若手のうちからチームやタスクフォースのリーダーに抜擢される。 近年そんな機会が増えています。
しかし、いかにプレーヤーとして優秀な人でも、リーダーとしても同じように優秀でいられるとは限りません。リーダーに就任した途端に周りがうまく行動してくれず、悩んだ末に潰れてしまうという例も少なくないのです。
今回はそんな時の準備のために参考になる本をご紹介します。堀氏のこれまでのリーダーシップに対する思い、知見がつまった良書です。
『リーダーシップの本質 改訂3版』
堀紘一著 ダイアモンド社 2015年
インフォーマルリーダーシップ
リーダーには状況判断能力、意志決定力が重要。しかしそれらは、リーダーになったからと言ってすぐに発揮できるものではありません。しかし一方で、それはリーダーになる前から行使できる種類のものでもなく、したがってその能力は育ちにくいものです。
それらの能力は、リーダーになる前の段階でインフォーマルリーダー(非公式なリーダー)として学び、準備しておくべきものなのです。よく、「課長にしてくれたら、こういう仕事ができるのに・・・・・・。」ということを言う人がいますが、そうではありません。
そういうポジションに就く前から、インフォーマルリーダーとして周りから信頼を得られるような行動や態度を取り、リーダーになるための下準備をしておくことがたいせつです。
本書の中ではさらに、「リーダーは明日を語れ」、「相容れない意見を認めろ」など、周囲の信頼や期待感・安心感を得る具体的な方法が語られます。
組織の責任はすべてリーダーにある。
著者の掘さんは、「組織の責任はすべてリーダーにある。」と語ります。
組織には目的があり、リーダーはその向かうべき方向を考え、最も効率的な方法を組織の構成員に指し示して、目標達成に向かわせる必要がある。 (引用元:「リーダーシップの本質」掘紘一)
その場合、問題となるのは、「どのように目的を理解させて、自発的に行動してもらうか」ということです。
理論的に最良の方法がメンバーに理解されないこともある。技術と経験が豊富な人々をも含めたメンバーが理解できないことは、たとえ理論上正しくてもうまくいかないケースが多い。そのとき、メンバーを教育する一方で、彼らを納得させていく、その両方のスピードを同調させずにリーダーだけが理で推し進めていくと、決して成功は得られない。そのさじ加減は非常にむずかしい。リーダーはつねに、最良の条件で可能な、目的への最短の道を探りつづけなければならない。同時に、組織の成員の許容し理解する範囲を把握し、理想現実のバランスをとっていく必要がある。(引用元:同上)
そのときに、リーダーができることは、メンバーが気づいていない強みを発見し、伸ばしてあげることです。
一つの褒め言葉、一つの叱責が人と組織の命運を左右する。
人をほめることはリーダーとしてかけがえのない大切なことなのである。褒めることは難しいが、それができなければいいリーダーにはなれない。リーダーが人を褒めるとき大事なのは、結果よりもプロセスを褒めることである。人間は理解をもとめる動物である。一所懸命工夫したことや、今までとは違うやり方をしたことは、結果よりもプロセスに現れる。失敗事例の中に褒める要素を見つけ出すのは、リーダーにとって大変な労力を要する。(引用元:同上)
映画『イミテーションゲーム』では、コンピューターの前身となる「チューリングマシン」を作った、アランチューリングがリーダーとして苦闘します。
彼はあまりにも頭が良く、自分の方法がベストだと信じて疑いません。そのせいで、彼のチームはうまく機能しなくなってしまうのです。彼に足りなかったのは、どのようにチームを動かしていくのか、どのようにチームのメンバーひとりひとりに気配りをしていくのかということへの理解でした。
そのことの重要性に気づいたかれは、メンバーにリンゴを配ります。単純ながらも、その行為に彼の気持ちの転換を見たメンバーはそのことを喜びます。
都市伝説ですが、アップル社のロゴであるリンゴは、青酸カリ入りリンゴを食べて自殺したとされているチューリングへの敬意を表しているそうです。
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いかがですか? リーダーになる前から、リーダーとして信頼されるよう、行動を意識する。できることから少しずつ初めて試してみましょう。 リーダーシップは素質ではありません。スキルとしてみんな学べるのです。
参考 「リーダーシップの本質」堀紘一 著 ダイヤモンド者 2009年 映画「「イミテーションゲーム」