会議で行き詰まったとき。顧客から大きなクレームが起きたとき。思わぬアクシデントが発生したとき。ビジネスのシーンにおいては問題解決を迫られる場面が、日々起こります。
そんなとき、私たちは何に目を向け、何を決定し、どう行動すればいいのでしょうか。いえ、そもそもその問題は本当に解決すべきなのでしょうか。個々のトラブルの内容や深刻度がその都度違うから、と言っていちいち個別に解決策を探っていては、大変な労力がかかる上に対応が場当たり的になってしまう可能性も。それでは、問題解決の骨子をあらかじめ決めておいてはどうでしょう。 今回は、ディベートで用いられる三つの要素を元にした問題解決のメソッドをご紹介します。
1, 固有性
問題解決のための一つ目の要素が、「固有性」。 現在直面しているトラブルが、その問題に固有のものかどうか、という判断です。他にも違うところで同じ現象が起きてはいないか、あるいは今回の原因とは異なる何かが個別に発生してはいないか。ディベートの世界では、固有性のない議論は全く役に立たないものだ、とみなされています。 具体例を挙げて見てみましょう。
たとえば、「プロジェクトの進行で、報告が上がってこない」という問題があったとしましょう。このとき、あなたは解決策として「報告のシステムをわかりやすく、シンプルにする」ことを打ち出しました。一般的に考えれば、今まで複数の人の確認を終えた上で上長へ報告していたのが、いきなり上長への報告だけで良くなれば「報告が上がってこない」という問題はすぐに解決出来るはず。 しかし、実は報告書が上がらない原因が単なる担当者の怠慢だったら、この解決策はあまり意味がないですよね。担当者のやる気自体を上げようとしなければ、解決は望めません。
このように、今起きている問題の根っこはどこにあるのか。問題はその事象の固有のものなのか、それともたまたま例外的に起きたことなのかを常に見極めましょう。
2, 発生過程
次に注目すべきは、トラブルの発生過程です。なぜ、どういうプロセスでその問題が起こったのかを正確に知る必要があります。特にこの時意識してほしいのが、問題の発生過程で不明な部分がないかどうか。これをディベートの世界では「リンクが飛んでいる」と言います。少しでも疑問に思ったことがあれば、どんどん突っ込んでいきましょう。 そもそもなぜこのようなミスが起きたのか、二度と起こさないための解決策は何なのか。過程をしっかり把握することで、問題解決の糸口が見えてくるかもしれません。
問題発生のプロセスをおもしろおかしく表現した「風が吹くと桶屋が儲かる」を例にとって考えてみましょう。
「風が吹くと埃が立つ」これはいいでしょう。 「埃が目に入って盲目になる人が増える」本当に? なぜ? どのくらい? 「盲目者は三味線弾きに」……なるとは限りませんよね。
プロセスの中でわいてくる小さな疑問のひとつひとつに、細かくしっかりと突っ込んでいき矛盾を解消させましょう。
3, 深刻性
最後に考えなければいけないのが、「その問題ってどのくらい深刻なの?」ということです。 トラブルが発生した時、それが大きければ大きい程、トラブル解決のために時間や人員を割かなくてはなりません。問題を軽く見積もりすぎてしまうと、そこからさらに傷口が広がる恐れがあります。 適切な人員、専門家などを配置して一刻も早くトラブルを回避するには、トラブルの全体像や深刻度を正確に把握することが重要です。
深刻性をはかる尺度として、ディベートの世界には「発生確率×インパクト」という考え方があります。たとえば、どんなに発生確率が高く起こりやすい問題でも、インパクトが小さければ特に対策を講じる必要もありません。逆に、インパクトが甚大でも、めったに起こらないことなら、そんなにピリピリする必要もないでしょう。
*** いかがでしたか。何かトラブルが起きると、パニックになって何から手をつけていいか分からなくなることがあるでしょう。そんな時のためにあらかじめ手順を決めておき、今起きているトラブルの内容や深刻度を冷静に見極めて、対策を講じることが必要なのです。
参考 CoDA 全日本ディベート連盟 JDA 日本ディベート教会