【スタンフォード最新知見】幸福感を得てパフォーマンスを高める「脳コンディション」の整え方

山田知生さん「脳のコンディションの整え方」01

「仕事に追われる毎日のなかで、心も身体もすり減っている……」。そんなふうに、慢性的に疲れている人はいませんか? その要因は、「脳のコンディション」が整えられていないことにあるかもしれません。

スタンフォード大学のアソシエイトディレクター、アスレチックトレーナーという立場で多くのアスリートを指導する山田知生(やまだ・ともお)さんは、適切に疲労をとり、パフォーマンスを高めて成果を挙げるためのポイントは、脳内の神経伝達物質にあると言います。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

パフォーマンスの鍵を握るふたつの神経伝達物質

成果を挙げるために高いモチベーションをもって物事に取り組む、あるいは心身を休めて明日への活力を養う——。こうした営みをうまく進められるかどうかの鍵は、脳内のふたつの神経伝達物質が握っています。

そのふたつの神経伝達物質とは、ドーパミンセロトニンです。

ドーパミンは、「やる気を起こす」「やる気を持続させる」「記憶力を高める」「気持ちをポジティブにさせる」といった働きをもっています。簡単に言えば、「意欲を向上させる」というものです。仕事で高いパフォーマンスを発揮して成果を挙げるためには、仕事に対する意欲は絶対に欠かせないものですよね。

また、ドーパミンは「快楽物質」と呼ばれることもありますが、その働きによって達成感などの快楽を味わうと、私たちはその快楽をもう一度味わおうとします。自分で立てた目標に向かって前進し、その目標を達成し、さらにそこから新たな目標に向かう。いくつかの目標を立て、そこから次へと向かう集中力と持続力を維持できるのは、ドーパミンのおかげなのです。

一方のセロトニンは、「幸福感をもたらす」「平常心を保つ」「感情にブレーキをかける」「ドーパミンの暴走を抑える」「落ち着きとリラックス感をもたらす」「自律神経を整える」「不定愁訴(原因不明の不調)を抑える」といった働きをもっています。ドーパミンの働きが「オン」だとすると、セロトニンは対照的に「オフ」の働きと言えるでしょう。

セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれることもありますが、それは、セロトニンがストレスによるイライラを軽減したり、意欲や行動力のもとであるドーパミンの暴走を抑えたりすることで心身のバランスを整えてくれるからです。

山田知生さん「脳のコンディションの整え方」02

 

「ドーパミン」により、「よし、やるぞ!」という心身の状態を保てる

では、パフォーマンスを高めて成果を挙げるにはどうすればいいでしょうか? ひとつは、「意欲を向上させる」働きをもつドーパミンを適切に分泌させること。

そうするためには、先にも少し触れましたが、「目標を立てる」ことが大切となります。大きな長期目標を立てたうえで、そこに向かう過程に短期目標を設定しましょう。この短期目標のポイントは、大きすぎず小さすぎない、「ギリギリ手が届く」くらいのものにすることです。そうすることで、短期目標を達成するたびにドーパミンがまさに適切に分泌されることになります。

また、ドーパミンが分泌されると、「ノルエピネフリン」という神経伝達物質、「エピネフリン」というホルモンも一緒に分泌されることがわかっています。これらの作用により、私たちは「ストレスに対して脳と身体を覚醒させたり、行動を起こせるように身体の覚醒を維持させたりする」ことができます。

つまり、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリンによって、「よし、やるぞ!」と心身の状態を保てるわけです。

そして、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリンが分泌されると、さらに「アセチルコリン」という神経伝達物質も分泌されます。アセチルコリンは、「記憶、学習などの集中力を高める」働きをもっています。そのため、目標達成に向かって「何をすべきか」を明確に認識でき、集中力を高めて実際に動き出すことができるのです。

山田知生さん「脳のコンディションの整え方」03

適切な休息をとるために欠かせない「セロトニン」

こうして見ると、ドーパミンさえ分泌させていれば大きな成果を挙げられるように思う人もいるかもしれませんが、それは大間違い。人間は、ずっとオンの状態で突っ走り続けることなどできないからです。「慢性的に疲れている」人は、まさにこのようにずっとオンの状態で突っ走ろうとしているのかもしれませんね。

大切なのは、適切に休息をとること。そのために活躍するのが、セロトニンです。

先にセロトニンの働きをいくつか挙げましたが、ほかに眠気を引き起こす「メラトニン」というホルモンの材料となることも知られています。パフォーマンスを高めるためには、しっかりと睡眠をとって心身を休めることが欠かせないことは言うまでもないでしょう。

太陽の光を浴びた15〜17時間後に、セロトニンからつくり替えられたメラトニンが分泌され、私たちは眠気を感じます。コロナ禍のいま、以前ほど家から出ない人もいるかもしれませんが、しっかりと睡眠をとるため、ベッドへ入る15〜17時間前に太陽の光をたっぷりと浴びましょう

また、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンは、そのままズバリ、幸福感を高めてくれる働きももっています。どんなに疲れていても、大切な人と一緒に過ごしたりかわいいペットと遊んだりすれば幸せを感じて疲れが吹き飛ぶといった感覚は、多くの人にあるはず。それこそがセロトニンの作用によるものです。

ひとりで孤独に仕事をしたり、何かを達成したときにまわりに一緒に喜んでくれる人がいなかったりすると、気分が落ち込む、やる気が出なくなる、ストレスがたまる……など多くの悪影響が表れます。それでは、結果的にパフォーマンスが上がらないことになるでしょう。毎日の生活において幸福感を得てパフォーマンスも上げたいのなら、自分自身で精神的に安心できる場所をつくり、セロトニンを分泌させる行動をとって休むことも考えてほしいと思います。

山田知生さん「脳のコンディションの整え方」04

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【プロフィール】
山田知生(やまだ・ともお)
1966年生まれ、東京都出身。スタンフォード大学スポーツ医局アソシエイトディレクター、同大学アスレチックトレーナー。24歳までプロスキーヤーとして活動したのち、26歳でアメリカ・ブリッジウォーター州立大学に留学し、アスレチックトレーニングを学ぶ。同大学卒業後、サンノゼ州立大学大学院でスポーツ医学とスポーツマネジメントの修士号を取得。2000年、サンタクララ大学にてアスレチックトレーナーとしてのキャリアをスタートさせ、2002年秋にスタンフォード大学のアスレチックトレーナーに就任する。スタンフォード大学スポーツ医局にて19年以上の臨床経験をもち、同大学のアスレチックトレーナーとして最も長く在籍。これまでに、野球、男子バスケットボール、男子・女子ゴルフ、男子・女子水泳チームなどを担当している。2007年にアソシエイトディレクターに就任したあとは、臨床開発でスポーツ医局に大きく貢献、同局プログラムのさらなる改革・促進に取り組んでいる。著書に『スタンフォード式 脳と体の強化書』(大和書房)、『スタンフォード式 疲れない体』(サンマーク出版)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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