「成長が止まった」と感じたら、認知バイアスを疑え。思考の偏りを解除する3つのリセット習慣

バイアスを無くすためのフィードバックメモ

「これまでうまくいっていた」
「経験上、こうするのが間違いない」

そう考えて、いつの間にかほかの意見に耳を貸さなくなってはいませんか? その判断は、適切ではないかもしれません。

もし最近、成長実感がなく、新しい気づきが減ったと感じているのなら、自分に認知バイアス(思考の偏りや思い込み)がかかっていないかどうか、一度振り返ってみることをおすすめします。

本記事では、停滞感を打破し、成長を再加速させる鍵となるバイアスへの気づきと、視点を切り替える3つのアクションを紹介します。

その「正しさ」、無意識に決めつけていない?

社会人として5年、6年とキャリアを重ねると、仕事の基本的なスキルが身につき、任される業務の幅も少しずつ広がってきます。

もう新人ではない、けれどベテランとは言いきれない──そんな中堅期に差しかかったビジネスパーソンの多くが、一度は感じるのが「成長が止まっているような感覚」です。

その場合、こんなふうに感じることがあるはず。

 
  • 「目の前の仕事はそつなくこなせるようになった。
    →でも最近、新しいスキルを身につけた記憶がない

  • 「後輩にアドバイスする立場にはなった。
    →でも、自分はこの先どう成長すればいいのかが見えてこない

  • 「滞りなく仕事は進んでいる。
    →でも、以前ほどのやりがいや達成感がない

このような「伸び悩み感」は、ある程度の経験を積み、仕事に慣れてきたタイミングで誰にでも訪れる「節目」のようなもの。ここで一度自分と向き合うことで、キャリアを次のステージへ進めるチャンスになります。

その際には、「自分の考えや判断にバイアスがかかっていないかどうか」を確認することが役に立つでしょう。

「認知バイアス」の怖いところは、思考が止まり、変化や成長の機会を自分で閉ざしてしまう可能性があること。

以下の太字部分に、なんとなく覚えがあるなら要注意です。現状は、その後ろに書かれている青字部分かもしれません。

  • 「従来のやり方が最善だ」と信じて疑わない実際には技術の進歩でより効率的に進めることが可能

  • これまでうまくいっていたやり方なので、うまくいかない原因を周囲に求めている|自分の改善ポイントを見逃している

  • コミュニケーションがどうもうまくいかない|なんでも自分の視点で解釈してしまうので、相手の意図をおおむね誤解している

このままでは、仕事に大きな悪影響が出てしまいます。

仕事がうまく運ばず物思いにふけるビジネスパーソン

「認知バイアス」を解除する3つのリセット習慣

どんなに気をつけていても、人間の脳は簡単にバイアスがかかってしまうもの。十文字学園女子大学教育人文学部教授の池田まさみ氏は、こう説明します。

「認知バイアスは『思考の偏り』という意味で,誰にでも起きるもの」であり、「バイアスに陥っていることに自分では気づきにくい,というのも認知バイアスの特徴のひとつ」である。*1

それを、できるだけなくしていくためには、日々の小さな思考習慣を変えることが効果的です。ここからは、視点を柔軟に保ち、思い込みに気づくための3つのアプローチを紹介していきましょう。

1.「相手の視点」でメモ

◇ バイアスが生じている例

マーケティング施策について会議で議論中。自分が提案した案に対し、同僚から「効果が薄いのでは」という意見が出た。

しかし「この方法は過去に大きな成果が出た。前例があるのだから、間違いない」と感じている。

「過去にうまくいった方法」は安心材料になりますが、それがすべてに通用するとは限りません。異なる意見を無意識に排除してしまうことは、とても危険なこと。

だからこそ、「相手の立場に立って物事を考えること」が必要です。これは「パースペクティブ・テイキング」と呼ばれるプロセスで、円滑なコミュニケーションや交渉の場において重要視されています。*2

このプロセスを取り入れていく場合は、「反対意見・異なる意見を受けた場面」を振り返り、相手の立場になって、その考えを書き出してみるといいかもしれません。

◇ 書き出し方

具体的には、このようなかたちです。「なぜなら」と続けることが大いに役立つでしょう。

  • 相手の発言:「この案では効果が薄い」
    あなたが相手の立場になって考えたこと:「なぜなら〇〇〇〇だから」

  • 相手の示唆:「過去の成功と今回の状況は違う」
    あなたが相手の立場になって考えたこと:「なぜなら〇〇〇〇だから」

別の人の視点で考えることで、自分の仮説の穴や、改善の余地に気づきやすくなるはずです。

同僚の意見を聞くビジネスパーソン

2. 「小さな実験」で変化に慣れる

◇ バイアスが生じている例

周囲に業務フローを見直すタイミングだと言われた。

しかし、いまのやり方で特に問題は起きていない。変更するほうが時間のムダではないか?

