「退屈な仕事」も悪くない!? 単調な時間を『成長の時間』に変える3つの視点

退屈そうにしながらもアイデアがぼんやる浮かんでいるビジネスパーソン

スマホで会議に参加しながら、Excel表にデータを入力する。「あと30分はかかるな……」

部長からの依頼メールに目を通しながら、毎月恒例の経費精算。「はぁ、また同じことの繰り返し」

新人に作業手順を説明しつつ、自分の手元でもルーチンワークを進める。「なんだか頭が働いてない……」

こんな場面に心当たりはないでしょうか。「退屈だ」「単調すぎる」「時間の無駄かも」。そう感じる瞬間は、ビジネスパーソンなら誰にでもあるはずです。

でも、その退屈な時間には意外な価値が隠れているんです。世界有数のビジネススクールIMDの研究によれば、退屈な時間は「創造性、革新性、個人の成長などプラスの結果をもたらすことが多い」とされています。

その具体的な活用法を3つ紹介します。今日からすぐに始められる、単調な時間の「価値ある使い方」です。

単調な時間の活用法1. 効率化と改善のきっかけにする

「この時間をもっと生産性の高い時間に変えられたらいいのに……」。毎月のデータ入力作業で、同じキーを何度も押しながら、そう感じたことはありませんか?実は、この「退屈だな」という感覚こそが、業務改善と生産性向上のチャンスなのです。

世界トップクラスのビジネススクールIMDの教授 アリソン・マイスター氏と、人的資源の専門家で起業家のアクシニア・スタヴスカヤ氏は、退屈な時間について興味深い指摘をしています。「退屈であることの不快感を軽減するために、代替行動を探そうとする状況は、創造性、革新性、個人の成長などプラスの結果をもたらすことが多い」というのです。*1

それなら、単調な作業中に退屈な感覚に襲われたとき、いったん手を止めて少しのあいだだけ、以下の行動を取ってみてはいかがでしょうか。

  • 作業の効率化
    ┗時間がかかっている入力プロセスの特定や、自動化ツールの検討など

  • 次のプチやること管理
    ┗「この作業が終わったらアポイントの電話をする」など

  • 行き詰っている案件への思考スイッチ
    ┗何が問題なのか思いつくまま書き出してみるなど

マイスター氏らによれば、退屈な時間は、常に何かに追われている日常から解放される時間でもあります。「いまこの瞬間に身を置く機会」になるというのです。

ですから、たとえばデータ入力中に退屈になって、「そうだ自動化ツールを検討してみよう」と思い立ったら、それはむしろチャンス。意外にも普段より集中でき、一気にExcelのマクロ機能を使いこなしたり、無料または低コストの最適なRPAツールを見つけたり、データ入力専用のアプリやソフトウェアを調べ上げたりできるかもしれません。

退屈でイヤな時間を、業務改善のきっかけに変えてしまいましょう。誰もが避けたがる「退屈な作業」は、実は次の改善プロジェクトの宝庫かもしれないのです。

 

「退屈な時間」は、常に追われている日常から解放される貴重な瞬間。その時間を活用して、業務改善のアイデアを考えたり、行き詰まった案件を整理したりするチャンスに変えられます。

仕事の効率化について考えてみる

単調な時間の活用法2:仕事の整理・企画の時間

退屈なとき、つい仕事以外のことを考えてしまいがち。でも、その時間を自分自身と向き合う「内省の時間」に変えてみませんか?

世界トップクラスのビジネススクールIMDの研究者らによれば、退屈な時間は「内省と自己認識を深める絶好の機会」なのだといいます。なぜなら、普段は気づかない自分の思考や行動のパターンに目を向けられるからです。

また、村尾佳子氏(グロービス経営大学院教員)は、内省の習慣化は自己成長へとつながると述べています。*2

では、具体的にどんな問いを立てればよいのでしょうか。

  1. 担当しているA社の案件が行き詰っているのはなぜか?
  2. 先日のプレゼンテーションの評判がよかったのはなぜか?
  3. 最近、評価されている感覚が薄いのはなぜか?

