思うように勉強が進まず、不安や焦りにとらわれたり、自己嫌悪に陥ったりして精神的に消耗し、心の疲れを感じることはありますか?
心が疲れるのは、自分が弱いからだと思ってしまう人もいるかもしれませんが、じつは、脳の疲れや雑念が影響している可能性があるのです。
この記事では、勉強で疲れた心をリセットしたいときに役立つ、ふたつの方法を紹介します。筆者が実際に効果を感じた、脳の仕組みを活用する方法です。ぜひご覧ください。
1. 脳の疲れに1分間の仮眠
頑張りたい気持ちはあるのに、疲れすぎて頑張れず、落ち込んでしまうことってありますよね。筆者にもこんな経験があります。
- 資格試験の勉強をしなければならないのに、帰宅すると疲れがどっと出てしまい、すぐ取りかかれない
- すると勉強の初動が遅れるので、時間が少なくなってしまう
- やっとの思いで勉強を始めても、すぐ飽きて気が散ったりぼーっとしたりする
- まったく勉強が進まず、自分はなんて意志が弱いんだろうと自己嫌悪に陥る
しかし、これには意志の問題だけではなく、脳の疲れも関係していたと考えられます。東京疲労・睡眠クリニック院長で医師の梶本修身氏によると、脳の疲れ始めには以下の兆候が段階的に現れるそうです。*1
- 第1段階:「飽きる」
- 第2段階:「眠くなる」
- 第3段階:「パフォーマンスが落ちる」
つまり――目の前のことに飽きて集中力を保てない状態になっても(第1段階)、そのまま無理に続けていると今度は眠くなり(第2段階)、それでも続けると脳が限界を超えた状態になり、パフォーマンスが落ちてしまうわけです(第3段階)。*1
先述した筆者の体験を思い返してみると――たしかに、落ち着いて考えればわかる内容をうまく理解できなかったし、暗記してもすぐに忘れてしまうような状態でした。まさに脳の疲れの兆候が出ていたのですね。
そこで筆者は、勉強中すぐに実践でき、あまり時間をかけずに済むような、脳の疲れ解消法を探してみました。そうしてたどり着いたのが、「マイクロ・ナップ」と呼ばれる1分間だけ仮眠する方法です。*2
多くの人が、たった1分で本当に疲れがとれるのかと疑問に感じてしまうかもしれません。しかし、日本睡眠学会所属医師、雨晴クリニック院長の坪田聡氏は、「情報の8割は目から入ってくる。1分間目を閉じるだけでも、想像以上に脳は休息を取れます」と説明しています。*2
また、前出の梶本氏は「脳を疲れにくくする生活習慣」として、鼻呼吸により脳を冷やす方法を紹介しています。「鼻の穴から喉へと続く鼻腔は、空気の通り道」なので、冷たい空気を鼻から吸い込めば、熱がこもりやすい脳を冷やせるそうです。*3
そこで筆者もさっそく、鼻呼吸を意識しながらマイクロ・ナップを実践。移動中の電車やカフェなどでも取り入れたかったので、音が出ない振動アラーム機能のついた、スマートウォッチを利用して時間を測ることにしました。
初めは、1分というあまりにも短い時間の効果に半信半疑でしたが――たしかに短い時間でも、目の前にあった情報がいったん遮断されると、そのあと目を開けた際には頭がスッキリ、リセットされたような状態になっていました。
また、意識したせいか、口から空気を吸い込むよりも、鼻で吸い込んだほうが、より高い位置、つまり脳に近い位置で空気が流れていると感じられました。鼻呼吸で脳がスッキリするのも納得です。
そして、それらにともない集中しやすさも得られた気がします。
ちなみに筆者は以前より、仮眠をとると寝すぎてしまうことが多くありました。しかし、たった1分なら寝すぎることはまずないので安心です。
また、前出の坪田氏はマイクロ・ナップについて、「夜の睡眠に影響するほどの作用はないので、時間帯や回数を気にせず、1日何回やってもいい」と述べています。これも安心材料ですね。*2
この習慣を小まめに続けていけば、勉強のパフォーマンスが落ちて気分が落ち込み、心が疲弊することも少なくなるのではないでしょうか。
2. 雑念には音読
思うように勉強を進められないと、「うまくいかなかったらどうしよう」「自分と違い周りは順調そうに見える」などと、ネガティブな雑念に支配されることがあるかもしれません。しかし、そんなことばかり考えていると、ますます勉強に集中できなくなり、心も余計に疲れてしまいます。
医学博士・心療内科医師の吉田たかよし氏によれば、雑念には「内的雑念」と「外的雑念」があり、内的雑念は勉強に関係ない余計なこと、外的雑念は実際に聞こえてくる雑音などを指すと説明します。*4
うるさい場所で集中できないといった外的雑念であれば、場所を変えるなどして対処できるでしょう。しかし、頭に浮かぶネガティブな思いや、勉強より〇〇がしたいなどの内的雑念は、考えないようにすればするほど余計に頭から離れず、断ち切るのが難しいように思えます。
そこで吉田氏が推奨するのは「音読」。音読を始めると、内的雑念が有無を言わさず中断させられるからです。その背景には、脳の言語中枢が、ひとつの情報しか処理できないといった理由があります。*4
ただし、黙読に比べて 「読むスピードがかなり遅くなる、深い考察がしづらくなる」といった欠点があるため、音読で集中力が回復したら、すぐ黙読に戻したほうがいいそうです。*4
そこで筆者も、勉強中に内的雑念が湧いたとき、以下を実践してみました。
- 内的雑念が湧いたら
- ⇒暗記ものの音読に切り替える
- ⇒集中力が回復したら黙読に戻す(元の勉強を再開)
※状況に応じてこれを繰り返す
そこで改めて、声に出して読めば雑念が消えることを実感。余計な思いが自分の声に押しやられ、頭から消えていくイメージです。ネガティブな雑念の支配から解放されたわけです。そのあと集中力を取り戻せたのは言うまでもありません。
外出先だと大きな声は出せませんが、マスクの下でこっそりとささやくようにしてみても、同様の効果を感じました。勉強中に頭のなかが騒がしくなり、集中を妨げるようなときがあれば、ぜひお試しください。
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脳の疲れをとり、雑念を消して勉強パフォーマンスを上げながら、疲弊しそうな心も助ける簡単な方法をふたつ紹介しました。みなさまのお役立てば嬉しいです。
*1: 日本の資格・検定|勉強中の「飽きた・眠い」は脳疲労のサイン。睡眠のひと工夫で解消を!【勉強効率アップの秘訣 Vol.2】
*2: 日経ビジネス|寝起きからシャキッと頭が冴える昼寝の長さは?
*3: 湧永製薬株式会社|疲労をためない生活習慣
*4: 中学受験ナビ|音読・黙読の切り替えで内的雑念は振り払える! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策(3)
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。