「今このタイミングで発言するべきではない」 「○○さんに意見を合わせておこう」
みなさんは、職場でこのように空気を読んだことがありますか? 職場以外でも、場の空気を察した方が良いと感じる機会は幾度となくあるものですよね。
しかし、いつも空気を読んでいると相手の意見に納得できない場合でも従うことになりかねません。不本意ながら相手に合わせるという経験をした方もきっとたくさんいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、あえて空気を読まずに行動するコツについてお伝えしたいと思います。
「空気を読む」とはなにか
私たちがしばしば用いる「空気を読む」という言葉ですが、一体どのような行動のことを指すのでしょうか? 国語辞典『大辞泉(2006)』によれば、「空気を読む」という表現は次のように説明されています。
「その場の雰囲気から状況を推察する。特に、その場で自分が何をすべきか、すべきでないかや、相手のして欲しいこと、して欲しくないことを憶測して判断する。」
(引用元:大石千歳(2009),「空気が読めない」とはどういうことか?:社会的スキルの欠如という観点からの検討,東京女子体育大学・東京女子体育短期大学紀要 第44号)
相手の気持ちを汲み取ることができる人は周囲から信頼されますよね。そういった人は、ビジネスにおいても「この人が担当なら」と取引先に契約してもらえたり、上司から責任ある仕事を任されたりするはず。
このように、「空気を読む」能力はビジネスパーソンが仕事をするにあたって重要なスキルであると言えるでしょう。
空気を読むことによって起こる弊害
私たちが身に付けるべきだとされる「空気を読む」能力には、デメリットもいくつか存在します。
1.意見を主張することができなくなる 空気を読み続けていると、自分の意見を主張したい時にもためらうようになってしまいます。
例えば、自分の部署において仕事の方針が改められたとします。あなたは新しい方針に従いたいと思いましたが、部署内では以前の方針が支持されているようです。その場合、あなたは職場の空気を読んで前の方針に従い続けますか? それとも、新しい方針を取り入れようと周囲に働きかけるでしょうか?
以前の方針では自社の発展を妨げてしまう可能性も考えられますよね。しかし、同調圧力を察することで周囲と異なる意見を主張すること自体は悪いことではないにもかかわらず、伝えるのをやめておくという判断をしてしまうのです。
2.状況に対する適切な判断ができなくなる C CHANNEL株式会社代表取締役社長の森川亮氏は、空気を読むことは「目の前のことに気を遣って本質が見えなくなること」だと表しています。確かに、場の空気に従ったとしてもその判断が本当に正しいものであるかどうかは分かりません。
例えば、職場でトラブルがあった際、上司や周りの人間がそれをもみ消そうとしたとしましょう。その時あなたは、空気を読んでトラブルをもみ消すのを手伝いますか? それとも考え直すよう周囲に伝えるでしょうか?
もし上司らと一緒になってもみ消そうとするなら、あとになってそのトラブルが社会から信用を失うほどの大問題となってしまう可能性もありますよね。空気が読めることと正しい判断ができることは決してイコールではないのです。
空気を読まないコツ
では、私たちはどのようにすれば空気を読まないという選択を上手に行うことができるのでしょうか?
1.一貫した態度をとる 自分ではあえて空気を読まずに主張したと思っていても、周囲からは「ただ空気が読めない人」とみなされてしまう場合があります。そうならないために普段から気をつけておくべきポイントは、「態度」です。
日本デジタルマネー協会理事であり、著作活動も行っている大石哲之氏によれば、空気を読まない場合には「あえてやっているということをきちんと示す」、「自信を持ってやる」、「やる意図をはっきりさせる」の3つの態度が重要なのだそう。
場の空気を理解しつつ、意図してそれに同調していないのだということが相手に伝わらなければならないのです。
先ほど挙げた部署内での新しい方針の例で言えば、自分だけが新しい方針に従って黙々と行動していると周囲から空気が読めないどころか当て付けのようにも思われてしまうでしょう。
しかし、ミーティングの機会を設けるなどの方法によって自分がその方針に従いたいと思う理由を述べることができれば、味方になってくれる人が他にも出てくるかもしれません。相手の空気を変えるつもりで主張しましょう。
また、もしかしたら相手の意見が正しいかもしれない、と根拠なしに自信を失うのではなく、新しい方針に首尾一貫して従う姿勢を見せれば、空気が読めないと思われることはありません。むしろ信念があると一目置かれるようになるはずです。
2.問題に対して危機感を持つ 対処すべき問題に責任を持とうとするなら、上司や周りの人間の評価はきっと気にならなくなるはずです。
トラブルに対する状況判断の例で言えば、小さなトラブルを見過ごすとどうなるか考えてみてください。その場は収まるかもしれませんが、顧客や取引先にはきっと迷惑がかかることになるでしょう。
取引が中断されてしまう可能性も考えられますよね。そのことに危機感を感じることができれば、場の空気を読まないという判断ができそうだと思いませんか?
空気を読むことは大切ですが、場合によっては空気を読まない決断も必要です。時には、空気を読まないという判断ができるように「空気を読む」能力を身に付けましょう。
(参考) 大石千歳(2009),「空気が読めない」とはどういうことか?:社会的スキルの欠如という観点からの検討,東京女子体育大学・東京女子体育短期大学紀要 第44号 PRESIDENT Online|「空気を読まない女性が会社を強くする」三越伊勢丹ホールディングス大西洋社長×白河桃子【後編】 logmi|南場智子氏「できる奴ほど全く空気を読まない」DeNAとLINEに共通するユーザー目線のガチ文化とは? J-CAST|「空気を読む」を深読みする 常識と個性の関係とは