あなたは仕事のために資格やスキルの勉強をしていますか?
もしも、「勉強はしているけれど、本当に仕事で役立つのか不安」、または「ただ知識を詰め込んでいるだけのような気がする」と感じるならば、そのモヤモヤを取り払う答えと、勉強と仕事で相乗効果を生む方法をお伝えしましょう。
勉強と仕事を分ける必要はない
「勉強」とは、学問や技芸を学ぶこと、経験を積むことです。また、生理学や心理学において「学習」という言葉は、経験によって動物の行動パターンが変化することを指しています。
仕事についてはどうでしょう。収入を得るためのものであり、自分を表現するためのものでもあります。しかし、企業にマネジメントサービスを提供している株式会社資産工学研究所の代表取締役・坂本善博氏は、「仕事」についてこう定義しています。
“資源を投入し、価値創造プロセスにより、成果を獲得すること”
この定義は巨大企業のトップにまで当てはめられるため広範囲に及びますが、ビジネスパーソンの立場だと「資源=知恵/労働/時間」「価値創造=業務全般」「成果=信頼・信用増加/収入増加」といった具合です。
では、ビジネスパーソンが勉強する根拠はなんでしょう。それは、仕事の定義が示すとおり、「勉強したことを資源にして、仕事の成果を獲得するため」です。それならば、勉強と仕事を分ける必要はありませんよね。
仕事のための勉強は経験が媒介となる
筆者の知人は「仕事で役に立つかも」と英語と中国語を勉強していましたが、実際に現地でつかってみると、まったく通じなかったそうです。しかし、海外のエキシビションに参加したり、海外に工場を設立したりした際には、明確な目的が見えたことから格段に語学が上達したとのこと。現地で工場長や工員さんたちを雇うため、会話と同時に流儀を学んだことも上達した要因です。そして何よりも、幾度も幾度も出張を重ねながら勉強も重ねるという、インプットとアウトプットの繰り返しが功を奏したのでしょう。
京セラや第二電電(現KDDI)などを創業し、日本航空の経営再建を成し遂げた稲盛和夫氏は、著書『生き方 人間として一番大切なこと』のなかで「“できる”と“知っている”の間には、深くて大きな溝がある。それを埋めてくれるのが、現場での経験」と述べています。
つまり、「いろんなスキルや資格を万全にしたが、仕事に活かせるだろうか」と考えている時点では、まだ未知数だということ。「学ぶ→実践→改善→学ぶ→実践→改善」を繰り返さなければ、本当の意味での「資源投入」にはならず、「価値創造」のプロセスでそれが活かされることもありません。仕事のための勉強は「経験」が媒介です。とりあえず知識をため込むのではなく、アウトプットしながら活かさなければ始まらないのです。
したがって、まだスタートしていないのに「勉強はしているけれど、本当に仕事で役立つのか不安」「ただ知識を詰め込んでいるだけのような気がする」とモヤモヤ悩んでいるのは無意味だということです。
勉強と仕事をつなげる、とは?
では、勉強と仕事を「つなげる」とはなんでしょう?
日々変化することが当たり前のIT業界では、それに取り残されないよう学ぶことが必須です。そのIT業界で活躍している約200人の方の声が載せられた本のなかには、
全然仕事に関係ない勉強はないですね。何か勉強のとっかかりとなるものはあるんですよね。あとは勉強したことに、仕事を近づけちゃう、持ってきちゃうというノリがあります。
(引用元:奥乃美著,渋川 よしき著(2010), 『IT業界を楽しく生き抜くための「つまみぐい勉強法」』,技術評論社.)
という言葉があります。前項で説明したように、勉強と仕事をつなげるということは「仕事の成果を獲得するために、勉強をすること」です。しかし、そのように受動的なだけではなく、勉強したことに仕事を近づけるという攻め方もひとつというわけです。
勉強と仕事をつなげる方法
ではここから、勉強と仕事をつなげて相乗効果を生む方法を紹介していきます。その方法は3つ。
1.つまみぐい勉強法
「つまみぐい勉強法」とは、『IT業界を楽しく生き抜くための「つまみぐい勉強法」』で紹介されている方法です。
稲盛和夫氏がいうように、勉強したことを仕事で活かすには経験を積み重ねていく必要があります。しかし、長期にわたると挫折率も高くなるでしょう。そこで、この「つまみぐい勉強法」が役立つのです。
この特徴は「途中でやめる」ステップがプロセスに組み込まれていること。その勉強が合わない活かせないと感じたら、悩むことなくあっさり止めて次にすすめるわけです。気軽に新しい勉強をつまみぐいしたり、他の勉強へスイッチしたりしながら、楽しく継続できるでしょう。
2.勉強会に参加する
同書のなかでは「勉強を楽しく継続していくためには勉強会がいい」とも伝えています。IT業界では数多くの勉強会が開催され、多くの人が情報交換しながら仕事に役立てているそうです。
ところが探してみると、想像以上にさまざまな職種の勉強会が数多く開かれています。セールスマンのための営業勉強会や、ネットショップオーナーの勉強会、ライター勉強会などなど。いろんなひとの経験を聞くことで、自分の方向性を確かめたり、イマジネーションを働かせたりできますよ。
3.本はインプット後に注力
本を読んでも仕事に役立てられないと感じている方は、この方法を取り入れてみてください。
外資系コンサル業界でキャリアを重ねている山口周氏は、読書を仕事につなげるためインプットの量ではなく、インプット後の情報整理や貯蔵法などに注力しています。また、ジャンルによって読み方を変えており、ビジネス書は定番・名著が少なくビジネスに直結しているので狭く深く読み、読書ノートもとらないそうです。
教養書に関してはジャンルが多岐にわたり、仕事に直結せずインプットからアウトプットまでの時間が長いので広く浅くが基本。1回目で線を引き、2回目で5つほど内容を選び、3回目で転記するという「3回読み」をすすめています。
転記においては、どこからでも簡単にアクセス可能な「エバーノート」に書き写すのだとか。人は読んでも必ず内容を忘れるので、忘れてもよい「仕組み」をつくることだと同氏はいいます。それにはエバーノートが役立つわけです。
*** 仕事との両立は大変ですが、頑張ったぶん勉強と仕事の相乗効果が生まれるといいですね。
(参考) BizLady|その方法…ムダだった?「効率よくキャリアにつなげる」勉強や仕事のコツ 東洋経済オンライン|こうすれば、読書は「仕事の成果」に変わる! Wikipedia|学習 富士通|第3回 仕事の定義と改善方法 Evernote|すべてを記憶する。アイデアを整理する。スマートに働く。 奥乃美著,渋川 よしき著(2010), 『IT業界を楽しく生き抜くための「つまみぐい勉強法」』,技術評論社.