
助けてもらったとき「すみません」と言っていませんか?
褒められて、反射的に「いやいや……」と謙遜していませんか?
じつはこういう場面、「すみません」や「いやいや」より「ありがとう」のほうが、相手にずっと気持ちよく伝わります。「ありがとう」には、相手を前向きにする力があるからです。
――って、こういう話、聞いたことありますよね。わかってはいる。でも、できていない場面が、けっこうある。
強い抵抗があるとか、難しいという話ではなく、慣れの問題だったりもします。
そもそも「すみません」を「ありがとう」に替えるといっても、単語だけ変えればいいわけではないんですよね。
ちょっと考えるのも億劫で、つい使い慣れた「すみません」を多用する。そんな具合ではないかと思います。
たとえば「いやいや、自分なんてまだまだです」を、そのまま「ありがとうございます。自分なんてまだまだです」にしたら、なんだか変。そうではなく、
「ありがとうございます。○○さんにご指導いただいたおかげです」
――こう続ける。この“続け方”が、とっさには出てこないものです。
そこで今回は、場面ごとの「ありがとう」例文集をつくりました。そのまま使えるセリフを、取り入れられそうなものから使ってみてください。
1. 助けてもらったら、「すみません」より「ありがとう」
まずは、いちばんかんたんな場面から。お礼のつもりで出る「すみません」は、ほぼそのまま「ありがとうございます」に置き換えるだけでOKです。
NHK学園社会福祉士養成課程講師の大谷佳子氏も、「『すみません』はとても便利な言葉ですが、お礼を言うときは『ありがとう』と伝えるほうがポジティブ」と話しています。*1
【例①】手伝いを申し出てもらったとき
「忙しそうだね。なにか私にできることある?」✖️「すみません、これをお願いできますか?」
⭕️「ありがとうございます。これをお願いできますか?」
【例②】ミスを指摘・フォローしてもらったとき
「ここの数字ずれているから、報告する前に修正したほうがいいよ」✖️「すみません……修正します」
⭕️「ありがとうございます。修正します」
逆の立場に立ってみてください。誰かのために行動しようとしたとき、相手に恐縮されたらどう感じるでしょうか?
「手伝ってあげたいけど、逆に気を遣わせてしまうかもしれないから、やめておこう」——そう思って、せっかくの善意にブレーキをかけてしまうかもしれません。
そうなれば、チームのポジティブな助け合いの循環が止まってしまいます。
助けた側が本当に受けとりたいのは、「手を煩わせてしまって申し訳ない」という気持ちではなく、「助けてもらえてよかった!」という明るい笑顔や言葉のはずです。
「ありがとうございます」と素直に受けとることで、相手は「役に立ててよかった」という充足感を得られ、チーム全体の雰囲気もより前向きなものへと変わっていくでしょう。
次に誰かに助けてもらったとき、「すみません」と言いそうになったら、意識して「ありがとうございます」に替えてみましょう。

2. 褒められたら、謙遜より先に「ありがとう」
ここからは、少しだけ組み立てが要ります。仕事の出来や持ち物を褒められたとき、つい「いやいやそんな……」と謙遜していませんか?
ただ、この「いやいや」をそのまま「ありがとう」に置き換えるだけでは、かえってちぐはぐになりがち。コツは、まず「ありがとうございます」と受けとってから、短いひと言を添えることです。
謙遜しすぎると、せっかくの好意に水を差してしまったり、失礼な印象を与えてしまったりすることもあるので、まずは素直に受けとりましょう。*2
【例①】仕事の出来を褒めてもらったとき
「今日のプレゼンよかったよ!」✖️「いや〜、自分なんてまだまだです」
⭕️「ありがとうございます。○○さんにご指導いただいたおかげです」
【例②】成果を褒めてもらったとき
「プロジェクト大成功だったね」✖️「そんなことないです。運がよかっただけです」
⭕️「ありがとうございます。チームで取り組んだ結果が出て、私もとても嬉しいです」
【例③】信頼の言葉をかけてもらったとき
「頼りにしてるよ」✖️「とんでもないです」
⭕️「ありがとうございます、励みになります。ご期待に応えられるよう、精一杯頑張ります!」
【番外編】持ち物を褒めてもらったとき
「そのネクタイ素敵だね」✖️「安物で……」
⭕️「ありがとうございます。今日の会議のために気合いを入れてみました!」
⭕️「ありがとうございます。先日○○に旅行したときに購入したものなんです」
「ありがとう」にエピソードを添えると会話も自然に広がるので、ぜひ試してみてください。
次に褒めてもらったとき、「いやいや……」と言いかけたら一度止めて、「ありがとうございます」を先に口に出してみましょう。その後に短いひと言(感謝・意気込み・エピソードのどれでも)を添えるだけで十分です。

