Journal of Personality and Social Psychology, Vol. 75, No. 1, pp.33-52.
*3 日経Gooday|自分で自分を褒めるとやる気が出るって本当?
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。