「仕事に役立つ情報をインプットするよう心がけているけれど、なんだか役に立っている実感がない……」
インプットについてこんな悩みをおもちなら、一度立ち止まってインプットの方法を見つめ直してみませんか?
現代では、簡単に情報が手に入るものの、その質は玉石混交。自分がインプットを必要とする目的を明確にしたうえで、良質なインプットを心がけることが大切なのです。
本記事では、ビジネスでのアウトプットを目的としたインプットの方法をご紹介します。
インプットをする際に意識すべきこと
そもそも、なんのためにインプットをするのでしょうか。ビジネスパーソンの場合、「仕事上でいいアウトプットをするため」というのがメインの目的だと思います。
「いいアウトプット」をさらに具体化すると、たとえば会議で成果につながる発言をすることや、トレンドや最新の技術を押さえた企画を提案すること、勉強した技術を使って、より効率的なシステムを開発すること……などが挙げられます。
言うまでもなく、ビジネス自体がアウトプットの塊のようなもの。だからこそ「仕事につながるアウトプットをしよう」のようなぼんやりとした目的意識でインプットを行なうのはおすすめできないのです。
「提案にむけて、3つのジャンルの情報が必要。そのことについて日頃からインプットする」のように、アウトプットの目的を具体的にすることが大切です。とはいえ、具体的にするだけでは、良質なインプットができるかといえば、そうではありません。
現代は情報が多く、その質にもバラツキがあるものです。飛びつく前に「この情報はインプットに値するか?」を考える必要があるのです。
東北芸術工科大学教授で編集者の菅付雅信氏も「良質なアウトプットを生むには、インプットする情報も良質である必要がある」と語り、「インプットする情報に関しては、『意識的な選択』をしなければなりません」と述べています。*1
せっかくインプットの目的を明確にしたのに、質の悪い情報ばかりを集めていては、いいアウトプットにつながりません。
良質なインプットに必要なリテラシーを養う
大量の情報のなかから、自分が求める良質な情報を得るには、どうしたらいいのでしょうか。
アンド・クリエイト代表取締役社長で、人材育成コンサルタントの清水久三子氏は「玉石混淆で差別化が図れるような情報を得るにはリテラシーの高さが求められる」と語ります。さらに「たまたま検索で出てきた情報で満足することなく、さまざまな見解に触れ、良質なコンテンツにたどり着けるリテラシーを身に付ける」ことが大切であるとも述べています。*2
特にネットでは、たまたまリコメンドされた記事を読んでインプットを済ませるという方も多いのではないでしょうか。ひとつの記事だけでなく、同じテーマを扱うほかの記事や書籍にもあたることで、そのテーマのエッセンスや全体像を把握できるようになり、リテラシーを高めることができます。
また、同氏は書籍でのインプットについて「良書にあたれば投資対効果は非常に高い」と語り、読む目安の冊数を紹介しています。*2
- 関連テーマの書籍を5冊読む(余裕があれば10冊)
- 自分が慣れている分野なら3冊読んで、自分の知識との差分を補う
- まったくの新領域なら20冊読む
たまたま見かけた情報だけを読んでいると、その情報に偏りがあっても気づけず、結果としてアウトプットも偏ったものになってしまいます。
ネットの情報は入り口としてとらえ、書籍を中心にさまざまな情報を積極的に得ることでリテラシーが養われ、良質なインプットが可能になるのです。
良質な情報を自分のなかに取り入れるコツ
複数の情報にあたることで、良質な情報を見極めることができたら、次はそれをしっかり自分のなかに落とし込みたいですよね。具体的にはどのようにすればいいのでしょうか。
精神科医の樺沢紫苑氏は、読書した内容を記憶に残すには、アウトプットが重要であると述べています。*3
同氏は、アウトプットの方法として「本の内容を話す、勧める」ことを提案しています。その際、気を付けるべきことは、「具体的にどこがタメになったのか、自分が気づきを得た部分などを頭の中で整理しながら伝え」るということ。
単に「おもしろかった」「役に立った」で済ませるのではなく、「この事例については、否定的な見方をする人が多いなか、著者はメリットを挙げ、〇〇という利用価値について言及していた。そこが新鮮だった」というように、自分にとってなにがおもしろかったのかを言語化することが大切なのですね。
ただ、ビジネスパーソンにとってのインプットは、仕事に関連する情報が多いもの。小説や話題の書籍の話であれば、誰にでも気軽に話せますが、専門的な話となると「まわりに話せる相手がいない」という方も多いのではないでしょうか。
そんなときは、ノートに書き出すことをおすすめします。いわゆる「読書ノート」と呼ばれるものです。気をつけなければならないのは、たくさん読んで記録し続けることを目的にしないこと。
ビジネスパーソンにとって、インプットの目的は「仕事上でいいアウトプットをするため」であることを忘れないように、読書ノートをつけましょう。
具体的には、ページの一番上に「A案件の企画を作成するため」など、具体的な目的を書きます。次に、その企画をつくるためにインプットしたい情報を書いておきます。たとえば「外食産業の変遷」「スイーツのトレンド」「外食産業とSDGs」のようにメモします。
そして、このキーワードでネット検索をし、関連する記事を読んでいきましょう。記事の著者が書籍を出していることも多いので、そこから読むべき書籍を見つけることも可能です。
読んだら、記事や書籍の内容をメモしていきます。あとから探しやすいように、日付・タイトル・著者名は必ずメモしておきましょう。
内容については、重要だと思った情報を箇条書きでメモしたり、図にしたりするなど、自由にまとめます。読みながら浮かんだ疑問や、ほかの書籍と比較して感じたことなど、自分の意見もメモしましょう。
つい丁寧に書こうと、長々とフレーズを書き写したり、同じフォーマットで書くことにこだわったりしてしまう方もいるかもしれませんが、読書ノートは良質なインプットのための手段にすぎません。「アウトプットのための材料を仕入れている」という意識で、どんどん書いていきましょう。
ノートに情報をためていけば、情報を立体的に把握することができ、成果につながるアウトプットが可能になります。
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良質なインプットをするには、日々情報に触れて、情報の質を見極める目を養い、自分の目的につながるかたちで情報を取り入れることが大切です。本記事の方法を参考に、インプットを試してみてくださいね。
※引用の太字は編集部が施した
*1 STUDY HACKER|選ぶべきは「すごい作品」。インプットする情報の「意識的な選択」が、良質なアウトプットを生む
*2 東洋経済オンライン|仕事のスピードが速い人の「情報収集」のコツ
*3 リクナビNEXTジャーナル|読書とビジネスが結びつく?! 仕事に活かせる「読んだら忘れない読書術」5つ
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。