いつも仕事が遅い。作業が終わらず、残業や持ち帰りが続いている……。
そんなあなたは、まず「自分のやり方のどんなところが、仕事を遅くしているのか」を探り、「仕事が速い人は何をやっているのか」を知って、今日からの仕事に取り入れてみてはいかがでしょうか。
仕事をサクサクさばくための3つのコツを解説します。
- 「仕事が速い人」になるための3原則
- 【1】仕事が遅い人は「すべてのメールを読む」、 速い人は「自動振り分けをする」
- 【2】仕事が遅い人は「ゼロから自力で考える」、速い人は「フレームワークを使う」
- 【3】仕事が遅い人は「言葉で伝える」、速い人は「図で伝える」
「仕事が速い人」になるための3原則
「仕事が速い人」になるための条件とはどのようなものでしょう?
人材育成講師の木部智之氏は、著書『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』のなかで、仕事を速くこなすための3原則を提唱しています。
原則1. 速くやる
まずはシンプルに「作業や動作そのものを速くする」。キーボードやマウス操作の速さ、思考やアウトプットの速さなどもこれに含まれます。
原則2. ムダを省く
2つめは「ムダをできるかぎり省く」。必要のない作業をカットする、優先度の低い作業に時間をかけすぎない、不必要な会話ややりとりに時間をかけすぎない、といったことなどがこれに該当します。
原則3. 確実にやる
そして3つめは、「作業をミスなく確実にやる」ということ。いくら速く・ムダなくやっても、ミスをすれば作業のやり直しが発生し、大幅な時間のロスにつながってしまいます。速さと正確さを両立できるような作業方法を追求すべきなのです。
ではここからは、上記の3原則をふまえた、仕事をより速くこなすテクニックを紹介していきます。ご自身の仕事における活用シーンを思い浮かべながら、読み進めてみてください。
【1】仕事が遅い人は「すべてのメールを読む」、 速い人は「自動振り分けをする」
ビジネスメールは、1日に何十通、何百通と届くこともざら。そのなかには、メールマガジンやセールスメール、急を要しない庶務連絡など、自分の担当業務と直接的には関係がないものも多く含まれていますよね。
これらすべてを順に読んでしまう人は、仕事が遅い人。重要でないメールを読み続けることで、多くの時間をムダにしてしまうからです。
そこで木部氏が推奨するのが、メールソフトの「自動振り分け機能」を使うこと。届いたメールの「差出人」や「タイトル」などに応じて、自動でフォルダ分けをしてくれる機能です。Outlookの場合、「振り分けたいメールを右クリック>『ルール』をクリック」という簡単な操作で設定できます。
自分にとって “優先度が必ずしも高くない” メールは、専用フォルダに自動振り分けされるよう設定しておきましょう。そうすれば受信箱には、真に必要なメールだけが届くことになり、メールチェックのムダを大きく削減できます。
なお、専用フォルダに振り分けられたメールは、時間があるときにまとめて処理するといいでしょう。木部氏の場合は、時間を決めて3分程度でまとめ読みすることにしているそうですよ。
【2】仕事が遅い人は「ゼロから自力で考える」、速い人は「フレームワークを使う」
仕事上の課題を解決したいとき、ゼロから自力で考えようとしてしまう人は、仕事が遅い人。時間をかけて考えたわりには正しい結論を導けず、また始めからやり直し……といったことになりかねないからです。
そこで、自力で考える代わりに「フレームワーク」を活用して考えましょう。フレームワークとは、特定のシーンで考えるべき要素をパターン化した “思考の枠組み” のこと。いわば数学の “公式” のようなものとお考えください。
人材育成コンサルタントの清水久三子氏によれば、フレームワークを活用すると、課題解決のために「何を考えるべきで、何を考えなくてもよいのか」が一目瞭然になるとのこと。さらに、検討項目の抜け・漏れも予防できると言います。
たとえば、マーケティングの担当者が「新規顧客が増えない」という問題に対処したいとき。ゼロから自力で考えようとすると、完全に手探りで問題に向き合わなければならず、時間がかかりすぎてしまいます。
そんな状況に陥ることを防いでくれるのが、「4P」というフレームワークです。新規顧客を増やすためには「製品の品質やコンセプト(Product)」「価格設定(Price)」「商品の流通経路(Place)」「プロモーションのやり方(Promotion)」の4項目を検討し直せばよい――という具合に、考えるヒントが得られます。
そのほかにも、フレームワークには種類が数多くあります。ごく一部の例として、マーケティングでよく用いられるものを紹介しましょう。
- AIDMA
~Attention(注目)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)~
顧客の購買行動を分析するフレームワーク。 - 3C
~Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)~
自社の現状を分析するためのフレームワーク。 - SCAMPER
~Substitute(代用する)、Combine(組み合わせる)、Adapt(応用する)、Modify/Magnify(修正/拡大する)、Put to other uses(転用する)、Eliminate/Minify(削除/削減する)、Reverse/Rearrange(逆転/再編集する)~
アイデアを発想するためのフレームワーク。
『【図解】ビジネスに便利なフレームワーク18選』でも、詳しく紹介しています。あなたの担当業務に関わるものだけでも押さえておいてくださいね。
【3】仕事が遅い人は「言葉で伝える」、速い人は「図で伝える」
ビジネスにおいては、ほかの人と情報共有をするシーンも多いもの。そんな場面で、物事を言葉でしか伝えない人は、仕事が遅い人になってしまうかもしれません。
特に、説明するのが苦手な人だと、コミュニケーションに時間をとられたり、伝達ミスによるトラブルを起こしたりする恐れがあります。おのずと、生産性が損なわれることにもなるでしょう。
そこでおすすめしたいのが、説明の際に「図を描く」ひと手間を加えること。ワークスタイル&組織開発専門家の沢渡あまね氏によれば、図を描くことでふたつのメリットが得られるそうです。
- 全体像とその要点を、ひとめでわかるように端的に示せる
- ほかの人と同じイメージを共有でき、情報の抜け漏れや、作業のやり直しを予防できる
「図解」の手間を惜しまないだけで、情報をスピーディに、かつ正確に共有できるようになると沢渡氏。
図解といっても、難しく考える必要はありません。たとえば、キーワードを四角で囲み、矢印で結びつける。これも「フローチャート」という立派な図解法のひとつです。取引先へプロジェクトの進捗報告をするとき、紙に簡単なフローチャートを書いて全体像を示し、「現在はこの段階です」と指を差すだけで、だらだら説明するより格段に効率よく伝えることができます。
ほかにも、以下のようなものがあるのでぜひ活用してみてください。
こんな簡単な図を書くだけで、情報伝達がかなりスムーズになり、あなたの仕事はぐんと速まるはずです。
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仕事が遅いことにお悩みなら、以上3つの「違い」を意識しながら、効率的な仕事を心がけましょう。
(参考)
木部智之 (2016), 『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』, KADOKAWA.
Microsoft サポート|仕分けルールを使ってメール メッセージを管理する
清水久三子 (2016), 『1時間の仕事を15分で終わらせる』, かんき出版.
リクナビNEXTジャーナル|ロジックツリー、プロセス図…仕事で即役立つ「図解」基本の4つ
永田豊志 (2017), 『頭のいい人は「図解思考」で考える! 今までの10倍「記憶力」「理解力」が強くなる』, 三笠書房.
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。