”たった3行”の日記が仕事の質を一段あげる。抽象化力を鍛える「つまり日記」をやってみた

抽象的思考力を鍛え、仕事の質を高める1日3行の「つまり日記」実践ノート例

仕事をしていて、こんな経験をしたことはありませんか?

  • 上司の説明が、かなり具体的でないと動けない
  • プレゼンや報告の場で「結局何が言いたいの?」と言われてしまう
  • 同じようなトラブルに毎回ゼロから対応している
  • 仕事をこなしているのに、成長している実感があまりない

もしひとつでも当てはまるなら、それは「抽象的思考力」が足りていないサインかもしれません。

抽象的思考力とは、目の前の出来事から共通する構造や意味を取り出して考える力のこと。この力を意識して使うようになると、問題解決のスピードや仕事の理解度が大きく変わります。

ビジネスパーソンにとってなぜ抽象的思考力が重要なのか、そしてそれを鍛える方法として「つまり日記」を紹介します。

なぜ「抽象化」ができると仕事が速くなるのか

具体的な情報から共通点を見つけ出し、抽象化して考える脳の働きのイメージ

同じ仕事をしていても、成長のスピードが早い人とそうでない人がいます。ある人は一度の失敗からすぐに改善策を見つけ、次の仕事で成果を出す一方で、同じようなミスを何度も繰り返してしまう人もいます。

この差を生む要因のひとつが、「抽象的思考力」です。

「抽象的思考力」とは?

物事の背後にある意味や構造を取り出して考える思考のことです。別の言い方をすると、「具体的な出来事から共通するパターンを見つける力」とも言えます。具体と抽象を行き来する力(往復思考)でもあるでしょう。

解 説

人間が一度に保持できる思考の数は、わずか4つ

心理学者のネルソン・コーワンが提唱した「マジカルナンバー4」という説によれば、人間が一度に保持できる思考の数は、わずか4つ程度とされています。*1 情報量が多い現代のビジネス現場で、具体的な事象をそのまま1つずつ覚えようとすると、すぐに脳の容量はパンクしてしまいます。だから物事を抽象化し、1つの抽象的な概念の中に、背後にある膨大な具体例を格納しているのです。抽象化によって思考が持つ情報の密度は高められ、脳の限られたリソースを最大限に活用でき、結果として応用力や問題解決のスピードが大きく向上します。ビジネスコンサルタントの細谷功氏は、プレイヤー・マネージャー・リーダーと職位が上がるほど仕事の抽象度が高くなると指摘しており、抽象化思考力はビジネスパーソンが成長するうえで中核となるスキルだと位置づけています。*4

抽象的思考ができるようになると、新しい問題にぶつかっても、過去の経験から知恵を生み出せるようになります。その結果、このようなことができるようになります。

  • 意図や状況をスムーズに理解できる(論理的思考力の向上)
  • 相手に伝わる表現を選べる(言語化スキルの獲得)
  • 応用力が高くなる(未知の課題への対応力)

どれも、仕事をするうえで欠かせないスキルです。

若手のうちは、目の前の具体的な作業のやり方を覚えていくだけで良かったかもしれません。しかし、さらにキャリアを積んでいく段階に差し掛かると、それだけでは行き詰まってしまいます

抽象的思考力を養えば、どんな場面でも汎用的に活用できる力を身につけることができます。それが、行き詰まりを突破する鍵なのです。

抽象化思考力を鍛える「つまり日記」

「要するにどういうことか?」と情報を要約し、問題解決能力を高めるビジネスパーソン

では、「抽象的思考力」を高めるにはどうしたらいいのでしょうか。

おすすめは、「つまり日記」を書くこと。具体的には、誰かに話したい情報を書き、最後に「つまり」と続けて要約します。

一般社団法人教育デザインラボの代表理事を務める石田勝紀氏は、「抽象的思考力を伸ばすためには、物事をまとめる練習が必要」だと語ります。*2

そのときにキーワードになるのは「つまり」「要するに」といった接続詞。

最後に「つまり」を使ってシンプルにまとめることで、自然と抽象的思考力を鍛えることができるのです。

【実践】筆者がつけてみた「つまり日記」

筆者が実際に書いた「つまり日記」を紹介します。

日常のニュースや出来事を抽象化し、経験学習へと変える3行日記の書き方

毎日ひとつ、見聞きした情報を書き出しています。筆者の場合は、ニュースやラジオ、書籍に触れ「これは誰かに話したいな」と感じた情報を書きました。この段階では、難しく考えずに自然体で書き出せばOKです。

次に、「つまり」と書き、書き出した内容を短くまとめます。筆者はできるだけ1〜2行程度になるように心がけました。

「つまり日記」を続けた効果

一週間ほど続けてみると、多くの情報のなかから本質的なポイントを抜き出し、それを端的に表現する力が少しずつ鍛えられていると感じました。

同時に、抽象的思考力を高めるには、単に「重要なポイントを見抜く力」だけでなく、それを適切な言葉で表現する力も欠かせないのだと実感しました


脳内科医の加藤俊徳氏は、抽象的なことを考えるときは「思考系脳番地」が、言語化するときは「伝達系脳番地」が使われると説明しています。*3

抽象的思考が苦手だと感じる人は、これらふたつの脳の機能を使う機会がこれまで少なかっただけです。意識して使えば、いまからでも十分に鍛えることができます

加藤氏も、あまり使っていない脳の機能を意識的に使うようにすると、脳は変化すると述べています。*3


「つまり日記」は、流れてくる雑多な情報を整理し、ポイントだけを抽出し、それを言葉にするプロセスを繰り返す習慣です。この習慣を続けることで、確実に抽象的思考力の向上につながっていきます。また、自己を客観視する「メタ認知」にもつながっていくでしょう。

📝 Step Up:経験学習に変える「3行日記」

さらにこの習慣を深めるなら、要約で止めずに「次はどうする?」というアクションを加えるのがおすすめです。

  1. 事実(具体): 起きたこと、心が動いたこと
  2. つまり(抽象): 出来事の本質、構造の抽出
  3. だから?(転用): 次の行動への活用

「つまり」で本質を掴み、「だから?」で次の行動を決める。この3行のサイクルを回すのはいわゆる「経験学習」そのものといっても良いかもしれません。

***

抽象的思考力は、仕事をするうえでぜひもっておきたい能力です。そして、それは何歳からでも身につけることができます。

目の前の出来事に振り回されず、「これは要するに、こういうことだ」と抽象化できるようになれば、ストレス耐性が高まり、人生全般を俯瞰して捉えられるようになります。

まずは1日3行。「つまり……」と書き出してみてください。その積み重ねが、あなたの思考の質を確実に変えていくはずです。

よくある質問(FAQ)

Q. 抽象的思考力とは簡単に言うと何ですか?

目の前の具体的な出来事から、共通するパターンや本質的な意味を抜き出して考える力のことです。この力を鍛えると、応用力や問題解決のスピードが大きく向上します。

Q. 抽象化思考を鍛える「つまり日記」の書き方は?

日常の出来事や見聞きした情報を書き、最後に「つまり(要約)」でまとめる方法です。さらに「だから(次の行動)」まで加えた3行にすると、出来事の本質を掴み、経験学習に変える効果があります。

Q. 仕事で「結局何が言いたいの?」と言われる原因は?

情報を抽象化せず、具体論のまま伝えているためです。人の脳は一度に4つ程度しか情報を保持できないため、本質を要約して伝える訓練が必要です。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。