「目標は立てるけれど、なかなか達成できない」「まわりの人が次々と目標を達成している。自分もそうなりたいけれど、どうすればいいかわからない」
そんな悩みを抱えていませんか? 目標設定や達成に対して、苦手意識をもってしまうことは珍しくありません。
今回は、目標達成がうまくいかないと感じているみなさんに向けて、アメリカの教育工学研究者ロバート・メーガーが提唱した「3つの質問」を使った目標達成の方法を紹介します。この方法を実践することで、目標達成に向けた具体的な道筋が見えてくるかもしれませんよ。
1. 目標達成に役立つ3つの質問とは?
目標を達成するためには、じつはただ漠然とした目標を立てるだけでは不十分。目標を立てる際には、目指すべき方向・目標が達成できたかどうかの評価基準・そしてその目標に到達するための具体的な方法の3点が明確であることが必要なのです。
これは、教育学においても大切だとされています。熊本大学名誉教授である鈴木克明氏は、自身が研究する教授システム学のなかで、メーガーの3つの質問を紹介しています。
授業計画のシステム的なアプローチが盛んに議論されたころ、米国の教育工学研究者ロバート・メーガー(Robert F. Mager)が次の3つの質問の大切さを指摘した。
Where am I going? (どこへ行くのか?)
How do I know when I get there?(たどりついたかどうかをどうやって知るのか?)
How do I get there?(どうやってそこへ行くのか?)*1
1つめの質問は授業や研修の目的を、2つめの質問は目的達成をどのように評価するのかといった評価指標を、3つめの質問は目的を達成するための筋道、つまり教育現場ではカリキュラムのことを指しています。
筆者には、このような目標を立てずに失敗した経験があります。以前仕事で「今年中に担当領域の目標売上を達成する」という目標を立てたときのことです。
しかし、最初はただ「達成したい」と思っているだけで、具体的なプランや進捗をチェックする習慣がまったくありませんでした。そのため、目標に向かっているという実感と目的意識が薄く、何をどれだけ進めればいいのかも不明確でした。
気づけば、あっという間に半年が過ぎてしまいました。半年もたったタイミングで焦り出したのですが時すでに遅しで、結局目標達成には至りませんでした。このケースでは、目標に向かって進む際の指標がなかったことが原因だったと思います。
私の過去の失敗も、この「メーガーの3つの質問」に沿って目標設定をしていれば、解決していたかもしれません。「どこへ行くのか?」は決まっていたものの、2つめ・3つめの「たどりついたかどうかをどうやって知るのか?」「どうやってそこへ行くのか?」は決められていませんでした。
2つめに関しては期中の売上進捗を定める、3つめに関しては売上を伸ばすための施策を〇個実施するなど具体的な内容で定めることが必要だったということです。
2. メーガーの3つの質問をやってみた
それでは、実際に「メーガーの3つの質問」を使って、目標を設定し、達成に向けた計画を立ててみましょう。今回の目標は、仕事のスキルアップを目指して「プロジェクト管理の資格を取得すること」にしました。
Where am I going? (どこへ行くのか?)
- 目標は「9か月後にPMOスペシャリスト認定資格を取得すること」
How do I know when I get there?(たどりついたかどうかをどうやって知るのか?)
- 目標達成の基準は資格取得
- 資格試験の合格ライン・必要な学習時間をインターネットや合格体験記で調べたうえで設定
How do I get there?(どうやってそこへ行くのか?)
- 試験内容と合格ラインを把握し、学習計画を立てる
- オンライン講座の受講、本を用いたインプットなどによる毎日1時間の勉強を週4日行う
- 知識がある程度ついたタイミングで模擬試験を受け、その時点での実力を測る
- 定期的に進捗をチェックし、必要に応じて計画を修正する
このように、「メーガーの3つの質問」に従って目標を設定し、その達成に向けた計画を立てることで、漠然とした目標が具体的なアクションに変わり、実行に移しやすくなります。
筆者が以前失敗してしまったときと比較すると、かなり具体的な目標を設定することができました。また、マイルストーンがあることで進捗確認や軌道修正も容易にできます。
3. メーガーの3つの質問をやってみた感想
「メーガーの3つの質問」を実践したことで、目標達成に向けたプロセスが非常に明確になりました。
これまでは、目標を立てても途中で見失ったり、達成感が得られなかったりすることが多く、計画を立てても挫折してしまいがちでした。しかし、この3つの質問を通じて、「どこへ行くのか」という目標、達成基準、そして行動計画の設定が体系的にできるようになり、目標達成がより現実的なものとなりました。
まず、「どこへ行くのか」という問いによって目指すゴールが明確化され、日々の行動に一貫性が生まれました。迷うことが減り、何をすべきかがクリアになったのです。
また、「たどりついたかどうかをどうやって知るのか」によって、目標達成の基準が明確になり、進捗を客観的に確認できるようになりました。「ここまでできた」という成果が見えることで、モチベーションの維持にもつながりました。
さらに、「どうやってそこへ行くのか」という問いで行動計画を立てることで、実行力が高まりました。計画通りに進まない場合でも、進捗を確認しながら柔軟に対応できたため、途中での挫折が減少し、結果として目標に向かって一歩ずつ進める手ごたえを感じられました。
***
「メーガーの3つの質問」は、一見シンプルに見えますが、これに沿った目標設定をすることで、きっと達成に近づけます。
これまで目標設定や達成がうまくいかなかったみなさんも、この方法を活用することで、目標がより達成可能なものに変わるかもしれませんよ。
藤原瑶
大学では経営学を専攻。思考法に興味があり、ロジカルシンキング・クリティカルシンキングを勉強中。仕事力向上のためビジネス書を読む習慣をもち、書籍で学んだことをタスク・スケジュール管理などに活かしている。