皆さんは、余裕のある朝を過ごせていますか? それとも、ギリギリの時間まで二度寝や三度寝を続けてはいませんか?
余裕を持って1日をスタートできることは誰もが憧れますが、実際にできている人は案外少ないのではないでしょうか。じつは、朝の過ごし方は日中のパフォーマンスにも大きな影響を与えているのです。
今回は、ある相談者と一緒に、余裕のある朝を迎えるための夜の過ごし方を考えていきましょう。
~ハカオくん(25歳、会社員)のお悩み~
朝、どうしても起きられません。ギリギリまで寝てしまい、結局大慌てで準備する毎日で……。そのせいかわかりませんが、日中の勉強や仕事に余裕を持って取り組めていないような気がします。
「朝のバタバタ」は日中の活動に影響を与える
スタディ博士、どうすればいいでしょうか?
それは大変だね。たしかに、朝のバタバタは日中の活動にも影響を与えるんだ。起きてすぐに慌てて動くと、体の働きをコントロールする自律神経のバランスが乱れてしまう。これが元通りになるには2〜3時間かかるから、日中に集中力が長続きしなかったり、疲れを感じたりする原因になるんだよ。
やっぱり朝のバタバタは良くないんですね……。じゃあ、どうしたら余裕を持って起きられますか?
スッキリ目覚めるには、質の良い睡眠を
まず、ハカオくんは質の良い睡眠を取る必要があるね。そのためには、自律神経のうち副交感神経が優位に働いている状態、いわば体が休息する準備ができた状態で睡眠をとることが必要なんだ。でも残念ながら、副交感神経の働きは緩やかにしか向上しないんだよ。
じゃあ、質の良い睡眠のためには、寝る数時間前には寝る準備を始めたほうがいいってことですか?
理想を言えばそういうことになるね。たとえば、ハカオくんは、寝る直前までスマートフォンを使ってないかい?
使ってます……。
やっぱりそうか。スマートフォンなどの画面から出るブルーライトを見ると、体は「朝だ」と思い込んで、自律神経のうちの交感神経を活性化させてしまうんだ。質の良い睡眠をとるためには、寝る前にスマートフォンを見るのはやめたほうが良いよ。
ええっ! そうなんですか……。
質の良い睡眠のためにおすすめの習慣とは
でも、「今日も疲れたなあ」って思いながらぼーっと動画サイトを眺める時間って、リラックスできて至福の時間じゃないですか。それを手放すのは嫌だなぁ。
ふむ。たしかに、リラックスできるというメリットは大切だね。もしどうしても動画を観たいのであれば、目に届くブルーライトの量を減らしてみようか。スマートフォンの代わりにパソコンを使って画面との距離を離したり、ブルーライトカット機能を使ったりしてみるのは効果的だよ。 あとは、何かほかにリラックスできる方法を探してみるのはどうかな。
ほかの方法というと……本を読んだり、音楽を聴いたり……とかでしょうか?
それは良いね! 読書はストレスを軽減し、副交感神経の働きを優位にする効果があるから睡眠前に向いている。それに音楽なら、ゆったりとしたクラシックを聴いてみてほしい。入眠前にクラシックを45分間聞いた被験者は、聞かなかった被験者よりも睡眠の質が改善し、ストレスが軽減されたという実験結果もあるんだ。
科学的にも効果が実証されているんですね。音楽を聴くのは、ほかのことをしながらでもできるから取り入れやすそう! 寝る前にクラシックを聴くなんて、なんかカッコイイな。
気持ちを紙に書き出してみる
あとは、考えていることを紙に書き出してみるのも、よく眠るのに効果的だね。
考えていることを書き出す? それって日記ということですか?