褒めているのに嫌われる。部下の信頼を失う "よくない褒め方" の特徴
3. 部下を褒めるなら、「ありがとう」も添える
最後は立場を変えて、上司が部下を褒めるとき。ここはこれまでと違い、言い換えではなく“足し算”です。
「よくやったね」「仕事が早いね」と褒めるだけで終わらせず、そこに感謝の言葉を一つ加える。それだけで、「役に立てて嬉しい」という相手の実感がぐっと深まります。
一般社団法人日本能率協会が全国のビジネスパーソンを対象に実施した調査によると、「上司から言われてやる気がでる一言」の1位は「ありがとう」だったことが明らかになっています。*3
【例①】仕事の速さを褒めるとき
「仕事が早いね」→「早く仕上げてくれてありがとう! おかげで次の工程に余裕をもって取り掛かれるよ」
【例②】資料のクオリティを褒めるとき
「完璧な資料だ」→「完璧だね。細かいデータまで精査してくれてありがとう」
感謝を伝えることは「あなたの仕事が、具体的にどうまわりを助けたか」というポジティブなフィードバックになります。
それは、「自分の働きが誰かの役に立った」という自己効力感にもつながります。
次に部下を褒めるとき、褒め言葉の後に「〜してくれてありがとう。おかげで○○できたよ」と一文加えてみましょう。「なぜ助かったか」を添えることで、言葉の重みがまったく変わります。

***
「すみません」より「ありがとう」、恐縮より「ありがとう」、褒めるだけでなく「ありがとう」も。大事なのは、頭で理解することより、とっさに口から出せることです。
気に入ったセリフをひとつだけ覚えて、明日の自分に持っていってください。
✅ 明日の自分を変える3つのアクション
① 助けてもらったとき
「すみません」と言いそうになったら → 「ありがとうございます」に替える
② 褒めてもらったとき
「いやいや……」と言いかけたら → まず「ありがとうございます」を先に言う
③ 部下を褒めるとき
褒め言葉だけで終わらず → 「〜してくれてありがとう。おかげで○○できたよ」と続ける
よくある質問(FAQ)
- Q. 「すみません」を「ありがとう」に替えると不自然になりませんか?
- 最初は少し照れくさく感じるかもしれませんが、「ありがとうございます。お手数をかけてしまいましたが、とても助かりました」のように感謝のひと言を先に出す形にすると、自然に言葉が続きやすくなります。慣れるほどスムーズになるので、まずは小さな場面から練習してみましょう。
- Q. 褒められたとき、謙遜はまったくしてはいけないのですか?
- 謙遜そのものが悪いわけではありません。大切なのは、まず「ありがとうございます」と受けとることです。その後に「まだまだ勉強中ですが」などの謙遜を添えれば、礼儀正しさと素直さを両立できます。謙遜を先に出してしまうと、相手の好意を否定するように受けとられる場合があります。
- Q. 上司が部下に「ありがとう」を言うと、なれなれしくなりませんか?
- 感謝の言葉はなれなれしさではなく、相手の貢献を「見ている」というサインです。「早く仕上げてくれてありがとう。おかげで次の工程に余裕が生まれたよ」のように具体的な理由を添えると、プロフェッショナルな雰囲気を保ちながら感謝を伝えられます。
*1: 介護のみらいラボ(公式)|「ありがとう」を上手に伝えていますか?|人間関係をガラリと変えるコミュニケーション技術(2)
*2: フォーブス ジャパン|「お褒めの言葉」に対して失礼のない返し方とは?使い方など例文付きで解説
*3: 一般社団法人日本能率協会|第9回「ビジネスパーソン1000人調査」【理想のチーム編】
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。