「夜をどう過ごすか」が自己肯定感を左右する。明日も最高のスタートを切るための大切な夜習慣とは?

自己肯定感が上がる夜の習慣 中島輝さんインタビュー01

何事もなく1日を過ごしていても、夕暮れどきから夜にかけて、気分がふさぎ込みがちになることもあるでしょう。しかし、これは人間のあたりまえの生理現象で、不必要に自信を失ったりネガティブな感情にとらわれたりする必要はありません。

心理カウンセラーの中島輝(なかしま・てる)さんに、1日を気持ちよく終えて、次の日最高のスタートを切るための、「夜の時間」の習慣にしたい自己肯定感を高める方法を聞きました。

構成/岩川悟(slipstream) 取材・文/辻本圭介 写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)

自分のリズムを知っておくと適切に対処できる

日中を調子良く過ごしていても、夕暮れどきになり1日の終わりが近づいてくると気分が落ち込んだり、休日の終わりに憂うつになったりする人はたくさんいます。また、夕方は気温の変化が大きく、心身のバランスも崩れがちに。

人間は無意識のうちに、暗いところへ行くと不快な状態になり、明るいところへ行くと「快」の状態を呼び覚ますといわれています。そこで、落ち込みがちなときは思い切って「明るい場所」へ、つまりショッピングモールなどのにぎやかで明るい場所へ出かけることをおすすめします

なぜ明るいところへ行くと、自己肯定感が高まるといえるのか。まず、内分泌の観点からいうと、日没に向けて精神を安定させる作用がある神経伝達物質「セロトニン」の分泌が少なくなり、これが抑うつ的な状態を引き起こすことがあります。

また、自律神経は交感神経と副交感神経のバランスが良いことで適切な状態に保たれますが、車でいうとブレーキの役割を果たす副交感神経が夕方以降に優位になることで、自律神経のバランスが乱れがちになります。そして、そこに1日の疲労が重なると、気持ちが落ち込んでしまうことがあるのです。

そんなときに、交感神経を高めてくれる明るくてにぎやかな場所へ行くと、落ち込んだり、不必要に自信を失ったりするようなことは減っていくはずです。

このように、自己肯定感が下がりがちになる条件を前もって知っておくと、それをうまく避けることができます。夕暮れどきに落ち込むのは、なにかダメなことがあったからではなく、「副交感神経が優位になっただけ」なのです。

たしかに、気分が落ち込むきっかけはあるのかもしれませんが、それが特定の時間や条件で強まるのなら、そこにはやはり人間の特性が関係しています。そこで、落ち込んだときに「いまは副交感神経が優位になっているんだ」と思えれば、すぐに対処することができます。

自己肯定感が上がる夜の習慣 中島輝さんインタビュー02

ほかにも、自己肯定感を高める夜の習慣として、わたしは、「明日着る服を決めておく」習慣を守っています。なぜなら、朝から着る服を迷っていると、「自己決定感」がどんどん下がり、それに伴って自己肯定感も下がって1日が台無しになりかねないからです。

具体的には、わたしは同じTシャツをそれぞれ10枚以上揃えています。そして、仕事の場合は朝からいっさい迷いたくないので、前もってコーディネートをつくり、「それを着て行く」と決めています。逆に、プライベートでは「今日は何を着ようかな」と迷うことをあえて楽しむようにしています。

「自己決定感」とは、「自分でコントロールできる」ということ。変えられないものを変えようとするのではなく、自分で伸ばせる部分に集中することが大切なのです。

自己肯定感が上がる夜の習慣 中島輝さんインタビュー03

幸せになるには所得や学歴よりも「自己決定度」が大切

「自己決定感」についてもう少し説明すると、いま世界中の研究者が、「何が人の幸福感に影響を与えているのか」を研究しています。

もちろん、幸せの感じ方は人それぞれですが、一般的な指標としては、所得や学歴、健康や人間関係などが大きな影響を与える要素として考えられます。そして、神戸大学の西村和雄氏らの調査によると、「自己決定度」が、所得や学歴よりも主観的幸福感に強い影響を与えていることがわかりました。要するに、進学や就職の結果よりも、その進路を「自分の意思で決めたかどうか」のほうが、幸福感にとって重要だということです。

すると、「自己決定」の力を高めていけば幸福感が高まり、自ずと自己肯定感も上がっていくことになります。

そこで、わたしは特に夜の習慣として、「スリー・グッド・シングス」という方法をすすめています。やり方はとても簡単。ノートやメモ帳に「今日良かったこと」を3つ書き出すだけです。

「今日の打ち合わせはうまくいって、みんながまとまった気がする」「移動中に空を見上げたら、目を見張るような爽やかな青色だった」というように、できれば手書きでその日の「いいこと(グッド・シングス)探し」をしてみましょう。

つまり、「いいこと探し」をはじめる脳のクセをつくっていく。慣れてくれば、「明日は新しい案件を提案してそれが認められる」というように、未来に起こしたいことも加えるとさらにいいでしょうね

