「自分の頭で考える」ための、マッキンゼー流、2つのフレームワーク

資料を前に考えている男性

「知識は日々インプットしているのに、考えを掘り下げることができない……」
「ミーティングで意見を言おうとしても、考えを言語化できない……」

こんなふうに「自分には考える力がないのかも……」と思っている方は、「考えるプロセス」を知らないだけなのかもしれません。

今回の記事では、「自分の頭で考える力」を身につけるために必要なマッキンゼーのフレームワークをふたつご紹介します。ぜひ、ご一読ください。

AI時代に求められる「自分の頭で考える力」

AIの時代には「知識」より「思考力」が求められる——そう語るのは、ベストセラー『地頭力を鍛える』の著者であり、ビジネスコンサルタントの細谷功氏。

AIにとって知識の習得は容易です。どんなに大量のデータであっても、一度インプットしてしまえば忘れることはありません。*1

記憶の容量が限られている人間の脳に対し、AIは大量のデータを保持することができます。このため、情報量や知識の蓄積という点では、人間はAIに敵いません。

しかし、AIが大量のデータをストックできるからこそ、人間の役割も変化しつつあります。いま、私たちに求められているのは、AIが蓄積した情報を効果的に活用する能力——つまり、思考力なのです。

ひとことで思考力と言っても、論理的に考える力、批判的に考える力、多様な視点で考える力……とさまざまなものがあるでしょう。そのなかでもっとも重要視されるのは「論理的思考力」だと述べるのは作家でありワークスタイル&組織開発専門家 沢渡あまね氏。

まず、AIに有益な学習をさせるには、論理的に要件を組み、AIに適切な情報をインプットする必要があります。この部分において論理的思考が重要なことは言うまでもありません。*2

たとえば、ChatGPTに指示を出す場合には、要件をまとめ、応答された情報から解釈をし、考えを組み立ててまた指示を出す……などの、言語を使う能力が必要です。この「まとめる・解釈する・組み立てる」という言語能力こそ、論理的思考力に当たるものです。

さらに、沢渡氏は「クリエイティブなものを生み出すためにこそ、論理的思考が必要」だと語ります。*2

つまり、論理的思考を使いこなせれば、新しいアイデアや問題解決のヒントにAIを利用できるのです。思考力の高い人ほど、AIの時代に大きく成長できると言えるのではないでしょうか。

アイデアを閃いた様子

考える力の基本は「フレームワーク」の活用

前項で「論理的思考力が重要」と説明しましたが、なかには考える力に自信を持てない人もいるでしょう。しかし、「思考の型」で考えを掘り下げるプロセスに慣れれば、誰でも考える力を伸ばすことができます。

そこで参考になるのは、大手コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーのフレームワーク。具体例とともに、一緒に見ていきましょう。

考えを掘り下げる「So What?」「Why So?」

マッキンゼー出身者でありエグゼクティブコーチ、人材戦略コンサルタントの大嶋祥誉氏が紹介するのは、「So What?」「Why So?」のふたつの問い。

大嶋氏は「『So What?』(だから何? つまり何が言いたいの?)、『Why So?』(それは、なぜ?)を繰り返すことで、ロジックを強固」にすると言います。*3

簡潔にまとめると——

  • ある仮説や問題に対して「So What(だから何?)」と問いかける
    →答え(結論)をだす
  • 結論に対して「Why So?(それは、なぜ?)」と問いかける
    →答え(結論)の理由(根拠)をだす

上記のように結論と根拠の結びつきを考え、論理を組み立てるわけです。実際に活用するとどうなるのでしょうか? 「自社のプロモーション動画」を例に挙げて、考えてみましょう。

まずは、多くの事実から「So What(だから何?)」の問いで仮の答えを絞り出します。

「So What(だから何?)」の問いで仮の答えを絞り出した例

今度は逆に結論から「Why So(それは、なぜ?)」の問いで仮の理由を洗い出します。

「Why So(それは、なぜ?)」の問いで仮の理由を洗い出した例

上記は簡単な例ですが、「So What」「Why So」を繰り返し考えるクセをつければ、多くの事柄を俯瞰して答えを出すこと、また直感的に思いついた答えから支えになる根拠を見つけることができるようになりますよ。

考えを視覚的にまとめる「ピラミッドストラクチャー」

よく考えてもまとまらない……と悩む人には、図を用いて考えを整理する「ピラミッドストラクチャー」がおすすめです。前出の大嶋氏は、ピラミッドストラクチャーを次のように説明しています。

必ず底辺には太い事実(ファクト)が柱のように立てられていて、その上にその理由が積み上げられ、そして頂点には、事実と理由から導かれた「提案」が載せられています。*4

上記の説明を図で表すと以下のとおり。

ピラミッドストラクチャーのフレームワーク

結論から「理由→事実」を展開させていきます。提案するものに「なぜ?」と掘り下げていったものを、ビジュアルでひとめでわかるようにするのです。

この図が頭に入っていれば、「この商品がなぜ売れると考えたの?」などと理由を問われても、理由と根拠をセットですぐに答えられるはず。

たとえば、筆者が「ビジネスパーソン向けのメンタルヘルスアプリを提供したい」と提案したとしましょう。その結論から理由を3つ挙げます。

ピラミッドストラクチャーを展開した様子

そのうちのひとつ、「仕事と勉強、家庭の両立で疲れている人が多い」の理由を支える3つの事実を加えると……。

「仕事と勉強、家庭の両立で疲れている人が多い」の理由を支える3つの事実を加えた様子

*5~7

上記の図を言語化すると、次のような提案ができます。

ビジネスパーソン向けのメンタルヘルスアプリはどうでしょうか(提案)
なぜなら、仕事と勉強の両立に悩む社会人が増えているからです(理由)
実際に調査では、7割が勉強の必要性を感じているのに対し「仕事と家事で勉強する時間がない」と答えた社会人が多い結果となっています(事実)

このことから、仕事とプライベートを両立するには心身に負荷が大きく、社会人向けのメンタルヘルスケアのニーズが高いと考えました(再び結論)

この図を活用すれば、論理的な文章の構成がおのずとわかってくるはず。考えを整理して、言語化することに役立ててみてはいかがでしょうか。

***
考える力をつけるためには、まずは思考の型に慣れることから。フレームワークを使いこなせば、自分の考えを発展させることもできるでしょう。AI時代に飛躍するために、フレームワークに自分の考えを埋めて、自分の思考が広がっていくのを感じてみてください。

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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