「今日も何も進まなかった…」を脱出! 仕事の効率アップに効くノート術「バレットジャーナル」とは

”仕事が遅い人”こそ『バレットジャーナル』でタスク管理するべき理由01

会議の準備をしながらメールチェック、資料作成の途中で急な電話対応。気がつけば夕方になっても重要なプロジェクトの進捗はゼロ。毎日、がむしゃらに働いているのに、重要な仕事はなぜか終わらず、充実感もない。それほど大切ではないことに対処しているだけで一日が過ぎてしまう……。

「今日も結局、何も進まなかった」そんな無力感を感じながら、また明日の準備に追われる毎日を送っていませんか?

そんな悩みを抱えるビジネスパーソンにこそ試してほしいのが、手書きによるタスク管理術「バレットジャーナル」です。

デジタル全盛のいまだからこそ、あえて手書きのノート術が持つ力が見直されています。仕事効率化の鍵は、シンプルなペンとノートにあったのです。

そもそも、仕事が遅い原因とは?

頑張っているのに仕事が遅くなってしまうのには、いくつかの原因が考えられます。あなたに当てはまるものはありませんか?

1. 重要なことを見極められない

『エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする』の著者グレッグ・マキューン氏は、多くの人は「自分にとって大切ではないこと」に時間を割きすぎていると言います。人から仕事を受けすぎて、本当に大切な仕事が終わらない……というケースはその一例。抱えるタスクがあまりに多いと、本当に重要なものを見極められなくなるのです。すべてが「やらなければならない」ように感じてしまい、結果として最も価値の高い仕事が後回しになってしまいます。

重要なことを見極める目を育てるには、ひとりでじっくり考える時間をもつことが望まれます。今日本当に達成すべきことは何かを考える習慣をつけることで、「頑張っても頑張っても仕事が終わらない……」という状況から脱することができるはずです。

2. マルチタスクで仕事をこなそうとしている

資料作成をしながら電話対応、会議の準備をしつつメールチェック——そんな働き方は現代のビジネスパーソンにとって日常的ですが、このマルチタスクは生産性を下げる大きな原因となります。

実業家で著述家のデボラ・ザック氏は、人の脳は本来「マルチタスク」ができないと言います。複数のタスクを同時並行で行なおうとすると、集中力が散漫になり、ストレスがたまり、結局ひとつもうまくいかない……という結果になってしまうのだとか。

実際に脳科学の研究でも、人は複数のタスクを同時に処理しているのではなく、高速でタスクを切り替えているだけであることが明らかになっています。

代わりに実行すべきは、シングルタスクです。つまり、「いま集中するべき一点」に全力投球するという働き方が最も効率的であるとザック氏。

それがたとえランチ休憩であろうと、100%の注意を向けることでしっかりと休息がとれ、結果的に生産性向上につながるそうですよ。

”仕事が遅い人”こそ『バレットジャーナル』でタスク管理するべき理由03

3. パソコンでメモしている

パソコンでとったメモやデジタルのスケジュール帳を開いて、「あれ、これはなんの件だっけ?」「いつの間にか締切間近!」と焦る――そんなことばかりで、仕事が遅くなっていませんか? それは、パソコンでメモをとっているせいかも。便利なはずのデジタルツールが、かえって仕事を遅くしている可能性があります。

プリンストン大学のパム・A・ミュラー氏らが行なった研究では、ノートパソコンのみでメモをとると、手書きでメモをとる場合に比べて情報が記憶に定着しづらいことが明らかになりました。なぜなら、パソコンでメモをとると、自分なりにかみ砕く作業を省いてしまうから。言葉そのものを打ち込むだけで終わってしまうのです。