さらに村尾氏は、内省のプロセスを説明するなかで「良かった点・悪かった点を含め、出来事の工程を細かく分解しフラットに振り返る」ことをポイントのひとつとして挙げています。*2

こんな具合に、どんどん掘り下げてみるのもいいでしょう。

  • 1. 担当しているA社の案件が行き詰っているのはなぜか?
    • ┗前回のときはスムーズに運び、関係性が良好になったのになぜ?
      • ┗現況との差は何か?

ちなみにアリソン・マイスター氏とアクシニア・スタヴスカヤ氏は、内省に浸ることにより、退屈時に生じる「こんなの無意味だ」という感覚を打ち消す可能性についても言及しています。*1

成長できて、退屈な嘆きも消え、一石二鳥です。

 

退屈な時間は「自分を見つめ直すチャンス」。内省を通じて自己理解を深め、次の成長につなげられる貴重な機会です。

内省して自問のち、成長の兆しを感じているビジネスパーソン

単調な時間の活用法3. 単調作業を集中力トレーニングに


Excelでの数値入力。一文字一文字の校正作業。請求書の転記。マニュアルの細かい修正……。こうした作業中、「ついミスをしてしまう」「集中が続かない」という経験はありませんか?
実は、こうした単調でも正確さが求められる作業は、「記名集中」を鍛える最適な機会。応用神経科学者の青砥瑞人氏は、集中には4つのモードがあると説明します。*3

  1. 入門集中:新しい情報に注意を向けている状況
  2. 記名集中:ひとつの課題に対して思考し続けている状態
  3. 俯瞰集中:大局的に物事をとらえ、直感的に意思決定を導く状態
  4. 自在集中:ぼーっとしているようでいて、自由に想像・妄想・創造している状況

このうち「記名集中」は、正確性と持続力が問われる重要なスキルです。そして、単調な作業こそ、この力を鍛えるのに最適な機会なのです。

 

実践のポイント:

  • 意識的な集中 :「ただの単調作業」ではなく「集中力を鍛える機会」と捉え直します。たとえばデータ入力なら、「できるだけ速く、かつ正確に」という具体的な目標を立てましょう。
  • 集中の質を観察 :自分の集中状態を意識的に観察します。どんなときに正確に作業できるのか、どんなときにミスが増えるのか。この「メタ認知」が、集中力向上の鍵となります。
  • 持続時間を計測 :集中を保てる時間を把握し、少しずつ伸ばしていきます。最初は15分から始めて、慣れてきたら20分、30分と。自分のペースで進めることが大切です。

記名集中力は、複雑な業務にも応用できる基礎的なスキルです。ミスのない正確な作業を続ける力、気が散りそうになっても踏みとどまる力、作業の質を一定に保つ力。これらは、どんな仕事でも求められる基本的な能力です。

トップアスリートでさえ、地道な基礎トレーニングを欠かしません。それと同じように、私たちも単調な作業を通じて基礎的な集中力を磨くことができるのです。

 

単調作業は「記名集中」を鍛える最適な機会。意識的に取り組むことで、他の業務にも活きる集中力が身につきます。

 

***

単調で退屈な時間も、意識的に活用することで大きな価値を生み出せます。

  1. 業務改善のきっかけに 効率化や自動化のアイデアが生まれやすい時間です。非効率な作業に気づき、改善の余地を見出すチャンスになります。
  2. 内省の時間として 自分を見つめ直し、次の成長につながるヒントを見つける時間です。普段は気づかない課題や可能性が見えてきます。
  3. 記名集中力を鍛える場に 正確性と持続力が問われる基礎的なスキルを磨く機会です。この力は、より複雑な業務にも活きてきます。

これらの活用法を意識的に実践することで、一見「無駄な時間」と思える瞬間も、確かな成長につながります。

今日からでも始められるこれらの方法で、単調な時間を価値ある時間に変えていきましょう。

【ライタープロフィール】
こばやしまほ

大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。

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