そう感じているので「見直し」はいまのところ後回しにしている。

自分に合う、安定したやり方に落ち着いていることは悪いことではありません。しかし、「特に問題がないからこのままでいい」と現状を維持し続けていると、気づかぬうちに周囲の進化や時代の変化に取り残されてしまうことがあります。

仕事の精度や成果を高めるためにも、定期的なやり方のアップデートは欠かせません。このようなときは、「小さな実験」を取り入れてみましょう。

メンタルコーチの大平信孝氏によれば、脳は「大きな変化は受け入れずに元に戻そうとする」けれど、「小さな変化は受け入れる」性質があるといいます。*3

◇ 小さな実験の仕方

これは、いまのやり方をいきなり全部変えるのではなく、一部分だけを試しに変えてみるという方法です。

仮導入、テスト運用、部分的な変更といった「小さな変化」を定期的に起こすことで、変化への心理的ハードルを下げることができます。

それは、以下のステップを踏むことでスムーズに行なえるはずです。

  • STEP1:いまのやり方を1箇所だけ変えるとしたらどこか? と自問
  • STEP2:業務報告のフォーマットを1週間だけ変えてみる
  • STEP3:チームメンバーに、いまの進め方に不便はないかをヒアリングしてみる

このような小さな実験を繰り返すことで、変化に対する耐性がつきます。

チームにヒヤリングして、いい方向に行くと確信しているビジネスパーソン

3. 「フィードバックメモ」で自己評価のバランスを整える

◇ バイアスが生じている例

前回は自分の努力で営業成績が目標に届いた――だが今回はダメだった。
原因は「クライアントの要求が厳しかったから」ではないか?
または、「チームの支援が足りなかったから」ではないか?

これを一要素として見るならいいですが、すべてにおいて「成功は自分の能力や努力。失敗は外部要因や他者にある」と考え続けていると、自分の改善点に気づけず、同じ失敗を繰り返すリスクがあります。

このような状況を回避するために、「フィードバックメモ」を取り入れてみましょう。

習慣化コンサルタントの古川武士氏によると、私たちは書くことで客観性が生まれ、自分の感情や思考と距離を置き、新しい見方やとらえ方ができるといいます。*4

◇ フィードバックメモの書き方

たとえば「プレゼンをしたが失注してしまった」としましょう。

その場合、以下のようにフィードバックメモを書きます。

バイアスを無くすためのフィードバックメモ

コツは、以下の分類で、「改善できるポイントはどこか?」「外部の影響も踏まえつつ、自分ができることは何か?」と自問しながら書くこと。

  • 【成功した点】
    →自分に起因するもの
    →他者・環境に起因するもの
  • 【改善すべき点】
    →自分に起因するもの
    →他者・環境に起因するもの

このように分けて整理することで、自己評価の偏りを減らしやすくなります。そうすると、「自分にできること」と「どうにもできないこと」も区別でき、次に活かすことができるはず。

そして、フィードバックメモから、以下のようなアクションが浮かび上がってくるかもしれません。

  • 次回からは「誰が決裁者なのか」「何を重視しているのか」を事前に確認する質問を設計する
  • 表向きのニーズだけでなく、「背景・文脈・感情」に注意を払い、二段階ヒアリングを行う
  • 社内で "失注レビュー" をチームで共有し、似たケースへのナレッジにする

この段階にくれば、もう思考が停止しているような状況ではありません。成長を再加速させる鍵を見つけ、すでにその扉を開けている段階だと言えるでしょう。

***
伸び悩みを感じたら、自分がかかっているバイアスに気づくことが変化の第一歩。

相手の視点に立ち、小さな実験で変化に慣れ、フィードバックで要因を分析する。そんな小さなアクションが、次の成長につながります。

よくある質問(FAQ)

Q認知バイアスとは何ですか?

A認知バイアスとは、経験や思い込みに影響され、合理性に欠けた判断をしてしまう心理傾向のことです。脳が効率よく働こうとした結果として生じる「思考の偏り」であり、誰にでも起こりうるものです。自分では気づきにくいのが特徴で、無意識のうちに判断や行動に影響を与えています。

Q成長が止まったと感じるのはなぜですか?

A仕事に慣れてきた中堅期に「伸び悩み感」を覚えるのは、ある程度の経験を積んだタイミングで誰にでも訪れる節目のようなものです。この停滞感の原因のひとつとして、認知バイアスによって思考が止まり、変化や成長の機会を自分で閉ざしてしまっている可能性があります。

Qパースペクティブ・テイキングとは何ですか?

Aパースペクティブ・テイキングとは、「相手の立場に立って物事を考えること」を指す心理学用語です。円滑なコミュニケーションや交渉の場において重要視されており、異なる意見を受けた際に相手の視点で考えを書き出すことで、自分の仮説の穴や改善の余地に気づきやすくなります。

Q変化を受け入れるにはどうすればいいですか?

A脳は大きな変化を拒否する一方で、小さな変化は受け入れる性質があります。そのため、いまのやり方をいきなり全部変えるのではなく、一部分だけを試しに変えてみる「小さな実験」を取り入れることが効果的です。仮導入やテスト運用など、小さな変化を定期的に起こすことで変化への心理的ハードルを下げられます。

Qフィードバックメモの効果的な書き方は?

Aフィードバックメモは、成功した点と改善すべき点を「自分に起因するもの」と「他者・環境に起因するもの」に分けて整理する方法です。書くことで客観性が生まれ、自分の感情や思考と距離を置けるようになります。このように分類することで自己評価の偏りを減らし、次に活かせるアクションを見つけやすくなります。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。