脳科学で明らかになった “記憶に残る” 読書術。やっぱり「本に書き込む」が最強だった。

みなさんは、本を読みっぱなしにしていませんか? 一通り読んだけれどいまいちわからなかった、なんとなくこう書いてあった気がするけれど詳しくは忘れた……。せっかくお金を払って時間を割いて読んだ本が身にならないのは、もったいないですよね。

そこで、読書術のプロが説く“無駄にならない読書のし方”を調べてみました。『読んだら忘れない読書術』の著者・樺沢紫苑氏、『アクティブ・ブレイン式 記憶できる読書術』の著者・矢沢大輔氏、そして『7日間で成果に変わるアウトプット読書術』の著者・小川仁志氏が共通して推奨する読書術、それは本に書き込むことでした。

本に書き込みをすることの効果

本に書き込みをしながら読むと、書き込みをしない場合に比べて読書の効果がアップします。それは、書き込むという行為が脳を活性化するからです。

脳科学に詳しい精神科医の樺沢紫苑氏は、本を読みながら書き込みをすることで脳の複数の領域が活性化し、本の内容が記憶に残りやすくなると言います。人間の脳は「読む」「考える」「書く」「話す」などを全て別々の部分でおこなっており、同時に多くの部分を使うほど脳が活性化するのだそうです。

「脳トレ」で有名な東北大学の川島隆太教授は、この働きを利用した学習法として音読を推奨していますが、書き込みも同じ。脳の「読む」部分に加え、書き込む内容(意見や疑問)を「考える」部分、手を動かす「運動野」、そして文字を書くための「書字」に関連する部分が、一度に働きます。こうして脳が活性化するため、本の内容が脳にインプットされやすくなるのです。

本はきれいなまま読みたい。本に書き込みをするのには抵抗がある。そんな方もいるかもしれませんが、本への書き込みは脳を活性化し読書の効果をアップさせます。次に紹介する書き込み術を、ぜひ実践してみましょう。

「自己成長」につながる3行を見つける書き込み術

ここからは、本に書き込みをする際のテクニックをご紹介します。まずは、樺沢紫苑氏が推奨する「自己成長」につながる3行を見つける書き込み術「本を一通り読んでもどこが自分にとって重要かわからない」という人におすすめです。

先ほど、読書と脳の働きのところで紹介した樺沢氏は、精神科医であるだけでなくベストセラー作家としてビジネス書の執筆をするほか、メールマガジンやSNSを通じて精力的な情報発信をおこなっています。こうした樺沢氏の膨大なアウトプットのエネルギー源が、圧倒的なインプットです。樺沢氏は、月20~30冊もの読書を30年以上続けているのだそう。

そんな樺沢氏による書き込み術では、まず好きな色の蛍光マーカーとボールペンを1本ずつ用意してください。本を読みながら、気に入った箇所や新たな発見のあった箇所にマーカーでラインを引き、ひらめきや疑問点などをボールペンで余白にどんどん書き込んでいきます。1冊の本を、まさに学校の教科書のように使うのです。

と言っても、1冊の本で何十箇所もラインを引くと、どこが最重要かわからなくなってしまいますよね。そこで樺沢氏が勧めるのが、1冊から3行のエッセンスを読み取ること。1冊の本から1行ずつ3箇所、合計3行ラインが引ければ、その本から十分な学びを得たことになり、書籍代の元がとれるのだそうです。

1冊の本でたくさんラインが引けたら、最も「自己成長」につながりそうな内容を手がかりに、3行のエッセンスを探してみましょう仕事や生活に役立ち、アウトプット(樺沢氏の場合は執筆)に直結する内容こそが、自己成長につながるエッセンスです。樺沢氏はこう言います。

アウトプットとは、本の執筆をすることだけにとどまりません。企業に勤めるビジネスマンの方は、プレゼンテーションや企画提案などの機会があると思います。こういった場で、これまでの読書で得た知識や発見をアウトプットし、それが結果に結びつけば、その読書は本当にあなたの地となり肉となった、「本物の読書」だったといえるのです。

(引用元:樺沢紫苑(2015),『読んだら忘れない読書術』,サンマーク出版.)