大切なタスクを忘れないためには、ノートとペンを用いた手書きのメモ術が最適です。

📋 仕事が遅い原因は……

1
重要なことの見極め不足

大切ではないことに時間を費やし、本当に重要な仕事が後回しに

2
マルチタスクの弊害

脳は同時処理できず、集中力散漫とストレスの原因に

3
デジタルメモの限界

記憶への定着が弱く、手書きメモのほうが効果的

”仕事が遅い人”こそ『バレットジャーナル』でタスク管理するべき理由04

仕事の遅さを克服する方法

さて、仕事の遅さを克服するには、下記の3点が大切だということがわかりました。

1
重要なことを見極める時間をもつ
2
一点に集中する
3
手書きする

この3点すべてを満たすのが「バレットジャーナル」です。

バレットジャーナルとは、スケジュール帳、タスクリスト、メモ、日記を統合させたようなノート術のこと。タスク管理に役立つのはもちろん、思考のすべてが1冊のノートに収まるため、「自分にとって重要なこと」を客観的に見つめられるつくりになっています。

発案者であるライダー・キャロル氏は、バレットジャーナルについて「自己認識を高め、目標と行動を一致させるメソッド」だと述べています。その言葉を仕事面に当てはめるならば、抱えているタスクをしっかりと認識したうえで、本当にこなすべきタスクを、確実にこなせるようになる――そんな効果が見込めると言えそうです。

”仕事が遅い人”こそ『バレットジャーナル』でタスク管理するべき理由05

バレットジャーナルによる仕事管理の手順

1. タスクの書き方

バレットジャーナルの大きな特徴は、「ラピッドロギング」と「キー」

バレットジャーナルでは、長文を書かない代わり、シンプルかつ短い言葉でタスクをすばやく書き出していきます(=ラピッドロギング)。その際、ドット「・」をはじめとした記号(=キー)で情報を分類し、タスクの優先度や進行度をひとめでわかるようにしていきます。

「キー」の一覧

上の画像のようなキーを用いて、ラピッドロギングで一日の予定を書き出した例がこちら。

ラピッドロギングで一日の予定を書き出した例

タスクが進むたびに、キーを更新していきます。たとえば、タスクを表す「・」の上から完了を表す「×」を書く、といった具合です。

すると一日の最後には下の画像のような記述に。今日はどの仕事が終わったのか、明日はなんの仕事をするべきか、ひとめでわかりますよね。

キーを更新した例

2. ノートのつくり方

バレットジャーナルは、全体構成にも特徴があります。下記のように、大きな予定(1年)から小さな予定(1日)に落とし込んでいくことで、予定の全体像がひとめでわかるように作成するのです。

  1. インデックス(目次)
  2. フューチャーログ(12か月の予定)
  3. マンスリーログ(1か月の予定)
  4. デイリーログ(1日の予定)

一見複雑そうですが、構造はシンプルなので、つくるのは案外簡単。では、それぞれの作成手順をお伝えしましょう。

インデックス(目次)

「インデックス」とは目次のこと。なにがどこに書いてあるかを把握するために大切なページです。ノートの各ページの隅には、ページ番号も振っておきます。

インデックスの例

バレットジャーナルは、使い続けながらどんどん新しいページをつくっていくものなので、インデックス欄は余裕をもって確保しておくのがおすすめです。

フューチャーログ(12か月の予定)

フューチャーログでは、1ページを3等分し、計4ページ使って12か月の大まかな予定を箇条書きで記入していきます。日付が決まっているものは日付を記入し、そうでなければ単純にリスト化します。

フューチャーログ(12か月の予定)

マンスリーログ(1か月の予定)

マンスリーログでは、見開きにした計2ページを使用。左側のページには、1〜31までの日にちを縦に記入し、1か月の予定を書いていきます。右側のページは、フューチャーログの内容を書き写したり、期限の決まっていないタスクをメモしたりするために利用します。

ここで、バレットジャーナルの特徴をもうひとつ。それは、自由にカスタマイズできるという点です。

筆者の場合は、マンスリーログに「習慣の記録」をつくることに。メンタルを整えて仕事の質を向上させることを狙い、「ウォーキング」(W)と「瞑想」(M)の列をつくり、できた日はドット「・」に色をつけるという形式でトラッキングしてみました。

