圧倒的な強さを見せ、私たちを魅了するフィギュアスケートの羽生結弦選手。平昌冬季オリンピックでも美しい演技を見せてくれました。その結果、ソチオリンピックに続き、金メダルを獲得。なんと、男子としては66年ぶりの五輪連覇を達成したのだそう。その成功の裏には、人一倍の努力とメンタルトレーニングがあります。

今回は、そんな羽生選手を精神面で支える「発明ノート」の心理学的効果と、私たちの日常生活に取り入れる方法をご紹介します。五輪王者のメンタルを支える手法を、普段の勉強や仕事に活かすことができるようになりますよ。

「発明ノート」とは

羽生結弦選手を精神面から支える「発明ノート」は、いわゆる練習の振り返り日誌のようなもの。彼自身がこう名付けたそうです。2014年2月16日付の朝日新聞朝刊には、羽生選手がどのように発明ノートを活用しているかについて、詳細が記載されています。

毎日のように、練習で気になったことや思いついたことを殴り書きする。スピード、タイミング、感覚……。自分が試してみて良かったことと悪かったこと、疑問点などが記されている。(中略)

「発明ノート」は就寝前、布団に入ってイメージトレーニングをしている最中にひらめき、起き上がって書くこともある。「眠い、と思いながら机に向かって、ガーッと書いて、パタッと寝る。見せられるほど奇麗な字では書いてないです」と羽生。翌日リンクに立った時、ひらめきを試し、その成果をまた書き込む。(中略)

上手な人のジャンプを研究した。助走の軌道は? 跳び上がるベクトルは? ばらばらにしたパーツを組み合わせては試した。中学や高校の成績はオール5。中でも、数学や力学は好きな分野だ。「ジャンプを科学しているわけではないですが、理論的に感覚と常識的なことを合わせて、スピードの関係、タイミングをノートに書いた」

(引用:朝日新聞社インフォメーション|NIE 教育に新聞を|羽生、王子から王者へ 苦手のジャンプ、「科学」で克服

ここから、「発明ノート」を通して自己を高めていく上で、以下の4つのポイントがあることがわかります。

・思いついたこと、疑問に感じたことなどを全て書く
・「イメージトレーニング」を行い、その間に気づいたことも書く
・書いたことを元に実践し、その成果を書き込んでまた次に活かすという「PDCAサイクル」を回す
・成功者の「成功の要因」を分析して、取り入れる

羽生選手の成功の裏には、スケートリンクでの絶え間ない練習に加え、このような影の努力があったのです。そして「発明ノート」は、アスリートだけではなく、成功したいビジネスパーソンや勉強に励む全ての人が活用できる手法です。

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「発明ノート」の心理学的効果

「発明ノート」には、どんな心理学的な効果があるのでしょうか。コーチング心理学、コーチング科学を専門とする早稲田大学スポーツ科学学術院の堀野博幸教授は、以下の3つを挙げています。

1. 記憶の定着と忘却の防止
頭の中に詰め込まれた事柄を取り出しノートに書き出すことで、重要な事柄を記憶に定着させるとともに、時間とともに忘れてしまうことを防いでくれます。

2. 現状分析と目標の再設定
書き出された事柄をノートの上から眺めて全体を俯瞰(ふかん)し、問題点や成否の理由を客観的に分析したうえで、新たな目標設定を可能にしてくれます。

3. 囚(とら)われからの解放
頭の中で考え続けることをノートに取り出すことで、気になることへの執着や心が囚われた状態から自分自身を解放してくれます。(中略)「囚われた状態」から自らの“こころ”を解き放ち、こころを元気にしてくれるのです。

(引用:YOMIURI ONLINE|教育×早稲田オンライン|羽生結弦の強さの秘訣 “発明ノート”とは?~トップアスリートが実践するメンタル・メソッドの効果

成功する上で重要な、ポジティブな効果をもたらしてくれるのですね。

羽生選手の他に、Jリーグ史上初MVPを複数回受賞したサッカーの中村俊輔選手や、日本人初の偉業を多く成し遂げ、マサチューセッツ工科大学特別研究員にもなった本田圭佑選手も、メンタルトレーニングの一環として日々ノートをつけることを継続していたのだとか。アスリートの華々しい成功を長い間支えてきた手法だと言えます。

