「楽しく働きたいけれど、仕事への意欲がわかない」
「同じような仕事の繰り返しでマンネリ化している」
日々長い時間を費やすからこそ、仕事には楽しく取り組みたいもの。そこで、仕事を楽しくする方法のひとつとして“ゲーミフィケーション”をご提案します。
ゲーミフィケーションについて、ゲーム研究者の井上明人氏は「コンピュータ・ゲームのノウハウや知見を社会に応用しようという運動」で、主に「モチベーションの設計を考えたもの」だと述べています。*1
つまり、ゲームの要素を取り入れると楽しく、意欲をもって仕事に取り組めるということなのです。本記事では、ゲーミフィケーションを応用した具体的な仕事術をふたつご紹介します。
1. 時間制限を設ける
仕事にゲーミフィケーションを取り入れる方法のひとつが、“時間制限を設ける”というものです。ゲームにも、クリア条件に時間の制限が設けられているものがありますよね。時間内にクリアできれば達成感が、できなくても「できるまでやろう」というモチベーションの向上が期待できるはずです。
仕事術に関する著書を多くもつ山本憲明氏は、「仕事の時間を計測して、同じ仕事をやるときは次回から時間を設定する」というやり方をすすめています。この方法によって、仕事を「ゲーム感覚でできるようになり、さらに仕事全体の時間も短縮する」効果を得られるそう。具体的なやり方は、以下のとおりです。
具体的には、Excelなどに仕事の内容とかかる時間の見積もり、開始時刻、終了時刻を記入(Ctrl+:で入れられます)し、時間を測定します。次に同じ仕事をやるときは、どうすればその記録を超えられるかを事前に準備して挑みます。*2
たとえば、入力作業に1時間かかる場合、ショートカットキーを覚えたりよく使う単語をパソコンの辞書に登録したりして、時間短縮をはかるイメージ。ゲーム感覚で楽しみながら、仕事の効率化も進められて一石二鳥です。
仕事に時間制限を設けてみた
筆者もモチベーションが上がらず、ダラダラと長時間仕事をしてしまうのが悩みです。そこで、“1000文字の記事執筆”という仕事に制限時間を設けてみました。
山本氏が提案するとおり、まずはExcelに仕事内容“1000文字の記事執筆”と、所要時間の見積もり“1時間”を記入しました。1回目は、見積もった時間内に仕事を終えることができるように作業を進め、開始時刻と終了時刻を追記しました。
その結果、見積もった時間から20分以上もオーバーしてしまいました。原因を考えてみたところ、リサーチに時間がかかったことと、文字数が超過して修正に手間取ったことではないかと思いました。
そこで、次はリサーチでよく使うホームページをブックマークしたうえで、AIツールを使って校正をすることにしました。所要時間の見積もりも見直し、制限時間を1時間15分に修正。もう一度作業をした結果が、次のとおりです。
所要時間が大幅に減り、1時間以内に作業が終わりました。校正にAIツールを使ったことが、特に時間短縮につながったと思います。制限時間を設けたことで工夫が促され、仕事の効率化が叶ったのです。
また、時間を書き出すと自分の成長がひと目で分かり、モチベーションも上がりました。仕事のモチベーションが上がらない人や、効率化・高速化をはかりたい人におすすめです。
2. シューティングゲーム仕事術
仕事にゲーミフィケーションを取り入れるふたつめの方法は、「シューティングゲーム仕事術」です。次々に敵を倒していくシューティングゲームは、爽快感がありますよね。そんなゲームの要素を取り入れた仕事術は、『仕事はゲームにすると上手くいく』の著者、石川和男氏が提案するものです。
石川氏は楽な仕事を「雑魚キャラ」、大変な仕事を「ボスキャラ」とし、「仕事では、ボスキャラを雑魚キャラに変えることができ」ると述べています。つまり、時間や手間のかかる大変な仕事を、楽な仕事に変えられると言うのです。
その方法とは、「面倒で大変な仕事を細分化していくこと」。「細分化することでボスキャラが雑魚キャラに変わり、簡単に攻撃しやすくなり、次々と破壊することができる」そうです。*3
一見大変そうな仕事も、細分化すればひとつひとつの作業は簡単だということですね。
プレゼン資料の作成を例に考えてみましょう。全体の構成を考えたり大量のデータをまとめたりと、大変なイメージをもつ人が多い仕事ですが、細分化すると次のようになります。
- 構成
- 資料のリサーチ
- スライドの作成(文字のみ)
- 表・グラフの作成
- 要点の強調(アニメーションやイラストなど)
それぞれのタスクは、比較的簡単にできそうですね。上から順に作業を進めれば、ゲームの雑魚キャラを倒しているような達成感や爽快感を得られ、仕事も楽しくなりそうです。
シューティングゲーム仕事術を実践してみた
実際に、筆者がシューティングゲーム仕事術を取り入れてみました。筆者自身、時間のかかる仕事ほどおっくうに感じ、後回しにしがち。そこで、いつも3日ほどかかっている“映像コンテンツの仕上げ”を、細分化してみることにしました。
石川氏によると「頭の中で細分化しようとしてもなかなかできないため、視覚化することが重要」とのこと。*4
そこで、ノートを使って仕事の細分化をしてみました。使用したのは、普段メモ用に使っているA5サイズのルーズリーフです。“映像コンテンツの仕上げ”と見出しを書き、いつもの作業工程を思い出しながら箇条書きで細分化しました。完成した紙面は以下のとおり。
ノートに書きだした作業のひとつひとつは、時間も手間もかからなさそうです。しかし“映像編集”の部分にまだハードルの高さを感じたため、線を伸ばしてさらに細分化しました。
ルーズリーフは机の上に置いておき、終わったタスクに線を引いていくことに。これによって“敵を倒した”という感覚が強調され、達成感を得られるはずです。
シューティングゲーム仕事術を試した結果、仕事の後回し癖を改善できました。簡単な作業に分解したことで、「ひとつめの仕事だけでも済ませておこう」と取りかかることができたのです。
さらに、線を引いてタスクを消すのがシューティングゲームで敵を倒す感覚と似ていて、「次の作業もできそう」「これもやっておこうかな」と次々に着手することが可能に。最終的には、3日かかっていた映像コンテンツの仕上げを2日で終えることができました。仕事がおっくうで進まない人や作業を面倒に感じることが多い人は、試してみてはいかがでしょうか。
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ゲーミフィケーションを取り入れることで、楽しく仕事に取り組めるようになるかもしれません。仕事のモチベーションが上がらずに悩んでいる人は、ぜひ今回ご紹介した方法を試してみてくださいね。
※引用部分の太字は編集部が施した
*1 ジレンマ+|「ゲーム理論」と「ゲーミフィケーション」は何が違うのか?:井上明人
*2 プレジデント・オンライン|定時に帰れる"デキる人"は知っている…ゲーム感覚で仕事がぐんぐんはかどる「エクセルを使った」驚きの方法
*3 石川和男(2021), 秀和システム|仕事はゲームにすると上手くいく
*4 Pencil|「スーパーマリオ迷路脱出術」で、困難な仕事に作業興奮を生み出す
藤真唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。