毎日毎日仕事のことばかり考えて頑張っているのに、結果がついてこない。誰よりも働いているはずなのに、周りのほうが優秀。「自分は能力がないから努力で補わなければ」と、タスクで真っ黒なスケジュール表や人一倍分厚い報告書を抱えて奮闘してはいませんか?
もしかしたら、努力の方向が間違っているかもしれませんよ。
頑張りすぎても成果はあがらない
「頑張っているのに成果があがらない」という方。成果が出ない理由を「努力が足りなかったからだ」と思ってはいませんか? その考えは必ずしも正しいとは言い切れません。成果があがらないのは「頑張りすぎているから」であるケースも多々あるのです。
自分の能力の限界を超えるほど多くのタスクに労力を費やしていると、集中力が散漫になり、仕事の効率が落ちやすくなります。また、こまめに休憩をとることを怠った場合にも、集中力が途切れがちに。がむしゃらに努力することが、必ずしも成果に直結するわけではありません。タスクの数を減らし、あまり頑張りすぎないほうが、成果につながるのです。
例えば、元ウォルト・ディズニー・カンパニーCEOであるマイケル・アイズナー氏は、1990年代のCEO在任中、6週間以上先に予定を入れることを拒み、自由に使える時間を1日2時間は設けていたと言われています。1日の予定を少なくし、少ないタスクに集中して取り組んでいたそうです。
また、世界トップレベルの学力を誇るフィンランドでは、子どもたちが学校で過ごす時間は3~5時間と短く、授業数も少なく設定されています。より少ないテーマについてより深く学ぶことで学力を伸ばしているのです。
大切なのは、がむしゃらに努力することよりも、無駄を省き、力を入れるべき部分にのみ集中すること。では、省くべき無駄とはどのようなものなのでしょうか。あなたの仕事から除くべき3つの無駄をご紹介します。
無駄その1 多すぎるタスク
スケジュールで真っ黒な手帳と大量のタスクを抱えている方は、タスクの量を見直してみましょう。
効率を重視しようとすると、一度に多くのタスクをこなそうと頑張りすぎてしまいがち。ですが、「効果的に」時間を使いたいのなら、より少ないタスクに集中して質を上げるほうが成果は出やすくなります。
ロンドン大学がビジネスパーソンを対象に行なった研究によると、一度に多くのタスクをこなそうとすると、麻薬を吸ったときや徹夜したときよりもIQが低下するのだそう。皆さんは、徹夜明けの寝不足な状態で仕事をして、集中力が散漫して作業スピードが落ちたり、判断力が鈍って普段はしないようなミスをしてしまったりした経験はありませんか? その徹夜明けよりもIQが下がってしまうのですから、一度に大量のタスクを抱えることが、いかに仕事のクオリティに悪影響をもたらすかは明らかですよね。
大量のタスクをこなそうとしてしまう人におすすめなのが「40-30-20-10の法則」という時間管理法です。この方法は、1日に行うタスクを3つに絞り、使える時間のうち40%を最優先タスクに、30%を2番目に重要なタスクに、20%を3番目に重要なタスクに、そして残りの10%を他のことに使うというもの。自分が抱えるタスクに優先順位をつけ、優先度の高いものから集中的に処理していくのです。最後の10%の時間には、「いま自分がやらなければならないことは何か」、「優先する必要のないタスクや自分がやらなくてもいいタスクはあるか」など、タスクの取捨選択を行なっても良いですね。
タスクを絞って集中して終わらせることで、仕事のクオリティ向上を目指しましょう。
無駄その2 分厚すぎる報告書・企画書
毎回頑張りすぎて分厚すぎる報告書や企画書を作ってしまう人は、そこに無駄がないか見直してみましょう。
かつてソフトバンクの孫正義社長の右腕として活躍していた三木雄信氏が、無駄のない企画書づくりの方法としておすすめするのが「A4用紙1枚の企画書」です。人がほんの少し頭を動かす程度で無理なく読むことのできる視野の大きさは、上下232ミリメートル、左右323ミリメートル。このサイズはA4用紙のサイズとほぼ一致しているのだそう。A4サイズの紙上に情報を盛り込めば、企画書はかなりスリムになります。