本から3行のエッセンスを抽出し、確実に学び・成長へとつなげましょう。

「中心点をとる」書き込み術

次に紹介するのは、記憶術のセミナーを開催しているアクティブ・ブレイン協会の認定講師で、仕事の成果を上げる読書法や学習法を教える矢沢大輔氏が推奨する方法。「中心点をとる」つまり「1冊の本を通じて筆者が一番伝えたい主張をつかむ」書き込み術です。これは「本全体を通して結局何が言いたいのかわからない」という人におすすめボールペン1本だけでできますよ。

本の中心点つまりメインの主張は、タイトル・帯・目次・前書き・後書きを読めばほとんどわかります。言ってみれば当たり前のことですが、タイトルではテーマがズバリ言い表され、目次では本の全体像を見渡すことができ、帯・前書き・後書きでは著者の主張が端的にまとめられているのです。これらを使わない手はありません。矢沢氏の場合、帯・前書き・後書きなどを読んでいて、筆者が最も伝えたい中心的な主張を簡潔に表している箇所を見つけると、そこに線を引いているそうです。

こうして中心点をとることができたら、本文を開きます。しかしまだ読みません。まず全体を眺め、中心点に関わる文章を探してペンで印を入れていきます。つい文章を読み込んでしまわないように、後ろからめくってチェックするといいそうですよ。

そして、本文全体にチェックを入れ終わったら、いよいよ本格的に文章を読んでいきます。すると、中心点がすでにわかっているので論理展開がつかみやすく、本全体の内容がするすると頭に入ってくるのです。読んでいる最中も、中心点に関わる文章を見つけたら線を引いていきましょう。

本の最も重要な主張がスムーズに理解できるという、この読書術。ぜひ試してみたいですね。

「本を使える化」する書き込み術

最後に紹介するのは、哲学者の小川仁志氏が推奨する「本を使える化」する書き込み術です。小川氏はもとはサラリーマンでしたが、本の内容を実際に仕事や人生で生かすことに重きを置いたアウトプット読書術を徐々に確立し、10年間で100冊以上の本を出版し10万部以上を売り上げるベストセラー作家となりました。そんな小川氏の経験・知見に基づく書き込み術は、「本を具体的な情報源としてどう生かせばいいかわからない」という人におすすめです。

小川氏は、本に書き込んでカスタマイズすることによって、本を情報源として使いやすいものにすることを勧めています。これは、仕事や人生において本の内容を役立てたい時、本で得た情報をスムーズに引き出せるようにするためです。小川氏はこれを、本を「使える化」すると表現します。

本を「使える化」するためには、一切の妥協は禁物ですし、躊躇してもいけません。できるだけ本を傷つけたくないのはわかります。ただ、本はきれいに保たれるより、読者の実になったほうが幸せだと思うのです。これは食べ物と同じです。 (中略) 本も同じで、血や肉にするためには、いや、「知」や肉にするためには、きれいに保っていてはいけません。そこでたとえば、まとめのある個所や引用すべき内容が掲載されている重要なページがあれば、私は容赦なく折り曲げます。そのほうがすぐ探せるからです。

(引用元:小川仁志(2016),『7日間で成果に変わるアウトプット読書術』,リベラル社.)

小川氏が書き込みに使っているのは赤・黒のボールペンとシャープペンシルが一体になったペン。基本はシャープペンシルを使い、重要なところには黒ボールペン、最重要なところには赤ボールペンを使い、段階分けして線を引くのだそう。そして単に線を引くだけでなく、本で得た情報を今後どう使うかを考え、その用途を示す記号も書き込みます。用途別の記号は4つです。

C:Citation 引用する箇所 P:Point 趣旨を理解するために重要な箇所 K:Keyword 引用まではしないものの、使えるフレーズ O:Others 上の3つ以外で有益な情報

これらの記号を書き込んでおくと、あとで本を振り返って情報を取り出したい時に、どこを見ればよいか一目でわかります。さらに小川氏は、本を読みながら浮かんだ感想・疑問・アイデアなどを、すぐ余白に書き込むことも勧めています。このように本に書き込みをして、本を自分なりに「使える化」すれば、本が自分だけの道具になります。「本の内容をどういかせばいいか分からない」という悩みからは解放されるでしょう。

*** 自分に合いそうな書き込み方はありましたか? いきなりプロの読書術を完璧にこなすことは難しいと思うので、まずは本を開く時にペンを持って、「あっ」と思ったところに線を引くことから始めてみましょう。本を自分なりにカスタマイズすることで、読書の可能性は無限大に広がっていくはずです。

(参考) 樺沢紫苑(2015),『読んだら忘れない読書術』,サンマーク出版. 矢沢大輔(2011),『アクティブ・ブレイン式 記憶できる読書術』,実務教育出版. 小川仁志(2016),『7日間で成果に変わるアウトプット読書術』,リベラル社. Wikipedia|樺沢紫苑 アクティブ・ブレイン協会|講師紹介 矢沢大輔 Wikipedia|小川仁志 SankeiBiz|子供の頭をよくする音読&褒めワザ 「脳トレ」で知られる川島隆太所長に聞く

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