「自分でやった方が早い」は「任せる能力がない」と言ってるのと同じ。ノウハウ伝達は"基本スキル" と心得よ!

「人に頼むよりも自分でやった方が早い」そう感じることはありませんか。自分はその仕事のやり方を熟知していて、他の人よりも効率的にできる。そういう自負が強い人ほど、この考え方に陥りやすいもの。

しかし、同時にこう感じた経験はないでしょうか。「人より自分のほうがいい仕事ができるはずなんだけど、時間が足りない! 自分がもう一人いればなぁ……」

このように、自分でやったほうが早いと思ってなんでも引き受けていては、業務量が多くなってしまい、結局スピードが落ちたり、急ぐあまりに仕事の質が落ちたり、といったことにもなりかねません。

仕事の量を抱えがちな人は、もしかしたら「自分でやった方が早い」と考えてしまう病気にかかっているのかもしれません。この考え方には弊害があるのだということを、しっかりと認識しておく必要がありそうですよ。

なぜ「一人でやった方が早い」と思ってしまうのか

あなたが習熟している仕事を、他の人にやってもらうときのことを考えてみましょう。

人に頼んで、あなたの思う通りに仕事をしてもらうためには、あなた自身の頭の中で完全に出来上がっている仕事のイメージを、具体的に言葉で説明しなければなりません。ここで言う仕事のイメージとは、準備段階ですべきことから、作業の手順、関係者との連携のしかた、めざすべき出来栄え、手を抜いていい場所、逆に手を絶対に抜いてはいけない場所……など、多岐にわたります。これらのことをすべて噛み砕いて丁寧に説明するのには、時間もかかりますし、言語化して伝えるという手間もかかります。そして何より、とても疲れる作業なのです。

これほどまでに大変な作業であるにも関わらず、相手に100%正確に仕事内容を伝えることができるとは限りませんし、相手も完全には理解してくれない可能性があります。だから、誰かに説明してやってもらうよりも、仕事のことを一番理解している自分が一人でやったほうが早い、と考えてしまうのです。無理もありませんね。

特に、「一人でやった方が早い」という考え方をしがちなのは、仕事ができる人や優しい人。

仕事ができる人は、他の人よりも効率的に仕事を進められることを自負しているため、自分が効率よく仕事をこなせればこなせるほど、他人に仕事を頼むのが億劫になってしまいます。そういう人の場合、完璧を求めすぎるあまりに他人に任せることができない、というケースもあるでしょう。

また、人に仕事を頼んで相手の仕事を増やすことに申し訳なさを感じてしまう優しい人も、仕事を他人に頼まずに自分一人で抱え込んでしまう傾向にあります。

結局自分の負担が重くなるだけ

しかし、いくら自分が有能で一人で効率的に仕事をこなせるとしても、「一人でやった方が早い」と考えることは危険です。なぜなら、この考え方では長期的に自分の首を締めてしまうから。さらには、チームを崩壊させる結果をまねく可能性までもあるのです。

周りに頼らずに一人だけで仕事をこなしていると、様々な仕事がその人のもとに集中します。周りの人から「この仕事はあの人にしかできない」と認識される仕事が増え、一人でやればやるほど仕事が増えていってしまい、結局自分が大変な思いをすることになります。

また、周囲から多くの仕事を任せられることについて、最初のうちは周りの人から自分の有能さを認められているかのように感じ、得意な気持ちになるかもしれません。しかしこれは、チーム全体のパフォーマンスにも悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。

一人に大量の業務が集中し、その人が仕事の重荷と忙しさに耐えきれなくなり体調を崩してしまったら、その人がやっていた仕事を引き継げる人が他にいなくなってしまいます。そうなれば、その組織、チームの生産性は著しく下がり、最悪の場合チームの仕事全体が成り立たないということになりかねないのです。

自分がいないと成り立たないというと聞こえはいいですが、そうした考え方をしている人がいると、組織はイレギュラーな事態に対応できず、脆弱なものになってしまいます。自分一人で何でもやってしまうというのは、個人の観点からもチームの観点からも、決して褒められたことではないのです。

周りから人が離れていく

「自分でやった方が早い」という考え方の弊害はこれだけではありません。

自分一人で仕事をやってしまう人のもとには、どんどん仕事が集まってきますから、その分周りの人たちはやる仕事がなくなります。なかには、自分は必要ないのだと感じる人が出てくるでしょう。そういう人たちは、あなたから離れていってしまう可能性があるのです。これは本当にいたたまれない状況ですよね。

自分のほうが仕事ができるからとか、周りの人に任せるのは申し訳ないからという良かれの気持ちで、他人に頼らず懸命に一人で仕事をしているのに、周りの人は感謝をするどころか離れていく。誰にとっても良いことはありません。

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自分一人でやろうとせず、周りの人を信頼して任せてみる

では、どうすればこれらの問題を防ぐことができるでしょうか。答えはシンプルで、「自分でやった方が早い」という考え方をやめることです。

長期的に見て自分の負担を減らすためには、自分と同じ仕事をできる人を増やしていくことが必要。いくら自分一人でやった方が効率的で、かつ短時間でクオリティーの高い仕事ができると思っても、自分と組織の将来のことを考えて、周りの人に任せることを覚えましょう。

仕事で結果を出すことは大切ですが、組織で働く以上、周囲に働きかけ、仕事ができる人を育て、ノウハウを継承していくこともたいへん重要なことです。人に仕事を任せるということは、ある程度相手のことを信頼していないとできないことですから、仕事を任せられた人は、自分が信頼されていることを認識することができます。あなたとの相互の信頼関係はより強固なものになるでしょう。

「自分はこんなに頑張っているのに、どうして同僚や部下は手伝ってくれないのだろう」などと内心に不満を抱えるよりも人に仕事を任せたほうが、業務量の無理な増加を防ぐことができますし、周囲との信頼関係の構築につながり、誰もが気持ちよく仕事をすることができるのです。

*** 「自分一人でやった方が早い」と思ってしまう場面は多々あるかもしれませんが、そのときにはちょっと立ち止まって、自分一人でやることに意味はあるのか、将来や周囲のためになるのか、と考え直してみてください。

(参考) Business Journal|「自分でやる方が早い」「自分がいないと…」――部下が育たない「ダメ上司」の特徴 小倉広著(2012),『自分でやった方が早い病』,講談社. サイボウズ式|「自分でやった方が早い」でチームは滅ぶ

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