マンスリーログ(1か月の予定)

デイリーログ(1日の予定)

マンスリーログの情報や細かいタスクを、ラピッドロギングとキーを使いながら、日別に書き込んでいきます。タスクが終わったらキーを書き直し、翌日に回すタスクは、翌日のデイリーログに書き入れます。

デイリーログ(1日の予定)

そうして1か月が終われば、新しい月のマンスリーログを作成し、また1日から順にデイリーログを書いていく——このプロセスを繰り返します。

「バレットジャーナル」を実践してみてわかったメリット

今回バレットジャーナルを仕事のタスク管理に使ってみたところ、大きな効果を感じることができました。

じつは筆者は、もともとタスク管理が大の苦手。スマートフォンのアプリにリマインダー、紙のスケジュール帳など、さまざまな場所にタスクや予定を放り込んでいたので、すべての予定を把握できておらず、行き当たりばったりに仕事をしてしまう癖がありました。その結果、いつも締切ギリギリになったり、やるべきタスクにいつまでも着手できなかったり……。

しかし、このメソッドを取り入れてからは、冷静な気持ちで優先順位を見極められるようになったと感じます。毎朝ノートを書いてじっくり考え、タスクを終えるごとに立ち止まってノートを開く——そんな時間をもつことで思考をスローダウンでき、ひとつひとつのタスクをじっくりこなせるようになったのです。

”仕事が遅い人”こそ『バレットジャーナル』でタスク管理するべき理由13

さらに、「先延ばし」に対してポジティブな気持ちをもてるようにもなりました。というのも、先延ばしをしたタスクがあっても、本当に優先すべきタスクをしっかり把握できているぶん、焦ることがなくなったからです。

翌日以降に回したタスクについて、「私はこれを『今日はやらない』と決めたのだ」と思えるようになり、漠然と落ち込んでしまうことがなくなりました。「いまやらなくていいこと」をさらっと流せるようになったことは、嬉しい変化のひとつでしたし、気持ちにメリハリがついたおかげか、やり残した仕事のことをオフの時間に思い出すことが減りました。結果的に、好きなことをする時間が増えたように感じます。

ここまでさまざまな効果をお伝えしてきましたが、いくら効果があるとはいっても、時にはノートを開くのが面倒になることもあるもの。そんなときはカスタマイズページが助けになるかもしれません。先に「習慣の記録」をご紹介しましたが、筆者はもうひとつ「1行感謝」のページをつくって、毎晩感謝の気持ちを1行で書き込んでいました。好きなページを取り入れたことは、一日の終わりに必ずノートを開くきっかけとなり、おかげで毎日の仕事を振り返る時間をもてるようになりましたよ。

「今月の目標」「読みたい本」「ひらめき集」など、ご自身が楽しさや成長を感じられるようなページをつくれば、ノートへの愛着がいっそう湧いてくるのではないでしょうか?

***
仕事の効率化だけでなく、QOLの向上も叶えてくれるバレットジャーナル。ぜひお試しくださいね。

(参考)

グレッグ・マキューン著, 高橋璃子訳(2014年),『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』, かんき出版.
東洋経済オンライン|「雑務に忙殺される人」に多い3つの思い込み
ダイヤモンド・オンライン|「テキパキしている人」がむしろ生産性が低い理由
Pam A. Mueller, Daniel M. Oppenheimer(2014), “The Pen Is Mightier Than the Keyboard: Advantages of Longhand Over Laptop Note Taking”,  Psychological Science, pp.1-10
ライダー・キャロル著, 栗木さつき訳(2019年),『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』, ダイヤモンド社.

【ライタープロフィール】
平野ももこ

大学ではフランス文学を専攻し、物語のなかの人の心を中心に研究。出版社を経営していた祖母の影響もあり、純文学、心理学、ビジネス書など幅広く読む大の読書家である。現在は、メンタルケアやカウンセリングを勉強中。バレットジャーナルの実践を通じ、生活改善に成功し続けている。

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