勉強の質を高めたい。記憶効率をもっとよくしたい。けれど、さまざまな勉強法があるなかではどのやり方を選べばよいかわからない……。
そんなみなさんにおすすめしたいのが、基本にして最強の「書く」勉強法。今回は、絶大なメリットをもつ “書きまくる勉強法” を3つご紹介します。
勉強において「書く」ことのメリット
手を動かして「書く」ことには、勉強の質向上につながるメリットがあります。脳神経内科医の長谷川嘉哉氏によると、それは以下の3つ。
- 集中力アップ
「書くべき文字を思い出し、書くスペースを意識しながら、指先に集中する」という作業により、運動神経と連動して脳の広範囲が働き、集中力が上がる。 - 思考の言語化により脳がフル稼働
「記憶を引き出して、書くべき内容を選び、行動・思考・感情を言語化する」という作業で、海馬や前頭葉をはじめ脳がフルに働く。 - 記憶の強化
手で書き出した文字そのものに、脳は積極的に注意を向ける。そのため、書いた内容がより強く記憶に定着する。
実際に、パソコン入力よりも手書きのほうが学習効果が高いという研究結果もあります。アメリカのプリンストン大学とカリフォルニア大学の共同研究では、手書きで講義のメモをとった学生は、パソコンでメモをとった学生よりもテストの成績がよかったとのこと。
パソコンでは、聞いた話を機械的に記録するだけになりがち。しかし手書きでは、要約や図示をする際に脳が活性化するため、記憶が強固なものになるのだそう。
それでは、手書きのメリットを得ながら学習効果を高めていける勉強法をご紹介しましょう。
【書きまくる勉強法1】1分間ライティング
資格などの試験のために教科書や参考書で勉強している人には、記憶力日本一に6度輝いた池田義博氏が提唱する「1分間ライティング」がおすすめです。やり方は非常にシンプルで、勉強して記憶したことを1分間でひたすら書きまくるというもの。
1分間ライティングの狙いは、「なんとなく覚えたような気がする状態」からの脱却です。参考書にマーカーを引いてなんとなく内容を覚えたつもりだけれど、いざ問題を解こうとするとうまく思い出せない……ということはよく起きるもの。そこで、勉強した内容を頭のなかから取り出し、紙に書きまくって “見える化” すれば、本当に覚えたかどうかを確認できます。
ちなみに「1分」というのは、試験本番で記憶を早く呼び起こすことを想定した時間設定。すばやく思い出せてこそ、試験で使える記憶になるのです。
たとえば、参考書で1単元読み終えるごとに1分間ライティングを行ない、覚えていなかった箇所をチェックすることをルーティン化してはいかがでしょう。記憶定着が図れるとともに、要復習箇所を特定できて勉強の効率化につながります。たった1分という時間的コスパのよさが最大の強みなので、ぜひ試してみてください。
【書きまくる勉強法2】青ペンで書きなぐる「高速読書法」
スキルアップのために本で勉強している人には、本に書きなぐりながら高速で勉強する「高速読書法」がおすすめ。これは脳科学者の上岡正明氏が提唱する方法で、本を読んで「思ったこと」や「実践にどうつなげたいか」を、ページの余白に青ペンでひたすら書きまくるというものです。
手順は以下のとおり(※制限時間は200ページの本を読む場合を想定)。
- 【読書1回め】ロケットスタートリーディング(15分)
ストップウォッチをスタートすると同時に一気に読む。読み飛ばしていいので、必ず制限時間内に読み終える。重要ページはドッグイヤーにする。 - 【読書2回め】青ペンなぐり書きリーディング(10分)
ドッグイヤーのページとその前後を読み、思ったことを本の余白に青ペンで書きまくる。重要だと思うことほど、大きく、汚く、感情を込めて書きなぐる。
例:自分にピッタリのフレームワークだ!!
明日からでも営業に使えそうだ!!! - 【読書3回め】アウトプットリーディング(5分)
「人生に役立ちそう」「明日の仕事にすぐ使いたい」など、本で得た知識をどう実践につなげたいかを、引き続き余白に青ペンで書きまくる。
例:来週のプレゼンでこの方法を使う!
このやり方で日記を書いてみる!
