「言いにくいことでもちゃんと言えて、しかも相手を動かせる人」が大切にしている伝え方5つのコツ

筆者が少しだけアサーティブネスに触れ、過去の経験をふまえてアサーティブネスを実践してみたもの

  • 会社の先輩は「こうしていい」と言うが、そうは思えない。内心断りたいけど、自分はまだ入社したばかり……。
  • 上司が決めたことよりも、最適なアイデアがある。でもその上司は、自分にとってすごく苦手な相手……。
  • 大事な取引先の担当者に、ある間違いを指摘したい。ただ相手は目上でこわそうな人物だ……。

こうした「言いづらい状況」を経験したことはありませんか? じつは筆者も、だいぶ前に同じような経験をして、理不尽な状況へとつながってしまいました。いまならもう少し強い気持ちで伝えられそうですが、上手にできるかと言えば、そうでもありません。

そこで、言いづらいことを伝える際に役立つアサーティブネス(Assertiveness)スキルを、しっかり身に着けたいと考えたのです。まずはその理解を深め、追体験でアサーティブネスの第一歩を踏み出してみようと思います。大切な要素やコツとともに、その過程を紹介しましょう。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。

ある新入社員の理不尽な出来事

まずは、アサーティブネスのスキルがあれば、存分に生かされたであろう、ひとつのエピソードを紹介します。

ある新入社員は、上司に指示された作業を、慣れないながらも丁寧に行なっていました。しかし、そこにやってきた先輩が、「そんなに丁寧にやらなくてもいいよ。手伝うから貸して」とそれを取り上げ、チャチャッとまとめて雑に仕上げ、無理やり終わらせてしまったのです。

新入社員は、その仕上がりに不安を覚えましたが、入社したばかりだったので、先輩には何も言うことができませんでした。しかし、後日その雑な作業を見た上司は、「仕事をする姿勢がなっていない」と、その新入社員をものすごく叱ったのです。

じつはこれ、筆者がかなり前に経験したことです。あのとき、上手にハッキリと先輩の申し出を断ることができれば、あの理不尽さを味わうことはなかったのに……、といまでも思います。

理不尽な思いをして不機嫌な顔をしている新入社員

相手を動かす「アサーティブネス」というスキル

アサーティブという概念は、心理療法のひとつとして1950年代にアメリカで生まれ、1960年代以降に人権擁護の思想として発展したそうです(参考:アサーティブジャパン|アサーティブとは ?)。日本では、数年前からビジネスパーソンのあいだで知られるようになりました。

その専門機関であるアサーティブジャパン(NPO法人)は、アサーティブネスについて「自分の気持ちや意見を、相手の気持ちも尊重しながら、誠実に、率直に、そして対等に表現すること」だと説明しています(カギカッコ内引用元:アサーティブジャパン|はじめに

ちなみに、筑波大学が2023年7月に発表した研究では、「アサーティブな自己表現の得点が高い薬剤師ほど、医師が処方変更に至るような連絡をより多く行っている」ことがわかったそうです(カギカッコ内引用元:TSUKUBA JOURNAL|薬剤師のコミュニケーションスキルは医師の処方変更と関連する)。 

つまり、相手の気持ちを尊重しながら、自分の意見を誠実・率直・対等に表現することが上手な薬剤師さんたちは、一般的に彼らより強い立場である医師に対し、「〇〇とのご指示でしたが、△△したほうがよろしいのではないでしょうか?」といった具合に言いづらい内容を上手に伝え、医師を動かすことができたわけです。

筆者にも当時このスキルがあれば、状況はだいぶ違っていたのに――と思います。

言いにくい相手に、言いにくいことを、一生懸命伝えているビジネスパーソン

アサーティブネスの大切な要素・便利な手法

近畿大学 総合社会学部 総合社会学科 教授の堀田美保氏は、もう20年近く(2021年12月28日時点)アサーティブネスを実践し、「言えないことはない」と感じるようになったそうです。その堀田氏の言葉から、アサーティブネスで大切な要素を抽出してまとめると、以下の5つになります。

  • 自分に誠実に、正直に
  • 自分が何を感じ、何を望んでいるかハッキリさせる
  • 伝えたいことの的を絞り、相手がわかるまで具体化
  • 相手と自分の違いを認め、対等に向き合う
  • 攻撃せず、率直に伝える

また、伝える際に不安を感じたときは、「実況中継」という手法を使うといいのだとか。

たとえば、「生意気と思われるかもしれませんが」「今とても緊張しているのですが」「できない奴と思われたくなくてこれまで言えなかったのですが」といった具合に、いまの自分の不安感を、言葉にしてみるそうです。そうすると「少し力が抜け、次の言葉も出てきやすく」なるとのこと。つまり、相手ではなく自分を和らげてくれるわけですね。

(参考およびカギカッコ内引用元: 『日本の人事部』|職場における「アサーティブネス」の重要性とは) 

上司に対して肩の力を抜き、上手に言いにくいことを伝えている若いビジネスパーソン

アサーティブネスの第一歩を踏み出してみた

ここまでの内容から、アサーティブネスについて(ミクロ単位ほど)わずかに理解が進みました。そこで、まずは先の例で登場した数十年前の先輩に対し、どう言うべきだったか自分なりに考えてみることにします。

筆者が少しだけアサーティブネスに触れ、過去の経験をふまえてアサーティブネスを実践してみたもの

〇〇さん、ありがとうございます。いま、とても緊張しているのですが、ひとつ伝えさせてください。〇〇さんは仕事が速くて本当にすごいです。私もいつか、そうなるために、まずは今日この作業を、自分の力だけで仕上げたいのです。見ていて本当にもどかしいとは思いますが、どうかお願いいたします!(頭を下げる)

上記の言葉を考える際に、特に気をつけたのは、相手が気分を害さないよう「自分だけで仕上げたい」と伝えることでした。“〇〇さんは仕事が速くて本当にすごいです” といった前置きは、少々わざとらしい気もしますが、それがないと、ぶしつけに感じたので加えています。

ただ、これだけ力んで伝えても、「へ? 何をゴチャゴチャ言ってるの? いいから貸して、やってあげるから」と、結局は同じ状況になっていたかもしれません。それでも、ただうなずくしかなかった当時よりは、少し進歩できた気がします。

ちなみに追体験するなかで、堀田氏が教えてくれた「実況中継」の効果は抜群だと感じました。不安を正直に述べると、押し隠していた心が少しさらされて、勢いがつき、「もういいや、当たって砕けろ!」といった気持ちになるのかもしれませんね。

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言いづらいことを言えずにモヤモヤしている方々の、ちょっとしたヒントになれば幸いです。

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