なぜ人はすぐ誘惑に負けるのか? 2つの根本原因を「脳科学」と「心理学」から解説

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「明日こそ早起きをするぞ」「今日から資格の勉強をしよう」などと意気込んだはいいものの、ついつい甘い誘惑に負けて、二度寝をしてしまったり、スマートフォンに手が伸びて勉強が進まなかったり……。みなさんにも、こんな経験はないでしょうか。

そこで今回は、人が「誘惑」に負けてしまう理由と、誘惑の代表格ともいえる「二度寝」や「スマートフォン」に打ち勝つ方法について解説します。

人が誘惑に負けてしまうメカニズム

どうして人は誘惑に負けてしまうのでしょうか。それは、もともと人間に備わっている2つの性質に起因しています。それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. 誘惑を優先する大脳辺緑系の性質

人間は、理性をコントロールしてくれる脳の「前頭前野」のおかげで、現状を把握して将来の目標を立てることができます。

しかし、人間が進化してきた長い歴史をたどると、前頭前野の発達はつい最近の話。前頭前野が発達する前、人は狩猟などをして、定住せず、常に移動を繰り返していました。そのため、目の前の状況に対応する必要がありましたが、そんなときに欠かせなかったのが、衝動的な感情の変化を司る大脳辺縁系だったのです。

昔の人間は、この大脳辺縁系の活躍のおかげで、命の危険をおびやかす凶暴な動物などから自身の身を守ることができました。当然ながら、生きるか死ぬかというときは、理性的な遅い判断よりも、情動的な早い判断が求められます。前頭前野よりも、スピード重視の大脳辺縁系が重要だったのですね。

そして、この大脳辺縁系の機能は、今の人間にも残っています。そのため、衝動的な感情の変化を司る大脳辺縁系が脳を暴走させてしまい、目の前の誘惑に負けてしまうというわけです。「ちょっとメールを確認しよう」と思ってスマートフォンを開いたはずが、ゲームなどの他アプリを開いてしまうような現象も、これに起因します。

2. 将来の自分を過大評価する心理的な性質

人は、未来の自分を過大評価する傾向にあることが明らかになっています。

プリンストン大学の心理学者エミリー・プローニン氏らは、次のような実験を行ないました。ケチャップと醤油を混ぜた液体を、学生たちに「科学の発展」という名目で納得させて、可能な限り多く飲んでもらうように依頼。その際、一部の学生らには「数分後に飲む」依頼を、ほかの学生らには「次の学期に飲む」依頼をしたのです。すると、数分後に飲むように依頼された学生らは「スプーン2杯なら飲める」と答えたのに対し、次の学期に飲むように伝えられた学生らは「スプーン4杯以上は飲める」と答えました

この結果から、「人は未来の自分を過大評価して、将来もっとたくさんのことができると考える」ことがわかります。未来の自分に大きな期待を抱いているため、「いま後回しにしても、あとでできるだろう」と安易に考え、目先の誘惑に負けてしまうのです。

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ではここからは、「二度寝」「スマートフォン」という2つの代表的な誘惑について、それに負けないための方法を詳しく見ていきましょう。

二度寝の誘惑に勝つためには

人は、原始的で生理的な欲求に近い誘惑ほど、打ち勝つのが困難です。

たとえば、日常生活を送っているなかで、強い原始的な欲求に「睡眠」があります。人がついつい二度寝をしてしまうのも、先ほどお伝えした「誘惑を優先する大脳辺緑系の性質」が要因のひとつと考えられます。

東京大学の古川雅一特任准教授によれば、人が二度寝をしてしまう原因は、行動経済学の理論から説明でき、その理論を応用することで二度寝を防ぐこともできるとのこと。行動経済学とは、人の経済活動を非合理(感情・価値観など)な行動原理に基づいて分析をする、心理学と経済学をつなぐ融合的な学問。一言で表すと、人間の心理に着目して分析する経済学です。