人間の脳は、同じことを繰り返すと、ニューロン間のネットワークが刺激されてクセが強くなっていきます。この性質のために、「スリー・グッド・シングス」を続けていくと、脳は「いいこと」を勝手に探すようになります。すると、1日の出来事に期待感を持てるようになり、「今日はいいことがあった」「明日もいいことが起きるはずだ」と、潜在的な思考が書き換えられていくのです。同時に、感情のコントロールもしやすくなっていくことで、自己肯定感が高まっていきます。

わたしたち人間には防衛本能があるため、不安、心配、恐れといった感情をどうしても繰り返してしまいます。6万回思考をすると、そのうちの4万5000回は不安や恐れなどネガティブなことを考えるともいわれるほどです。「あそこに行けば水が飲める」と思っても、「敵が現れるかもしれない」「道が通れないかもしれない」「水が汚れているかもしれない」と考えるのは、人間が生きるために必要だったからです。

しかし、現代人はそんな思考が行きすぎないように、意識して自己肯定感を高めなければ、なかなか幸せにはなれません。もちろん、大げさに考える必要はなく、手帳に二重丸(今日はよくやった!)をつけるだけでもいいのです。そんな「小さな習慣」が、あなたの人生を少しずつ変えていくはずです。

自己肯定感が上がる夜の習慣 中島輝さんインタビュー04

睡眠は脳をメンテナンスしてくれるもの

自己肯定感が高い状態で1日を終えるときに、最後に大切になるのは、やはり「睡眠」の質です。十分な睡眠をとると、脳のメンテナンスができます。睡眠には、成長ホルモンを分泌して心身を修復したり、日中に経験・学習したことを脳に定着させて記憶の整理をしたりする働きがあるためです。

そして、自己肯定感は脳の状態と密接に関連しているので、脳の疲れをとる睡眠は、自己肯定感の維持に欠かすことができません。つまり、睡眠不足になると自己肯定感が低下し、ものごとをネガティブに考えることしかできなくなっていくのです。

ただし、どのくらいの睡眠をとれば自己肯定感が高まるかは、人それぞれ。そこで、わたしは「自分の適切な睡眠時間」を知ることをおすすめしています。難しく考えることはなく、朝起きたときに自分が「いちばん爽快な時間」を知っておきましょう

わたしの場合はショートスリーパーの性質があるので、8時間も寝たら体がだるくなってしまいます。そこで、睡眠は4時間程度にし、日中に仮眠を取り入れています。このように、自分のサーカディアンリズム(24時間を周期として繰り返される内因性のリズム)を把握しておくことが大切です。

夜型の人がいきなり朝型の生活をしようとしても、うまくいかないどころか、余計に苦痛を感じることにもなりかねません。じつは、わたしがまだ心身を病んでいたころ、あるカウンセラーに「規則正しい生活をしてたっぷり寝てください」といわれました。それはそれで正しいのですが、わたしには合いませんでした。早寝早起きをすればするほど、全身に脱力感が広がり、気分が悪くなったのです。そこで、試行錯誤の末に、「遅寝早起き+仮眠」という、自分にとってベストのリズムを見出しました。

このように、自分にあったリズムにしたがうことで、質の良い睡眠を手に入れることができ、結果的に自己肯定感が高まっていきます

自己肯定感が上がる夜の習慣 中島輝さんインタビュー05

わたしは、寝る前に甘いお菓子も食べていますよ。これはふつうに考えたら、質の良い睡眠にとっては「やってはいけないこと」。でも、寝る前に甘いものを少し口にすると、脳内で神経伝達物質であるドーパミンが分泌されて、「今日も良かったなあ」と思いながら安心して眠れるのです。ぜひ、自分にとって心地良い状態を探してみてください。

【中島輝さん ほかのインタビュー記事はこちら】
いつもネガティブな人に朗報。自己肯定感が高まる、朝イチと日中の“意外な習慣”があった。
「できない」という思い込みから抜け出す! 過去・現在・未来すべてを自己肯定する2つのテクニック

【プロフィール】
中島輝(なかしま・てる)
心理カウンセラー、作家、トリエ代表。5歳で里親の夜逃げという喪失体験をし、9歳ごろから、HSP、双極性障害、パニック障害、統合失調症、強迫性障害、不安神経症、潰瘍性大腸炎、斜視、過呼吸、認知症、円形脱毛症に苦しむ。25歳で背負った巨額の借金がきっかけでパニック障害と過呼吸発作が悪化。10年間実家に引きこもる。自殺未遂を繰り返すような困難な精神状況のなか、独学で学んだセラピー・カウンセリング・コーチングを実践し続ける。10年後、「恩師の死」がきっかけとなり35歳で症状を克服。その後、30年間の人体実験と独学で習得した技法を用いたカウンセリングとコーチングを24時間365日10年間実践。Jリーガー、上場企業の経営者など15,000名を超えるクライアントにカウンセリングを行い、回復率95%、6カ月800人以上の予約待ちに。「奇跡の心理カウンセラー」と呼ばれ上場企業の研修オファーも殺到した。現在は、ニューライフスタイルを提案する資格認定団体「トリエ」(旧国際コミュニティセラピスト協会、他5団体)を主催し120以上のオリジナル講座を開発。新しい生き方を探求する「輝塾」、好きを仕事にする起業塾「The・DIAMOND」を主宰している。

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