「ひとつの会社にしがみつく」のがマズい理由。“なんちゃって昇進” にだまされていませんか?

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「終身雇用制度を維持するのは厳しい」と経団連が明言する一方で、現在は「空前の転職売り手市場」ともいわれます。とはいえ、特に有名な大企業に勤める人なら、ついついその会社にしがみつきたくなるもの

ただ、そういう姿勢に対して、大手外資系コンサルティング会社を渡り歩き、現在は人事・戦略コンサルタントとして活躍する松本利明さんは警鐘を鳴らします。先行きの見えない時代、しっかりとキャリアを築くにはどうすればいいのでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

「スライド」して唯一無二の存在になる

いま、ひとつの会社にこだわってしがみつくことは得策とはいえないでしょう。ご存じのように、あらゆる会社が右肩上がりという時代ではありませんからね。

勤めている会社がどんどん成長しているならともかく、よくよく見てみると……何年間も同じ人が上にいて詰まっているという状況ではないですか? その会社で出世しようと思うと、同期だけではなく、すでに出世している先輩や上司、役員との争いになってしまいます。

その場合、「スライド」することを考えてみてはどうでしょうか。上を目指すのではなく、自身の経験や特性を生かせる別の業種や職種など、「横に移る」のです。なぜそうするべきかというと、同じ場所で上を目指すとまわりはライバルだらけですが、スライドした新たな場所ではみなさんが唯一無二の存在になる可能性があるからです。

たとえば、イケイケどんどんの不動産営業の会社があるとします。営業マンのほとんどは、勢いとガッツで突っ走って細かいところは気にしないという人たちがハイパフォーマーでしょう。ふつうに考えたら、真面目で慎重なコツコツ型の人はその会社にはフィットしないと思えます。

でも、その人が、前職で一定以上の法律の知識を身につけていたとしたらどうでしょう? その知識に基づいて、ほかの営業マンの誰にもできない難しい案件や法律絡みの大型の提案をすることができる唯一の存在になれるでしょう。結果、スライドして飛び込んだ新天地での出世レースではまわりを一気に追い抜く、ということも考えられるのです。

「『この会社に一生勤め続ける』という安泰思考は危険」松本利明氏インタビュー02

社員を辞めさせないための「滞留ゾーン」

ですが、もしみなさんが勤めている会社がいわゆる大企業であれば、「せっかく入ったんだから」と、転職に対する迷いも余計に強くなるでしょう。でも、大企業で「この社員は必要だ」として選抜され、積極的に育成されている人は社員全体のわずか5%程度です。その候補を入れても約15%というところでしょう。その候補も40代で白黒がつき外されます。

大半を占める残りの人材に対しては、「辞められないように」と企業はさまざまな工夫をしています。というのも、現場の仕事を回してくれる人間は別の意味でやはり必要だからです。たとえば、「昇進」もそういった企業の工夫のひとつです

昇進というと、当然のようにいいものだと考えますよね? でも、そうとは限らない。大企業は「滞留ゾーン」というものを設けているからです。これは、出世レースから外れた社員を辞めさせないために、「ここまでは昇進させていい」という、本当の意味での出世とは異なる昇進の範囲のこと。この滞留ゾーンは、課長手前か課長代理など部下なし管理職までというところがまだまだ多いものです。これはある意味、年功序列の名残りともいえます。

同期のトップからは3年も5年も遅れたとしても、やっぱり昇進するとうれしいものです。そうすると、たとえ一時は転職を考えていたとしても、ついつい会社に残ってしまう。こうして5年、10年と同じ仕事をすれば、仕事の幅は広がりません。

まわりは過去を見てその人を評価しますから、たとえば、10年間、中小企業の人事の仕事をやってきた人は「中小企業の人事の人」という「ブランド」であると認識されてしまうのです。そうなってからでは転職も簡単ではないでしょう。結果、「賞味期限切れ」ということになりかねないのです。

この記事を読んでいるあなたは、本当の意味での出世コースに乗っているでしょうか? 冷静に判断して会社を「見切る」のも、しっかりキャリアを築いていくには大切なことです

「『この会社に一生勤め続ける』という安泰思考は危険」松本利明氏インタビュー03

「ありがとうの声」から自分の持ち味を知る

では、何を基準に会社を見切ればいいのでしょうか。

まずは、先の本当の意味での出世コースに乗っているかどうかということ。それから、業界や会社の事業のライフサイクルがどこのフェーズにあるのかということにも注目してみましょう。

どんな業界、会社にもライフサイクルのフェーズがあります。それは、導入期、成長期、安定期、衰退・再展開期の4つ。そのフェーズに自分が合っているかどうかを見るのです。

各フェーズによって、求められる人材像は異なります。たとえば、成長期のときには、多少強引にでも「えいや!」で物事を進められる勢いのある人が求められる。でも、安定期となると、効率化を図る仕組みを構築できる人が求められます。成長期にフィットしている人の場合、どんなに愛社精神やバイタリティーにあふれていても、勤めている会社が安定期に入ってしまえばフィットしなくなってしまうのです。

会社のフェーズと自分が合っているかどうかを見るには、なによりも自己分析が大切です。それは、自分自身の「持ち味」を知るということ。本当は短距離走が得意なのに、マラソンに挑んでしまってはせっかくの持ち味を発揮できるはずもありません。

とはいえ、自分のことはなかなかわからないというのが人間というものですよね。だとしたら、まわりの声を聞いてみましょう。みなさんにはまわりからどんな「ありがとうの声」が届いていますか? 「正確で」ありがとう「いつも速くて」ありがとう「気が利いて」ありがとう――。それらがみなさんの持ち味です

直接、周囲に聞いてみてもいいですね。僕はどんな仕事が得意そうに見える?」「どんな仕事をやっているときに楽しそうに見える?」というふうにまわりの人に聞くのです。もしかしたら、自分自身が思っていることとは違う答えが返ってくるかもしれません。でも、それこそがあなたの本来の持ち味です。

いちばん持ち味が活きるのは、「逆張り」することです。まわりが苦手なことに、自分の持ち味が一致するときです。先の不動産会社の例のように、イケイケどんどん系は細かいことは苦手です。細かく専門性を積みあげる持ち味があれば、ライバルは誰もいなくなり、あなたの独壇場になります。

自分の持ち味を知り、企業のライフサイクルのフェーズに着目し、スライドしていく――。そうして、ただひとつの会社で上を目指すのではない、オリジナルのキャリアを築いていってください。

「『この会社に一生勤め続ける』という安泰思考は危険」松本利明氏インタビュー04

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【プロフィール】
松本利明(まつもと・としあき)
1970年12月12日生まれ、千葉県出身。人事・戦略コンサルタント。HRストラテジー代表。外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサージャパン、アクセンチュアなどを経て現職。これまでに5万人以上のリストラをおこない、6000人を超える次世代リーダーや幹部の選抜・育成に関わる。そのなかで「人の持ち味に合わせた育成施策をおこなえば、ひとの成長に2倍以上の差がつく」ことを発見。体系化したそのノウハウを数多くの企業に提供し、600社以上の人事改革と生産性向上を実現する。代表的な著書である『『「ラクして速い」が一番すごい』(ダイヤモンド社)、『「稼げる男」と「稼げない男」の習慣』(明日香出版社)などはベストセラー。英国BBC、TBS、日経、AERAをはじめメディア実績多数、講演実績多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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