疲れたな、と感じたら試してみて。脳に優しい、仕事と勉強の両立術

勉強をする人

仕事も勉強も順調に見える人でも、そこにいたるまでにはさまざまな困難があるものです。モチベーションの維持や疲労の蓄積など、働きながら学ぶ人々が直面する課題は少なくありません。

本記事では、これらの悩みに対する効果的な対処法を、脳科学の視点から紹介します。最新の研究に基づいたアプローチで、モチベーション維持の仕組み効率的な疲労回復のメカニズムを解説。さらに、脳のパフォーマンスを最適化する方法についても、具体的な事例を交えながら紹介します。

1. モチベーションの維持で悩んだら目的や目標を明確化する

多忙だったり独学だったりすると、勉強に対するモチベーションの維持が難しく感じませんか? 筆者は2年ほどかけて国際中医師試験の勉強をしていたときに、モチベーションを保てず悩んだ経験があります。

ゴールが2年先で遠く感じ、気持ちを奮い立たせるのが難しかったからです。当時は「どうしてこんなに意志が弱いんだろう」と自分を責めて悩んだものでした。

しかしこれには 「脳の働き」 が関係しているようなのです。

立命館大学教授で脳科学者の枝川義邦氏は、「『報酬系』と呼ばれる脳内の神経ネットワーク」と「神経伝達物質の一つであるドーパミン」のふたつが「うまく機能すると、モチベーションが上がって行動につながりやすく、望んでいた結果が得られ」ると述べます。*1

「報酬系が活発」になるのは自分が欲しいと思う報酬が手に入りそうだと期待しているとき」で、そのときに「ドーパミンが分泌されやすくなる」のだそう。*1

筆者がモチベーションの維持に悩んでいたときは試験日が遠く、合格したい思いはあっても、それに現実味がありませんでした。つまり、合格が「手に入りそうだ」という期待が十分でなかったために報酬系が活発にならず、ドーパミンも分泌されにくかったのではないかと分析できます。

モチベーションが上がらない女性

では、どうすれば報酬系とドーパミンをうまく機能させられるのでしょうか。同氏は、「目的意識や達成目標を明確化するとよい」と述べます。*1

たしかに先述の筆者の経験を振り返ると、「合格して仕事につなげたい」という目標にいたるまでの達成目標は明確になっていませんでした。

公認心理師・精神保健福祉士・産業カウンセラーの大美賀直子氏も「ゴール(大目標)だけ設定し、目の前の小目標の設定をしていない場合」もモチベーションが低くなってしまう可能性があると話します。*2

そこで、当時を振り返りながら下記のように目標を区切って設定してみました。

(大目標)合格

(中目標)最初の1年半は、理解を深めるための勉強をする

(小目標)

  • 前月に学んだ範囲の過去問をひととおり解く(月の前半)
  • 間違えた箇所の理解を深める(月の真ん中)
  • 再度過去問を解き、理解度を確認する(月の後半)

(中目標)最後の半年は、合格のための勉強に切り替えて追い込む

(小目標)

  • 暗記ものを1日3つ覚える
  • 重点問題を中心に、毎日最低10問は解く
  • 模試を受け、知識が曖昧なところを明確にする
  • 模試で明確になった曖昧な部分を中心に復習する(最後の3か月)

大美賀氏は「多すぎる課題とハードスケジュール」も「モチベーション低下の原因に」なると話していたので、試験に向けて気を抜けない最後の半年は、「1日3つ」「最低10問」と、必ずこなせる量をその日の目標として設定してみました。*2

このように目標を区切れば大目標までの自分の立ち位置がわかりますし、小目標をこなすごとに達成感を得てモチベーションを高められそうです。もし働きながらの勉強でモチベーションの維持に悩んだら、目標を区切って設定し、無理のない計画を立ててみてはいかがでしょうか。

ゴール設定をしてあるノート

2. 疲れが取れずに悩んだら書く瞑想をする

「仕事が忙しく、疲れて勉強できない」「休んでも疲れがとれない……体力が落ちたのだろうか?」

このように悩んだ経験はないですか? 筆者自身も、頑張りたい気持ちはあるのに疲れが取れずに集中力が落ち、睡眠をとっても改善されなくて悩んだものでした。

じつはこれも、脳が関係しているのです。前出の枝川氏は「脳の疲労は自覚しにく」く、「脳は(中略)使い方によっては過労状態になって機能が低下し、モチベーションや集中力などにも負の影響を及ぼ」すと説明します。*1

そこで、脳の疲れをとるために必要なのが「DMNの過剰な活動を抑え」ることだと話すのは精神科医の久賀谷亮氏。DMNとは「デフォルト・モード・ネットワーク」の略で、「ぼーっとしているときにも動き続ける脳回路」のこと。脳のエネルギーの60~80%は」DMNが消費しているのです。*3

体を休めても疲れがとれないのは、DMNが働き続けるからだったのですね。この 「休んでいても働き続ける脳」を休めるには、「瞑想などを通じた脳の休息法の総称」である「マインドフルネス」が有効だと久賀谷氏は言います。*3 

また、医学博士のジャドソン・ブルーワー氏も「『DMN(脳エネルギーの浪費家)の主要部位の活動は、瞑想によって抑制できる』と報告してい」るそうです。*3

とはいえ、瞑想と聞くと静かなところで目をつぶって精神統一するイメージがありませんか? じつは瞑想にはさまざまな方法があり、今回おすすめしたいのが「書く瞑想」とも呼ばれる「ジャーナリング」です。

マインドフルコーチング®の学習プログラムを提供するエムビーシーシー合同会社代表の吉田典生氏が行なった「ジャーナリング中の脳波を測定し、その脳波から感情を読み取る実験」によると、「疲労のためから実験開始直後は脳の活動レベルが脳年齢の平均に比べて低かった」被験者について、「ジャーナリングを繰り返すうちに脳が活発に動き始め」たことが明らかになりました。*4

ジャーナリングによって、疲れていた脳の働きが回復したのですね。

筆者も実践してみたいのですが、どのように書けばいいのでしょうか。吉田氏は以下の4つをコツとして紹介しています。

  1. 「書く前にテーマ、つまり『問い』を決め」る
  2. 「時間を決め」て「その時間は書くことに集中」する
  3. 「手書き」
  4. 「考えずに書」く*4

さっそく、上記を意識して取り組んでみました。その様子がこちらです。

ジャーナリングをしたノート

(画像は筆者にて作成)

ノートは、持ち運びしやすいようにB6くらいの大きさのものに。書くタイミングは事前には決めず、集中できなかったり疲れを感じたりしたときに取り組みました。吉田氏が「いつでもどこでも実践できる」のがジャーナリングのメリットだと語っていたからです。*4

紫色のラインマーカーを引いたものが筆者が決めた “問い” で、まずは3分間で書くことに。問いはそのとき頭に浮かんだことをテーマにし、考え込まずに心に浮かんだ言葉をそのまま書くようにしました。

実際に書いてみると、ネガティブな気持ちがスッキリしてストレスが減り、疲れにくくなったのを実感。

また、「講師業の幅を広げるとしたら、具体的にどのようにする?」「いろいろな場所で働けるなら、どこがいい?」など、ジャーナリングを通して曖昧な部分が明確になり、目標の解像度を上げるのにも有効だと感じました。

疲れだけでなく、先述したモチベーションにもいい影響がありそうです。

***
モチベーションの維持と脳疲労の改善についてお伝えしました。この記事で紹介した内容が参考になりましたら幸いです。

※引用の太字は編集部が施した

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。

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