マインドフルネスは、集中力や記憶力の向上に役立つといわれています。
2007年から米グーグル社の社員研修に導入され、アップル社やゴールドマン・サックス社など有名企業のほか、日本でも初めてSansan株式会社が2018年に導入しました。多くのメディアで実践方法が紹介されているので、個人的に取り入れてみようと考える方も増えているのではないでしょうか。
しかし、マインドフルネスを正しく実践するには、スキルが必要なのだそうです。
- より正しくマインドフルネスを実践したい
- マインドフルネスで確実に効果を得たい
と考えている方に、心理学者が教えてくれた「マインドフルネスを正しく行なうために必要なスキル」と、培い方を紹介します。
厳密な基準で明らかにしたマインドフルネスの利点
心理学者のダニエル・ゴールマン氏と脳神経学者のリチャード・デビッドソン氏が、マインドフルネスや瞑想に関する数千もの文献を、厳密な科学的基準にもとづいて絞り込んだ結果、最も信頼できたのは約1%しかなかったそうです。
しかし、厳しい基準でふるいにかけたからこそ、マインドフルネスの真の利点が次のとおり明らかにされたのだとか。
- 集中力の向上
- 記憶力の向上
- 寛容さの増大
- ストレス耐性の向上
マインドフルネスの実践によって、注意力や理性など、高度な思考を司る脳の前頭前野がよく活動するようになり、人間の感情を司る扁桃体の攻撃性(怒り、恐怖、不安に支配される状況)が弱くなって、何かをするとき一時的に記憶を保持する作業記憶(ワーキングメモリー)の働きが良くなるそうです。
マインドフルネスのやり方
マインドフルネスには、入浴時に瞑想するマインドフルネス入浴や、食事をじっくり味わって食べるマインドフルネス・イーティング、ゆっくりと歩きながら行なうマインドフルネス・ウォーキングなどがありますが、もっともシンプルな実践方法は次のとおり。
- 姿勢を正して呼吸をする
- 自分の呼吸に意識を向ける
息をするたびに「からだが動いてる」「空気が吐き出されたり吸い込まれたりしている」などと、あるがまま認識するわけです。臨床心理士のコンスタンチン・ルキン(Konstantin Lukin)博士は、マインドフルネスについて、こう説明します。
いまこの瞬間をそのまま受け入れ、その時点で起こっていることに注意を払うこと
なおかつ、次に紹介するスキルがあれば、正しく実践できます。
マインドフルネスを正しく行なうために必要な3つのスキル
マインドフルネスは、感情や思考をうまく制御できず、つい自分を責めてしまいがちな人を対象にした弁証法的行動療法(認知行動療法の一種:略称「DBT」)のひとつなのだとか。
そのため、今回ルキン博士が『Psychology Today』で紹介している正しいマインドフルネスに必要な3つのスキルは、DBTにおいて主要なスキルとのことです。
3つのスキルを、わかりやすくかみ砕いて説明します。
1. 観察するスキル
自分の心の中を【観察】すると、心が静かで平和な場所になるのだそう。なぜならば、
- 嫌な出来事を繰り返し考える
- 過度に批判的になる
- 憂さ晴らしでつらさを乗り切る
といった、私たちが陥りがちな状況に対し、客観的になれるから。
たとえば、最悪の出来だったプレゼンの光景が、何度も頭の中に浮かんでしまうとき、「嫌な記憶を反すうしている自分」を客観的に【観察】してみましょう。難しければ、いま自分がどういう状態か書いてみるといいですよ。メモ帳でもノートでもコピー用紙でもいいので、
といった具合に手書きするのです。
書き出す行為、書いたことを眺める行為で、客観的に【観察】できるはず。繰り返していると、一歩引いて見る癖がつきます。客観的に【観察】するスキルを培うことで、自分自身を平静に保ちやすくなるでしょう。
2. 説明するスキル
自分がいま何を考えているのか、何を感じているのか、そして何をしているのかを、自分自身に【説明】することで、いま起こっていることから距離を取れるのだそう。
「あなたA」が「誰か」に、「あなたB」のことを【説明】するようにしてみてはいかがでしょう。たとえば、
といった具合です。すると、
「そんなことないのにね」
と【説明】しながら、自然に掘り下げることができます。【説明】するスキルを培うことは、自分をよりよく理解することにつながるはずです。
3. 参加するスキル
【参加】するとは、あなたが自分自身の行動を許し共感すること。 自分を否定していた自分をやめ、自分に賛同する自分になるわけです。そうすることにより、他人からどう思われているか必要以上に注意を払ったり、考えすぎたりすることを避けられるとのこと。自分への理解も深まるそうです。
なんて気分になったとします。仕事で評価されない自分、何をやっても続かない自分、何もかも無意味なことをしている自分。そう考えて嫌な気分になるのは、自分が自分自身を蔑んでいるせいかもしれません。
そんなときこそ、自分が自分の味方になりましょう。 まずは、
と積極的に【参加】してみてください。すると、最悪な気分が薄まり、心地よくなるはずです。
少し離れて自分を眺めてみる
私たちが日常的にしていること・感じていること・考えることから、少し離れてみることで、分析的になり自分自身を確かなものにできるとのこと。
マインドフルネスはメタ認知の概念に似ていると、ルキン博士はいいます。メタ認知は、何かを実行している自分の頭の中で働く、「もうひとりの自分」とも表現されます。
つまり、マインドフルネスを正しく行なうために必要なスキルとは、少し離れて自分を眺め、自分の感情に巻き込まれないスキルのことなのです。
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全米50州、世界100か国以上の小中高校でマインドフルネスを用いた教育法を指導している非営利組織「Mindful Schools」のカリキュラムでは、子どもたちの89%が感情コントロール力を増加させ、83%が注意力を増加させたとの報告があるそうです。
ぜひ、少し離れて自分を眺め、正しくマインドフルネスを行ない、恩恵にあずかってくださいね!
(参考)
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|マインドフルネスは4つの確かな成果をもたらす
Psychology Today|Mindfulness: The Three Skills You Need to Do It Right
カオナビ人事用語集|マインドフルネスとは? 意味、効果、メリット・デメリット、実践方法、注意点、企業の導入事例について
虹と海のホスピタル|佐賀の心療内科、精神科|マインドフルネス
greenz.jp|米・マインドフルネスは"ハートフルネス"へ。約9割の生徒の感情コントロール力がアップ! カリフォルニア発Mindful Schoolsの教育法に密着
STUDY HACKER|不安があるなら、まず歩け! たった10分の『歩行瞑想』で心の不安は取り除かれる。
奈良教育大学|メタ認知の概要
Wikipedia|弁証法的行動療法
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