みなさんは、仕事をする際にひとりでなんでもかんでもやろうとしてはいませんか。「他の人がどうも頼りなくて、自分でやってしまった方が早い」「仕事を頼んだら、その人に迷惑がかかってしまうのではないか」。こういった理由で、なかなか人を頼れない方もいるかもしれませんね。

ただ、ビジネスの世界では、人を頼ることができないと知らず知らずのうちに周囲の人に差をつけられてしまう可能性があります。人を頼れないのは “損” なのです。そこで今回は、他者に頼ることができずにいると損をしてしまう理由と、うまく人に頼れるようになるための方法についてお伝えします。

人に頼れないと損をしてしまう理由1:自分に限界がきてしまうから

もし、純粋に前向きな気持ちから「誰にも頼らず全部ひとりで頑張ろう」と思っていたとしても、その状況を続けるうちにどこかで無理が生じてしまう可能性があります。仕事量の増加や過度なプレッシャーによって自分の限界を超えたときに、体調を崩したり精神を病んでしまったりすることがあるのです。

福岡県立大学の研究によれば、人を頼ることができない人には「他者からの自分への評価に過敏である性格」という特徴があるのだそう。人に頼むと「仕事ができない人」だと評価されてしまうのではないか。そう心配して、必要以上の仕事量を抱えてしまうというわけです。一生懸命に頑張っていても、頑張りすぎが原因で “ポキリ” と折れてしまう……。それでは本末転倒ですよね。

精神科医の和田秀樹氏も、自分自身の弱さを見せたがらず他人への甘え方を知らない人は、うつ病になりやすいと言います。困ったときには周囲に頼ることができる人のほうが、現代社会を生き延びやすいのだそう。

「全部ひとりでやったほうが格好いい」「誰の助けも借りずに完璧にこなそう」こう考えて人を頼らずにいる状態は、自分を蝕んでいる状態であることに等しいのです。心当たりのある方は、まずはこのことを自覚するべきではないでしょうか。

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人に頼れないと損をしてしまう理由2:ミスにつながりやすいから

何でも自分だけでやろうとして人に頼らなさすぎると、ミスをしてしまい、かえって周囲を心配させたり迷惑をかけてしまったりする場合があります。

元・陸上自衛隊衛生学校心理教官でNPO法人メンタルレスキュー協会理事長の下園壮太氏は、自分だけでなんとかしようとする人を、ネットにつながっていないPCのことを指す「スタンド・アローン」にたとえています。一見自立しているように見えるものの、スタンド・アローンのPCはネットにつないだPCと比較すると能力がかなり限定されているもの。人もこれと同じで、誰の助けも受けずにいては、知見も判断力も限られたものになってしまうのです。

特にビジネスの現場では、自分の裁量だけで仕事を進めていると、懸念事項に気づかず大きなミスを起こしてしまうことになりかねません。例えば、上司から取引先との重要な契約を任されたとしましょう。このとき、他者に頼れない人は「契約を自分ひとりで完了させなければ」と考えてしまいがち。すでに別の仕事を多く抱えていて忙しかったり、契約の内容について理解しにくいところがあったりしても、自分でなんとかしなければと思ってしまいます。その結果、適切な判断をすることができずミスをしてしまい、後になってもっと早くから人に頼っておけばよかったと思う結果になってしまうのです。

もちろん、人に頼りすぎて自分では何もしないというのは考えものですし、全部自分で無理なくできる状況であるならば、それも良いでしょう。しかし、誰にも頼らない自分の力は、限定された力でしかないことを知っておくべきなのです。

上手に人に頼る方法

「仕事をひとりで抱え込んでしまったせいで締め切り目前! これはいよいよ誰かに頼らなければ!」
「自分だけでこなそうとしたつもりが、ミスしてしまった。その結果、先輩の手を煩わせることになった……」