古川氏は、二度寝を防ぐには早起きの現在価値を上げるか、二度寝の現在価値を下げること」だと、説きます。ここでの「現在価値」とは、早起きや二度寝が今のあなたにもたらしてくれる価値のことです。

たとえば、早起きをしたい場合、達成のご褒美として「15分間自分の好きなことに時間を使っていい」と設定することで、あなたにとっての早起きの現在価値を高めることができます。反対に、二度寝をしてしまった場合は、その罰としてルールを設定することで、現在価値を下げることが可能です。二度寝をしたら家族に1,000円払うなど、あなたにとってなるべく避けたいことを設定するとよいでしょう。

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スマートフォンの誘惑に勝つためには

スマートフォンも、最も大きい誘惑のひとつですね。

「勉強をやらないと」「家事をしないと」「寝ないと」と思いながらも、目の前のスマートフォンの誘惑に負けてしまった経験が誰にでもあるはず。このスマートフォンをついつい見てしまう原因は、「あとでやればいいや」「明日やればいいや」と都合よく解釈して、将来の自分を過大評価してしまっているところにあるかもしれません。

では、スマートフォンの誘惑に打ち勝つためには、どうしたらよいのでしょうか?

その対処方法は、「時間指定ができるロックアプリケーション」の利用。あらかじめ時間指定をした時間帯は、スマートフォンをロック解除できないようにするのです。金沢大学大学院自然科学研究科の長谷川達人教授らの実験で、これには一定の効果があることが示されました。

実験は、高校生などの若年層を対象に、家族の協力のもと行なわれました。長谷川教授らが開発をした、「TIMER LOCK」と呼ばれる、スマートフォンにロックをかけるアプリケーションをインストールして、スマートフォンへの依存度に変化があったかアンケートを実施。

結果としては、約6割の高校生でスマートフォンの利用時間が減少し、代わりに勉強する時間が6割増加しました。長谷川教授は、スマートフォンを使わない時間帯を体験してもらうことで、時間の有効活用を考え直すきっかけになるといいます。

もしiPhoneをお持ちでしたら、「スクリーンタイム機能」をぜひ使ってみてください。操作できない時間帯の設定、および、制限をかけたいアプリケーションの個別設定が可能です。一方、Androidをお持ちの場合は、「使いすぎストップ」というアプリケーションがおすすめ。アプリケーションごとにロックする時間帯を設定できます。

わざわざアプリケーションまで入れたくないという方は、まずはスマートフォンを使わない時間帯を決めてみてはいかがでしょうか。

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現代には、私たちを魅了するものがあふれていて、少し気を抜くと、ついつい「楽なほうへ」「楽しいほうへ」考えが向いてしまいます。目の前の誘惑に負けてしまう2つの理由を理解し、あなたにとっての誘惑の根元に打ち勝つヒントになればと思います。

(参考)
ピアーズ・スティール著, 池村千秋訳(2012),『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』, CCCメディアハウス.
マイナビニュース|先延ばし人間を待ち受ける3つの悪夢--なぜ「すぐやる人」は出世できるのか
FORZA STYLE|二度寝が実は健康にいい? もう一度寝てしまう原因は○○にあり!
PRESIDENT Online|早起きの現在価値を上げて二度寝を防止
現代ビジネス|脳の科学と、今年のノーベル経済学賞の「意外な関係」
東洋経済ONLINE|スマホやSNSに「依存」するのは理由があった
長谷川達人,  越野亮, 葭田護, 木村春彦 (2015), “子供のスマートフォン依存を抑制する画面ロックアプリケーション”, 情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE), Vol.1, No.3, pp.38-47.

【ライタープロフィール】
森下智彬
大学卒業後、国内外の農業に従事。帰国後はITインフラエンジニアとして都内の企業に勤める。仕事の傍ら、自身のブログを開設・運営を始める。現在は、自身のブログ運営とライターの業務をメインに行っている。

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