リーダーじゃないのに、なぜあの人は会議を動かせるのか? 空気を変える人がやっている "あの問いかけ”

安斎勇樹『新 問いかけの作法』チームの可能性を引き出す問いかけとは

仕事におけるなんらかの「正解」が共有されていた時代には、指示によって組織は動いていました。しかしいま、その前提は大きく揺らいでいます。不確実性が常態となった環境では、あらかじめ用意された答えではなく、刻々と変わる状況のなかで思考し続ける力が問われるからです。『新 問いかけの作法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者であり、株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEOの安斎勇樹さんは、そうした時代において、人とチームの可能性を引き出す鍵となるのが「問いかけ」だと語ります。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/玉井美世子

【プロフィール】
安斎勇樹(あんざい・ゆうき)
1985年5月27日生まれ、東京都出身。株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO。東京大学大学院情報学環客員研究員。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。人の創造性を活かした新しい組織・キャリア論について探究している。主な著書に『静かな時間の使い方』『冒険する組織のつくりかた』『問いのデザイン』『新 問いかけの作法』などがある。Voicy『安斎勇樹の冒険のヒント』放送中。

問いかけは相手の思考を動かす行為

「問いかけ」とは、ひとことでいえば質問です。ただ、この質問という行為は、私たちが思っている以上に頻繁に行われています。仕事でなんらかのヒアリングを行うなど意識的に質問をする場はもちろんのこと、「最近どう?」「あれやっておいてもらえた?」といったやり取りまで含めれば、一日に何十回も繰り返しているはずです。

しかし、そのひとつひとつが相手の思考や感情に影響を与えているという点は、あまり自覚されていません。問いを投げかけられた側は、それに答えるかどうかにかかわらず、頭のなかでなにかしらの反応を示します。考え始めることもあれば、気持ちが前向きになることもあるし、思考が止まってしまうことだってあるでしょう。

この「相手の反応を引き起こす」ことこそが、問いの本質です。よって、どのような問いをどのように投げかけるかによって、相手の思考の質は大きく変わります。

たとえば、「夜ご飯はどうする?」と聞かれると「なんでもいい」で終わることが多い一方、「中華とイタリアンだったらどっちがいい?」と問われると、相手は自然とどちらかを選択しようとします。問いの設計によって、思考の負荷や方向性が変わるわけです。

私がただの「問い」ではなくあえて「問いかけ」という言葉を使っているのは、こうした質問を無意識に行うのではなく、相手の状態や状況を踏まえて意図的に設計するコミュニケーションとしてとらえているためです。単なる情報のやり取りではなく、相手の思考を動かすための働きかけとしての問い——それが、問いかけです。

問いかけが相手の思考と感情を動かす仕組み——質問設計のポイント

いまの時代に成果を挙げられるのは「冒険型」のチーム

この問いかけが重要になっている背景には、仕事の在り方の変化があります。かつては、上位者が定めた戦略や方針を組織の末端まで浸透させ実行させるという「指示型」のマネジメントでも成果が出ていました。いわば軍隊的な構造で、決められたことをいかに正確に実行するかが重視されていたということです。

しかし現在は、前提となる環境が大きく揺らいでいます。市場の変化が激しく、長期的な計画を立てても、そのとおりに進む保証はありません。わかりやすい正解があらかじめ用意されている状況ではなく、現場で状況をとらえ、課題を見つけ、試行錯誤しながら解決していくことが求められています。

加えて、働く側の意識も大きく変化しました。ひとつの組織に長く属し、与えられた役割を淡々とこなすという働き方だけでなく、自分の価値観やキャリアを重視しながら働く人が増えています。そうした状況においては、「言ったことをやれ」「言われたからやる」という関係性だけでは、十分なパフォーマンスを引き出すことは難しいでしょう。

このような環境では、上からの指示によって人を動かすのではなく、問いかけによって相手の内側にある意欲や思考を引き出す必要があります。私はこうした組織を、従来の「軍隊型」に対して「冒険型」のチームと呼んでいます。

そして、問いかけこそが、「冒険型」のチームの土台となるものです。問いによってメンバー同士の思考が促され、対話が生まれ、多様な視点が引き出される。そうして、不確実な状況のなかでも自分たちで課題を見つけ、状況に応じて柔軟に対処しながら価値を生み出していけるチームが形成されていくのです。

指示型から冒険型へ——不確実な時代に成果を出すチームマネジメントと問いかけの役割

問いかけはチーム全員で実践すべき「作法」

ここで強調しておきたいのは、問いかけは、マネージャーだけに必要なスキルではないという点です。リーダーの問いかけのスキルが問われる場面は多いものの、チームの力を高めるうえで重要なのは、メンバーの誰もが問いを投げかける側になるという状態をつくることです。

複雑な課題にチーム全体で臨むことが求められる現在においては、周囲の力を引き出すことが不可欠です。そのためには、立場に関係なく、他者の思考を促す問いを投げかけることが重要になります。

たとえば若手であっても、場の状況を踏まえて問いを少し言い換えるだけで議論の進み方は大きく変わります。会議の場で上司自身が立案した企画に対して、「私の企画に改善案はありますか?」と問われても、若手の立場で即座に答えるのは難しいでしょう。

しかし、「ユーザー目線で気になる点を挙げるかたちでもいいでしょうか?」と上司の問いを読み替えれば、メンバーの発言のハードルは一気に下がります。あるいは「5分ほど時間をもらって読み込んでからでもいいですか?」と前提を整えることで、思考する余地をつくることもできます。

今回の著書のタイトルを「問いかけの技術」ではなく「問いかけの作法」としているのは、この点に関係しています。問いかけは個人が身につけるテクニックに留まるものではなく、チーム全体で共有されることでより大きな意味を持つものです。テーブルマナーと同じで、ひとりだけが知っていても機能しません。共通の前提として共有されてこそ、力を発揮するのです。

問いを投げかける人と、それに応答する人が固定されるのではなく、互いに問いを交わしながら思考を深めていく。そのような状態が実現されたとき、チームは単なる集合体ではなく、学習し続ける組織へと変わっていきます。問いかけとは、その変化を支える基盤となる作法なのです。

問いかけをチーム全員で実践する「作法」——学習し続ける組織づくりの基盤

安斎勇樹さん ほかのインタビュー記事はこちら】

  • 「問いかけ」の正解はひとつではない。チームを動かす4つのコミュニケーションスタンス(※近日公開)
  • 同じ質問でも結果が変わる。相手の思考を引き出す「問いかけ」3ステップ(※近日公開)
新 問いかけの作法

新 問いかけの作法

  • 作者:安斎勇樹
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)

1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。