このようにして最終的に人を頼ることになるなら、早い段階で頼ったほうが、自分も気楽だし相手にも負担がかからないはずですよね。自分ひとりだけの能力には限りがあるのですから、できないことは人に頼んだほうがいいのです。では、私たちはどうすればうまく人を頼ることができるのでしょうか。具体的な方法をご紹介します。

1. 自分の思考・行動パターンを意識する

自分はどのようなときに人に頼らないと限界を超えてしまうことになるのか、分かっている人は意外にも少ないのではないでしょうか。そこで、「人に頼るべきか否か」を把握する必要があります。

そのために、自分の思考・行動パターンをチェックしてみてください。心理アドバイザーの出口稀一氏は、人に頼れない悩みを持つ人によく見られる、潜在意識下での思考・行動のパターンとして、次の4点を挙げています。

物事の基準が他者にある
「本当は辛くて誰かに頼りたい」という自分の気持ちを大事にするより、他者から「優秀な人だ」という評価を得たい。

得たいことよりも “避けたいこと” にフォーカスする
人に頼らないのは「自分ひとりで仕事ができないなんて、能力のない人だ」という低評価を得ることを避けたいからだ。

未来ではなく、過去に意識が向きやすい
過去の失敗を悔んだり、誰かに言われた一言をいつまでも引きずったりする傾向にある。このタイプの人は、「しっかりしない自分には価値が無い」と思いがち。

他人に自分のルールを当てはめる
「人に頼る前に、自分で頑張るべき」という考えに縛られているため、他者にうまく頼っている人を見ると苛立つ。

以上4つのポイントのうち当てはまるものがあった「頼り下手」なあなたは、ビジネスコーチであるJoyce Layman氏が伝える紙に書き出すという方法で、頼り上手を目指してはいかがでしょう。こうなったらいいなと自分がイメージすることを紙に書き出すと、その内容に常に意識を向けやすくなるのだとか。

みなさんも、「仕事量が多くて大変だ、もう少し減ったら楽になるだろうな」「新しいプロジェクトにとても責任を感じる、誰かにアドバイスが欲しい」などとメモ帳に書いてみてください。書き出すことで、頭の中で「誰かに頼りたい」と思っているだけのときよりも、実際に人に頼るという行動を起こしやすくなるでしょう。

2. 小さな頼みごとの経験を積む

先ほどスタンド・アローンの例えを挙げましたが、ネットにつなぐのは最初こそ面倒なものですが、いったんつないでしまえばとても快適ですよね。下園氏は、これと同様に、人に頼むのがどうも苦手だという人は、1回でも人に頼む経験をしてみるとよいと言います。

そのためには、相手の負担にならない程度の小さな頼みごとから始めてみてはいかがでしょうか。例えば、「隣の部署へ行かれるのですか? でしたらついでに、〇〇さんに書類を届けてもらえませんか」と頼んでみるのです。そして、頼みを聞いてもらったら、きちんとお礼を言ったり、今度は相手の頼みを引き受けるようにしたりしましょう。

ちょっとしたことを人に頼んでコミュニケーションを積み上げていけば、信頼関係が生まれ、頼りやすい関係を築くことができるに違いありません。

ネットにつながったPCがスタンド・アローンのPCに比べ高い能力を得るのと同じように、適切に人に頼ることができるようになったビジネスパーソンの能力は大いに高まることでしょう。

***
頼らないほうがいいと考えていた方や、頼るのが苦手だった方は、「頼り上手な人」を目指してみてください。きっと、仕事の質を無理なく高めることができるようになりますよ。

(参考)
渡邊つかさ,池志保(2017),「他者に頼りたくても頼れない要因 ~自己愛と友人との付き合い方の観点から~」,福岡県立大学心理臨床研究,9巻,2017,pp.65-74.
PHP Online衆知|甘え方を知らない人はうつ病になりやすい
日経ウーマンオンライン|人に頼ることが苦手
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出口稀一|【2018年最新版】人に頼れない、甘えられない悩みの心理的背景と改善法