「1日のはじめに計画を立てたけれど、予定通りに仕事が進まなかった」
「職場で集中するのが難しい」
「重要な仕事を後回しにして、重要度の低い仕事に手をつけがち」
このように、充実した効率的な働き方ができない、という悩みを抱える人も多いのではないでしょうか?
今回は、時間や環境を上手にコントロールし、成果を出す働き方をご紹介します。
1. マルチタスクは厳禁。タイマーを使いこなそう
脳は、一度にふたつ以上の事柄に集中することはできません。逆にいえば、ひとつの事柄に焦点を当てると、今やらなければならない事柄にもっと集中できるということです。
マサチューセッツ工科大学のアール・ミラー教授は次のように述べています。
Truly innovative thinking arises when we allow our brains to follow a logical path of associated thoughts and ideas, and this is more likely when we can focus on a single mental pathway for an extended period.(中略)Multitasking is not humanly possible!
(革新的な思考は、関連する考えやアイデアについて脳が論理的な道筋で考えられるようなときにわきあがってきます。そしてこれは、脳が長時間ひとつのことに集中しているときに実現する可能性が高いのです。(中略)したがって、マルチタスクは人間的に無理な話なのです!)
(引用元:HB Publishing & Marketing Company | More Multi-Tasking Myths ※カッコ内の和訳は筆者が補った)
さらにミラー教授によれば、マルチタスクをすると、それぞれの事柄に戻るたびに、脳の神経回路網が同じ道をたどって戻る必要があるのだそう。マルチタスクは、実際には複数の物事に同時に集中しているのではなく、集中力を向ける先を交互に変えているだけなのです。そのためミスが多くなるのだと、ミラー教授は言います。
やるべきことがたくさんある人がマルチタスクに陥らないためには、タイマーの使用がおすすめです。たとえば、10分ならば10分と決めて、タイマーが鳴るまでは同じタスクにしか取りかからないようにしましょう。ほかのことに気がまぎれることもなくなりますよ。
2. 後回しを回避するために「TO DOリスト」を使いこなす
TO DOリストは、優先順位を意識し、やるべきことの進捗を随時確認できるので有効です。ベストセラーとなったタイムマネジメントの本の中で、著者のジュリー・モーゲンスタン氏は、1日の仕事が終わり帰宅する前に、翌日に達成したいことを8つリストに書き出すことを提唱しています。
ポイントは、1日で達成できそうな現実的な内容にすること。厳しすぎる目標を立て、達成できないことがストレスになっては本末転倒になります。
また、ひとつのタスクの中に複数のことが入っていないかも注意しておきましょう。例えば、「プロジェクトを終わらせる」では、ひとつの項目として大きすぎます。その中にある「上司に確認をとる」「パワーポイントを見直す」といった作業まで細かく分解し、書き出しましょう。
3. 座りっぱなしは非効率。定期的に立ち上がろう
近年、長時間座り続けると寿命が縮まるという事実が広く知られてきていることをご存じでしょうか? アメリカの学会誌『American Journal of Preventive Medicine』は、「総死亡率の3.8%は座りすぎが原因となっている」ことを発表しています。
寿命だけでなく、生産性についても、座りすぎは悪影響を及ぼすようです。コーネル大学経済学部のアラン・ヘッジ教授は、「体のポジションを定期的に変えて、脳を休憩させることで、健康も生産性も向上する」と述べています。以下が、具体的な「座る・立つ・歩く」のルーティーンです。
- 20分間座って仕事をする
- 8分間立って仕事をする
- 2分間仕事をやめて歩く
- 上記を繰り返す
定期的に立ち上がって動き回ることで、脳への血流が増し、頭の働きがよくなるようです。
アメリカでは、スタンディングデスクを取り入れる会社も増えているため、立って仕事をすることも現実的。しかし日本では、上記のルーティーンを厳密に遂行することは難しいかもしれません。
その場合には、30分おきにウォーターサーバーに水をくみに行ったり、お手洗いに行ったりすることを心がけるのがおすすめです。長時間座り続けることを意識的に回避し、集中力を高めて効率よく働きましょう。
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マルチタスクや座りっぱなしで集中力を切らしていませんか? TO DOリストをうまく活用できていますか? 「仕事が思うように進まず、成果が出せない」という悩みを抱えている方は、ぜひご自身の働き方の癖を見直してみてください。
(参考)
HB Publishing & Marketing Company|More Multi-Tasking Myths
Julie Morgenstern (2004), “Time Management from the Inside Out, Second Edition: The Foolproof System for Taking Control of Your Schedule - and Your Life”, New York, Holt Paperbacks.
The New York Times|Sitting Increases the Risk of Dying
Cornell University Ergonomics Web|Sit-Stand Working Programs
American Journal of Preventive Medicine|All-Cause Mortality Attributable to Sitting Time
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。