「話題が途切れるのが怖くて雑談が苦手……」
「Web会議だと対面よりも会話が弾みにくい……」
上記のような悩みがあると、人は 「うまく話す」方法について考えをめぐらせがち。しかし実際には、むしろ「聞き方」を変えるだけで会話が続きやすくなるケースがあります。
今回は、雑談・電話・Web会議といった3つのシーン別に、会話をスムーズに運ぶ聞き方のコツをご紹介します。
話す・聞くのバランスが大事
会話が続かない原因は、話し方だけではありません。
公認心理師の川島達史氏によると、「健康的な会話は、傾聴・発話のバランスが40~60%ぐらいが目安」。このバランスが崩れると、話しすぎ・聞きすぎになってしまいます。*1
つまり、会話を盛り上げようと話すことにばかりに注力しても、ひたすら聞いてばかりいても、会話がうまくいかないわけです。大切なのは、「話す・聞く」 のバランス。川島氏の説明にならえば、いずれも最低4割、最高6割の範囲を守る必要があります。
ただ、往々にしてやりすぎてしまうのは、聞くより話すほうかもしれません。人は自分のことを話すとき、快楽ホルモンのドーパミンを分泌しやすいからです(2012年にハーバード大学心理学教授のジェイソン・ミッチェル氏が発表)。*2
そうした背景をふまえ、次の項では聞き手をベースにした会話のコツについて、シーン別に説明いたします。
1.「雑談」ではフィードバックと質問
雑談で会話が続かないと、気まずくなり、何かいい話題はないかと必死に考えてしまうのではないでしょうか。じつは、「何かいい話題」はあなたの頭のなかではなく、相手の言葉にあります。雑談で会話を続けるコツは、相手の言葉に反応して、質問を投げかけることなのです。
日本能力開発推進協会メンタル心理カウンセラー・上級心理カウンセラーの桐生稔氏によれば、人が心地いいと感じるのは、話が上手な人より「話しやすい人」。そして、話しやすい人とは、「自分に対して質問を投げかけてくれる人」です。*2
たとえば初対面なら「会社はお近くなんですか?」、職場なら「あの企画、順調?」など。桐生氏は「ちょっとした質問が、良質なコミュニケーションを育むきっかけ」だと言います。ただ、質問ばかりだと、相手の心地よさが半減してしまう可能性があります。*2
前項で触れた、傾聴・発話のバランスから見てみても、いいかたちではありませんよね。それを避けるには――
「そうだったのですか。それは大変でしたね(フィードバック)。そのあと、どうされたんですか?(質問)」
といった具合に、ひとこと質問前にフィードバックを入れるといいそうです。そうすれば、話を受け止めていることが相手に伝わり、心地よく質問に答えてくれる流れになるはずです。*2
これまでの内容をふまえ、職場での雑談を想定した例を挙げてみましょう。
自分:先輩、お疲れさまです。さっきのお電話、山田商事さんの案件ですか?(質問)
先輩:そうそう、思うように進まなくてね。来週、先方と打ち合わせの予定だったんだけど延期になったんだ。
自分:いろいろと準備されていたのに、延期だなんてきついですね……。(フィードバック)その後の日程は決まっているんですか?(質問)
先輩:来月。ただ待っているだけでは時間がもったいないから、追加の企画も考えて提案してみようかと思っているよ。
自分:さすがです! 私なら追加の企画を考える余裕なんてないと思います。(フィードバック)何か先輩には、冷静に対処するための秘訣があるのでしょうか?(質問)
このようにフィードバックと質問をセットで返すことで、ほどよく質問を投げかけてくれる、話しやすい人になれるでしょう。雑談が盛り上がらないとお悩みなら、ぜひ一度お試しください。
2.「電話」はタイミングとニュアンス
電話においても聞く態度は大切です。
講師派遣型研修事業などを行なう株式会社インソースは、電話越しに相手と信頼関係を築くためにも、相手の話をしっかり聞いていると伝える 「相づち」 を重要視しています。その際に大切なのは以下の2点。*3
- 【適切なタイミング】:相手が伝えたいことを察し、その話が出たらすかさず、相手の話に重ならないタイミングで相づちを打つ。
- 【適切なニュアンス】:強弱や抑揚で言葉に意味合いをもたせ、感情豊かに相づちを打つ。たとえば力強い「はい」は了承。余韻を残す「はい」は共感。深く重い「はい」は恐縮。
株式会社Cプロデュースでコールセンターコンサルタントを務める山部典子氏も、電話で相手の話を聞くプロフェッショナルとして、相づちのポイントに「タイミング」や「声に表情をつける」ことを挙げています。*5
たとえば、取引先から相談されていたことについて、断りの連絡を入れる場面なら、次のように相づちを打つのが好ましいでしょう。
自分:先日ご相談いただいた件ですが、社内で相談したところ、今回はお断りしなくてはならない結果となりました。申し訳ございません。
相手:そうですか……。とても残念です。こちらも御社に歩み寄ってご提案したつもりなのですが。
自分:そうですよね。(余韻を残し、相手の話に重ならないように)せっかくご提案いただきましたのに、ご期待に沿えず申し訳ございません。(深く重く、申し訳ない感情を込める)
相手:たとえば、追加で資料を提出すれば再検討していただくことは可能ですか?
自分:あ、はい、もちろん可能です。(力強く、相手の話に重ならないように)お手数かと存じますが、追加で資料をご提出いただければ、再度社内で検討いたします。(力強く)
相手と気持ちよく会話を続けるためにも、対面で話すとき以上に相手の心情に寄り添うことを心がけ、状況に合ったタイミングとニュアンスで相づちを打ちましょう。
3.「Web会議」では大きくうなずく
複数の人が参加するWeb会議での相づちは、なかなか難しいものです。やっと相づちを打てたと思ったらタイミングが悪く、その声で上司の言葉をかき消してしまった――なんてこともあるかもしれません。
しかし、何も反応せずただ聞くだけでは、会議の雰囲気が悪くなってしまいます。それならWeb会議では、相づちの代わりに大きく動作でうなずくのはいかがでしょう。
コミュニケーション研修・研究を行なう藤田尚弓氏によれば、オンラインにおける相づちのメリットは、よく聞こえている、理解していると伝わること。しかし、タイミングがずれて話の流れに支障をきたす場合もあるので、Web会議で相づちを打つ際は、対面時よりも頻度少なめ・短めの相づちにするといいそうです。*4
そして、相づちが苦手な人に対しては、「画面越しでもわかるよう大きく頷く」ことも有効だと述べています。そうすれば、言葉にせずともきちんと聞こえています、よくわかりますと意思表示できるからです。*4
うなずくだけなら、さほどタイミングを気にしなくていいので、実践しやすいのではないでしょうか。Web会議でのやりとりに困っている人は、ぜひ試してみてください。
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今回は、聞き手をベースにした会話のコツについて、シーン別に説明しました。会話が弾まないことに悩んでいる方の一助となれば幸いです。
*1: Direct Communication|会話力のトレーニング方法,上げる方法
*2: 東洋経済オンライン|「雑談が苦手」な人は話す内容を気にしているから
*3: 株式会社インソース|【第8回】「お客様に喜ばれる『あいづち』とは?」~「電話応対の評価を上げる25のポイント」
*4: All About|若手社員のWeb会議への悩み・ストレスを緩和する方法
*5: Cプロデュース|【コールセンターの聴く力2】相槌をうつ
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。