説得力を高めようとしてついつい情報を盛り込みすぎ、分厚い企画書や報告書を作ってしまう方は多いかもしれません。しかし、人間の脳が一度に把握できるものの数は7つまで。そのため、書類にあまりに多くの項目を詰め込んでも、読み手に内容をきちんと共有することが難しくなってしまいます。
三木氏によれば、「孫社長の心を最初の10秒でつかまなければ、いくら提案書を作り込んでも話すら聞いてもらえない」のだそうですが、A4・1枚の企画書ならば、10秒もあれば何が書いてあるのかを理解できます。
極限まで無駄を省き、用紙のサイズはA4用紙1枚、項目は7つ程度に絞って、分厚すぎる企画書・報告書から卒業してみてはいかがでしょう。
無駄その3 物が多すぎるデスク
書類や物で溢れかえったデスクには、多くの無駄が潜んでいます。片付けても片付けても、気付けばいつもデスクの上が散らかっている……。あなたのデスクはそんな状態になってはいませんか?
散らかったデスクで仕事をすると、書類が見つからなかったり、すぐに始めたい仕事があるのに作業スペースが確保できなかったりして、いちいちタイムロスが増えます。そこでおすすめしたいのが、「トヨタ式片付け術」です。
無駄を排除し、効率化を徹底するトヨタ社では、整理整頓をしないといくつもの無駄が生まれると考えられています。物が溢れかえっていてはスペースの無駄、物の定位置が決まっていなければ片付ける際の判断の無駄、誤った場所に物が置いてあれば運搬の無駄が生じるのです。
以下のポイントをおさえ、ご自分のデスクで「トヨタ式片付け術」を実践してみましょう。
1. 住所を明らかにする
トヨタ式片付け術では、「物をどこに片付けたか」すなわち「物の住所」を表にまとめて書き出します。デスク上に「一段目の引き出しは〇〇、二段目の引き出しは××、青いファイルには△△……」といった表を作って置いておき、物がどこにあるか分からなくなる状態を避けているのです。デスクが整頓されるとともに、片付ける場所を判断する無駄、物を探す無駄を省くことができます。
2. 物を置かないラインを設定する
「ここからここまでは物を置かない」というラインを設定し、常にワークスペースを確保します。付箋やマスキングテープなどで、物を置かないラインに印を付けておくと分かりやすいでしょう。デスクの上が物で溢れかえっていると、作業するスペースがなくなります。作業する前にデスクの上を片付けなければならなくて時間の無駄になりますよね。デスク上に作業スペースラインをひけば、仕事の効率アップが期待できるのです。
3. 使う場所に使う物を置く
物は使う場所、かつ、すぐに取り出せる位置に収納しましょう。使うものが瞬時に手に取れる場所にないと、作業効率が一気に下がってしまうからです。仕事中にパソコンを使いながらポストイットにメモをとる習慣がある場合、ポストイットはパソコンの傍に置いておかなければ不便です。勉強でも、英文を読んでいる際に手が届く距離に電子辞書がなければ、一度作業を中断して席を立たなければなりません。普段よく使うものは、使う場所に必ず置いておき、無駄な時間を減らすよう意識してください。
***
頑張っても頑張っても成果が出ないという方は、仕事の “無駄” を探してみてはいかがでしょうか。
(参考)
Forbes JAPAN|時間管理のコツは「1日の予定を減らす」こと
STUDY HACKER|マルチタスクでIQが下がる!? 私の生産性を1.5倍にした効率的な「シングルタスク」3つの極意
プレジデントオンライン|孫正義式「仕事はすべてA4 1枚」の技術
STUDY HACKER|仕事がデキない人の机はなぜ散らかり放題なのか? 時間と意志力を温存する “トヨタ式” 整理整頓術。