あなたの「不満」はお宝かも!? いますぐできて、アイデアがあふれる『不満ビンゴ』をやってみた

電球シルエットのなかにひとつ黄色く光り輝く電球。アイデア創出の瞬間。

「また、いつもの案になってしまった……」 「新しいアイデアを出さなきゃいけないのに、頭が真っ白になる……」

きっと誰もが経験したことのある焦りですよね。完璧なアイデアを出さなければ、という重圧に押しつぶされそうになることも。

でも、実は身近なところに、アイデアのタネは転がっているんです。

それが「不満」です。

こう聞くと「不満なんて、くだらないかも」「それって、ただの愚痴では?」と思われるかもしれません。

いいんです。最初は些細な不満から始めましょう。

「朝、目覚ましを止めた後にまた寝てしまう」 「スマホの充電ケーブルがすぐにボロボロになる」 「会議室の椅子が硬くて長時間座れない」

こんな当たり前すぎる不満でも、実は誰もが共通して感じていることかもしれません。その「誰もが感じている」という部分こそ、新しいアイデアのチャンス。

本記事では、そんな身近な不満をアイデアの種に変えるメソッドをご紹介します。難しいことは一切ありません。まずは5分だけ、あなたの周りにある「ちょっとした不満」に目を向けてみませんか?

不満がアイデア創出に役立つワケ

過去の事例を見れば、「不満」が変革の原動力であり、行動の起点でもあり、可能性の扉でもあることがわかるはずです。

たとえば以前は、寒い冬への対処は厚着や重い素材に頼るだけでしたが、動きにくさや服が重くなること、着ぶくれしてしまうことが悩みの種でした。そんななか、ユニクロのヒートテックがその問題を解決したのです。これが大ヒット商品となり、冬の定番として、不動のものになったのは周知のことでしょう。*1

また、コクヨは「リングが手にあたり書きづらい」などの不満を解決するべく、やわらかな樹脂製のソフトリングノートを開発しました。2015年にはグッドデザイン賞も受賞しています。*2

そして、企業に役立つアイテムやサービスのために「不満買取センター」をスタートしたという、株式会社 Insight Tech の代表取締役社長 伊藤友博氏が不満に注目したのは、「不満が期待とのギャップによって生じる感情であり、欲求や改善への希望が隠れている」からだといいます。

同氏は不満を

  • 「ポジティブなペイン」
  • 「イノベーションの種になり得るもの」

とも表現。*3

つまり、不満はアイデアの源泉なのです。よいアイデアは、不満から生まれると言っても過言ではありません。

紙屑のなかにアイデアが生まれた!

不満を活かすテクニック「不満ビンゴ」

では、不満はどのように見つけて、どう活かしていけばいいのでしょう?

そこでおすすめしたいのが「不満ビンゴ」です。9つのマス目にあらゆる不満を書き込みながら「人の心に眠っている課題を掘り起こす」思考ツールのこと。発案者は『すごい思考ツール 壁を突破するための〈100の方程式〉』(文藝春秋,2024)の著者でクリエイターの小西利行氏です。*4

自分の周囲5メートル以内にある不満を拾い出せば「十分にアイデアの種は見つかる」と説く同氏は、「アイデア開発の準備運動」として不満ビンゴを活用しているといいます。*4

やり方は次のとおりです。*4

  1. 9つのマス目をつくり、横軸に「私」「まわり」「社会」、縦軸に「機能」「機会」「気分」と書き込む

    不満ビンゴのフォーマット

    『すごい思考ツール 壁を突破するための〈100の方程式〉』の図表 *4 を参考に編集部が作成
  2. 「私」「まわり」「社会」の不満 と、「機能」「機会」「気分」を掛け合わせた不満を、それぞれ考えて書き出す。

たとえば動画配信がテーマだとして、「私の不満」×「機能の不満」の掛け合わせである1のマスなら、「映画を観ようと座った途端に Wi-Fi が不安定になる」といった具合です。

では、筆者も実際にやってみましょう。

不満の見える化をいろんな視点でやってみた

今回筆者は 「デスクまわりの便利グッズの開発」をテーマに、不満ビンゴを実践してみました。

筆者が不満ビンゴで使ったノートとペン

紙とペンがあればOK。
筆者はリヒトラブのA5 のルーズリーフとゼブラの3色ジェルボールペン使用。

9つのマス目をつくり、縦軸と横軸に必要な言葉を書き込み――

筆者の手書き不満ビンゴフォーマット

デスクまわりにある不満を拾い上げ、該当するマス目にそれぞれ書き込みます。

筆者が実際に手書きで不満ビンゴを書き込んでみたもの

 

見やすくしたものがこちら☟

  まわり 社会
機能 デスクに道具を置くスペースが足りない。 色やサイズが似ている商品が多く、差別化が困難 使い勝手を重視し、デザイン性が省略されてしまう。
機会 欲しいデザインの収納グッズが見つからない 機能性は優れているが、面白いデザインがない シンプルなデザインを採用すれば製造プロセスが恋率かするが、同じような商品ばかりになってしまう。
気分 シンプルすぎるデザインの収納グッズではる気が出ない 同じような商品ばかりで購買欲が起こらない 画一的な商品が多いブランドは顧客にあきられる

 

最初は何を書けばいいのか戸惑いましたが、ちょっと席を立ち、「心地よくリラックスできて、集中することもできる環境」を思い浮かべながらデスク周辺を見渡してみたら、「あぁ、この部分だな」と、不満に感じている部分が浮き上がってきました。

「不満はあるけど、いざ書き出そうと思うと出てこない……!」という方は、自分の理想や、誰かのための理想的な状況を頭に思い浮かべながら、その場を見まわしてみるといいかもしれません。理想と現実のギャップが見えてくるはずです。

ちなみに、筆者の場合はこの実践で、デスク周りの収納グッズが機能的ではあるけれど、シンプルすぎることが不満であったと自覚しました。いままでは「なんとなくこれでいい」と思っていたので、気がつかなかったのかもしれません。

しかし、機能性は残しつつも、グッと心をつかまれるような遊び心やユーモアがある収納グッズがあれば、自分を含め、人々のモチベーションももっと高まるような気がします。

もちろん商品開発は、そのときの流行や経済の状況、流通から商圏、販売シーズンから最適な販売価格など、あらゆる要素からの影響を受けます。ですが、小西氏の言う「アイデア開発の準備運動」は、ほんの少しではありますが、一応チャレンジできたわけです。

今後、何かのアイデアを出す際には、まず最初に不満を拾い集めてみようと思います。

***
アイデア出しに困ったら、自分や社会の不満を見える化してみましょう。いろんな方向に伸びたアイデアの道が見えてくるはずです。

【ライタープロフィール】
上川万葉

法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している。

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