特に重要なのが、「思ったことを青ペンで書きなぐる」という行為です。上岡氏によると、脳は感情をともなった情報をより記憶しやすいそう。汚くても感情を込めて書きなぐるのはこのためです。また、青色には思考力や分析力を高める効果があるため、青ペンで書きまくれば記憶がより定着しやすくなるとのこと。
また、同じ本を3回読むのは「分散効果」を狙うため。これは、1回にまとめて学習するより複数回に分けるほうが、学んだことを記憶に定着させやすくなるという効果です。本はじっくり1回読むよりも、さらっと複数回読むほうがいいのです。
たとえば、業務に役立てたい本を朝の通勤電車で1回読んだら、昼休みに会社で10分間確保し、思ったことを本に書きまくりましょう。そして、夜に自宅で5分間本を開き、実際の業務へのつなげ方を遠慮なく書き込んでみてください。このように勉強すれば、1日で1冊の本をモノにし、仕事にも活かすことができるはずですよ。
【書きまくる勉強法3】好奇心を刺激するノート術
本などの教材を使い、知らないジャンルの勉強を新しく始めたいというときは、教材に取り組む前に、「すでに知っていること」「教材の目次から、興味や関心が刺激されたこと」をノートに書きまくるのがおすすめです。
メンタリストDaiGo氏によると、自分の知識とこれから学ぶ内容の差をあらかじめ書きまくって意識すると、好奇心を刺激できるとのこと。すると、記憶力と理解度アップが図れるのだそう。
2014年にカリフォルニア大学デービス校で行なわれた実験があります。研究チームは被験者たちに、多種多様なジャンルの雑学クイズを100問出題。被験者は答えを考えたのち、正解を聞かされました。その流れのなかで、脳の好奇心をつかさどるエリアが活性化した被験者は、活性化しなかった被験者より多くの答えを記憶していたそうです。
さらに興味深いことに、雑学クイズの合間に「見たことのない人の顔写真」を挿入するテストをすると、好奇心を刺激されている被験者のほうが、刺激されていない被験者より2倍もいい成績を残したそう。つまり、好奇心が刺激されていると、たとえ興味のない・知らない情報に対しても記憶力が高まるのです。
勉強において好奇心を刺激するために、DaiGo氏は先述の2点を以下の手順で書きまくることをすすめています。
- ノートの左ページに、これから勉強する本のジャンル・テーマについて「自分がもっている知識」を書きまくる
- ノートの右ページに、本の目次や見出しから「興味や関心が刺激されたこと」を書きまくる
たとえば、筆者がいま勉強中の本(畑村洋太郎著『失敗学のすすめ』)で実践してみるとこのようになります。
かかった時間は15分。DaiGo氏いわく、自分の知識の延長線上にある新しい情報が好奇心を刺激するそう。実際、書けば書くほど「もっと知りたいぞ」という気持ちが湧きました。また、知っている部分は読み飛ばし、特に知りたい部分を重点的に読めたので、勉強の効率が上がったと実感。
「知っている情報と知らない情報の差を意識する」というやり方は、本で勉強するとき以外にも有効です。異動や昇進、転職といったタイミングで仕事内容を新しく覚える際などにも応用できますよ。
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もとから手書きが好きな人も、手書きで勉強する習慣がなかった人も、今回紹介した「書きまくる」勉強法を、ぜひ目的に合わせて取り入れてみてください!
(参考)
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版|あなどれない「手書き」の学習効果
Business Insider Japan|キーボード派?手書き派?脳を活性化し、ビジネスで勝てる「本当に正しいメモの取り方」とは
STUDY HACKER|医師「手書きが脳にいいのは当然」――脳を刺激する “最高のアナログ習慣” してますか?
東洋経済オンライン|脳機能の低下を防ぐには「手書き」が有効だ
STUDY HACKER|“記憶力日本一” の男の記憶術「3サイクル反復速習法」「1分間ライティング」がシンプルだけどすごい。
上岡正明(2019),『死ぬほど読めて忘れない高速読書』, アスコム.
University of California|Curiosity helps learning and memory
メンタリストDaiGo(2019),『知識を操る超読書術』, かんき出版.
【ライタープロフィール】
月島修平
大学では芸術分野での表現研究を専攻。演劇・映画・身体表現関連の読書経験が豊富。幅広い分野における数多くのリサーチ・執筆実績をもち、なかでも勉強・仕事に役立つノート術や、紙1枚を利用した記録術、アイデア発想法などを自ら実践して報告する記事を得意としている。