「日記」というとしっかりとした文章を書くような感じがするけど、ただただ、思ったことを書き出すだけで良いんだ。社会心理学者のティモシー・ウィルソン氏によると「書く」という行為には、ネガティブな考え方のサイクルをポジティブな考え方のサイクルへと変化させる効果があるらしい。気持ちを書き出すことでその感情を客観視できるようになって、悩みや嫌な出来事を浄化し、ストレスを解消することができるんだ。
たしかに、夜に悩みごとや心配ごとについて考えてしまうと、どんどん悪い方向に考えが向かいがちですよね……。僕、寝る前にいつもひとりで1日の反省会をしてしまうんです。「あのときあんなこと言わなきゃよかった」とか「あの人に嫌われたかも」とか……。一度全部書き出してしまって、頭の中を整理するのは効果がありそうだな。
ストレスも、自律神経のバランスを崩す要因のひとつだからね。これらの方法を取り入れて体の寝る準備を整えてあげれば、今までと同じ睡眠時間でも、朝の目覚めが変わるはずだよ。
へえ! 早く全部試してみたくてウズウズしてきました!
早起きできたら「モーニングページ」を書くべし
ちなみに、ハカオくんは、早起きできたら何かしたいことがあるのかい?
ええと、何でしょう……。とりあえず余裕を持って支度をすることだけが目標だったので、そこまでは考えたことがありませんでした。
それじゃあ、モーニングページを初めてみてはどうかな? 朝の15分間を使って、頭の中に思い浮かんだことをノート3ページを使って書き出すだけ。何も考えられない日は「何も思いつかない」と書いても良いから、とにかくページを埋めていくんだ。
モーニングページ……? 初めて聞きました。どんな効果があるんですか?
実際に試してみたライターは、次のように述べているよ。
朝一番の自分の考えをノートに書くことで、「今日一日にやるべきこと・やりたいこと」がはっきりしてくるように感じました。朝一番、あまり思考が回らないときに書くことにより、より素直な言葉が出てきます。それにより、自分の思考が整理され、固定観念やネガティブな感情に気づくことで、新たな考えが生まれてくるように思いました。
(引用:STUDY HACKER|朝一番、15分だけで人生が変わる。「モーニングページ」をやってみた話)
朝に考えていることを全部書き出すと、自分の素直な気持ちに向き合うことができるから、思考が整理されたり、意外なアイデアを閃いたりする効果が期待できるんだね。
なるほど。脳が完全に目覚めきっていない時間だからこそ、効果が期待できるんですね。忙しい毎日の中で自分の考えや心と向き合う時間を作るのって、とても意味のあることですよね。早起きとあわせて、試してみようと思います!
習慣化コンサルタントの古川武士氏は、生活のリズムに関わる習慣を変えるためにはおよそ3ヶ月かかると話している。だから、すぐに早起きが身につかなくても、自分を責めてはいけないよ。根気強く頑張ることが大切だ。
ありがとうスタディ博士!
(参考)
NEWSポストセブン|朝のストレスで乱れる自律神経は丸一日悪影響及ぼす
サワイ健康推進課|朝が変わる!寝る前のちょこっと習慣
NHKらいふ|自律神経を整えて睡眠の質を高めよう!
日刊ゲンダイDIGITAL|「スマホより6分間読書」 精神科医が薦めるリラックス術
The New York Times|Writing Your Way to Happiness
NIKKEI MESSE|パソコン・スマホよく使う?、「青い光」浴びすぎ注意、画面から50センチ、寝る前控えて、幅広い影響指摘。
Laszlo Harmat, Johanna Takacs and Robert Bodizs(2008), ”Music improves sleep quality in students”, Journal of Advanced Nursing, Vol. 62, No. 3, pp. 327-335.
STUDY HACKER|朝一番、15分だけで人生が変わる。「モーニングページ」をやってみた話
PRESIDENT online|なぜ、何をやっても三日坊主になるのか?
【ライタープロフィール】
梅野 凌矢
東京大学工学部所属。鹿児島県立鶴丸高等学校出身。大学では人間の認知システムを中心に勉強中。大学の吹奏楽団体に所属していて、担当はホルン。趣味は音楽ゲーム、読書など。Perfumeがとても好き。