「発明ノート」を勉強や仕事に活用する方法

このような効果を得られるなら、私たちも生活に取れ入れてみたいものですね。そこで、勉強面と仕事面で実際に「発明ノート」を活用するポイントをご紹介します。まずは、勉強に励む全ての人や学生の方向けの方法を、例と共にお伝えしましょう。

1. 勉強に関することで、勉強中や試験中、生活の中で思いついたこと、疑問に感じたことなどを全て書く
・英単語の暗記をするとき、exclude・exit・exportなど”ex”から始まる単語がたくさんあるみたい。共通点があるのかな?
・海外出張中、滞在先のホテルのアメニティーの石鹸の泡立ちが悪い。「泡立ちが悪い」って英語でなんて言うんだろう?

2.「イメージトレーニング」を行い、その間に気づいたことも書く
・海外旅行先で出会った外国人と話す場面をイメージ。英語で自己紹介するとき、自分の言いたいことを正確に表現できるだろうか? 基本フレーズを確認しておこう。

3. 書いたことを元に実践し、その成果を書き込んでまた次に活かすという「PDCAサイクル」を回す
・”ex”から始まる単語には、「外に」という同じニュアンスがあることがわかった。いい気づきだった! もっと単語の覚え方を改善できそうだ。他にも語源を意識して効率良く覚えられる英単語がないか、調べてみよう。

4. 成功者の「成功の理由」を分析して、取り入れる
・同僚の○○さんは、半年でTOEIC300点アップしたらしい。自分にも応用できることはあるだろうか。どんな学習法をしたのか聞き、汎用性のある方法なのか分析してみよう。

次に、仕事に励むビジネスパーソン向けの「発明ノート」の活用方法をお伝えします。

1. 仕事をする上で思いついたこと、疑問に感じたことなどを全て書く
・報告書をつくるときのマニュアルとテンプレートがあったら便利だろうな……。

2. 「イメージトレーニング」を行い、その間に気づいたことも書く
・人前に立って自分がプレゼンをする場面をイメージ。出だしは何て言おう? どういうジェスチャーを使えば伝わりやすくなるだろうか?

3. 書いたことを元に実践し、その成果を書き込んでまた次に活かすという「PDCAサイクル」を回す
・今期の目標をたて、目標に沿ってタスクを実行してきたが、新規顧客の獲得数が不十分に感じる。営業目標を変更して、今後は顧客獲得にもっと力を入れていこう。

4. 成功者の「成功の理由」を分析して、取り入れる
・上司の○○さんの顧客満足度がダントツで高いのはなぜだろう。自分にも真似できることはあるだろうか。

このように「発明ノート」はどんなことにも活用できます。普段の気づきをもとにPDCAサイクルを回し、成功の要素を取り入れることで目標達成が可能になる、とても有効な方法なのです。

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やってみてわかった「発明ノート」のコツ

現在、英語学習に励んでいる筆者は「発明ノート」を活用しています。実際にやってみて気づいた、3つのコツをお伝えします。

1. 持ち運びが簡単な、薄くて小さなノートを選ぶ
A4サイズのノートを普段持ち運ぶのが難しい人もいるでしょう。筆者は小さなカバンを使うことが多いため、ミニサイズのノートを使っています。そこにクリップ付きのペンを挟んでおくと、場所を取りません。移動中でも気軽に取り出せて重宝しますよ。

2. スマートフォンのメモ帳機能やEvernote、Gmailを活用する
普段カバンを持ち歩かない人や、荷物が増えるのが嫌だという人もいるはず。スマートフォンのメモ帳機能を使うとノート不要で、いつでも思いついたことを書き留めることができます。特にEvernoteやGmailの下書き機能を活用すれば、スマートフォンで書き込んだ内容をPCでも共有できて便利ですよ。

3. 大事な仕事や試験前に「発明ノート」を見返すと自信になる
資格試験前や仕事のプレゼン、面接、重要な顧客への訪問前などに、今まで自分が書き込んできた内容を見返すと、大きな自信になります。不安が払拭されるだけでなく、忘れがちな注意点もリマインドできて一石二鳥。きっと本番で成功をおさめることができるでしょう。

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羽生結弦選手の強さを支える「発明ノート」、ぜひみなさんも普段の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

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