仕事で同僚や後輩が何か問題を抱えて、相談に来ることがありますよね。誰かに頼りにされるというのは嬉しいものです。しかし、あなたのアドバイスが本当に彼らの役に立っている自信はありますか?

あなたが誰かに何かを相談されたとき、どのようにアドバイスするかによって、その相談の効果は目に見えて変わってくるのです。今回は、「この人に相談してよかった」と思ってもらえるような、良き相談相手になるためのコツを紹介します。相談を受けたら、「上手な聞き役」になり「閃きを促すアドバイスをしてあげる」ことが大切です。ではその方法を見ていきましょう。

「メタ的発話」の量が閃きを左右する

群馬大学教育学部より発表された、他者の閃きの促進に関する興味深い研究があります。

その実験では、解くのに閃きを必要とするパズルを被験者に解かせます。異なった形の4つの木のブロックを組み合わせて、“T”の形を作るというものです。その際、被験者を次の4グループに分けて、それぞれに別の方法をとらせました。

①1人で黙々と解く。
②1人で取り組み、課題に対する方針や気づいたことを声に出して言う(独り言)。
③パズルを解く役と聞き手の2人で取り組む。パズルを解く役は、課題に対する方針や気づいたことを聞き手に語り掛ける(聞き手は相槌はできるが発言は禁止)。
④パズルを解く役と相談役の2人で取り組む。2人で相談しながらパズルに取り組む(しかしパズルを操作できるのはパズルを解く役のみ)。

この上で、パズルの正答率やその速さについて測定する実験を繰り返した結果、①の正答率の低さは変わらなかったものの、他のグループにおける正答率や速さは回によってまちまちで、差異がありませんでした。

正答率が②~④の分類に起因していないとわかった実験者が、正答率の違いが何に起因しているのかを調べたところ、「ある種類の発言」の回数に比例して、正答率が高くなっていることがわかったのです。

その発言というのが、「メタ的発話」です。

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聞き手が問題解決するのはNG

この研究で言われている「メタ的発話」とは、問題の解法を“考える”助けとなる発言のことを言います。例えば、「残りはどんな組み合わせがあるだろう?」 だとか、「90度を意識して組み合わせてみよう」など、いわば思考の方針を手助けする発言です。

また、これに該当しないのが、「次はくぼみに三角形を合わせてみよう」とか、「台形のピースはT字の下部分に使おう」といった、具体的に問題解決にかかわる発言です。この2つの発言は似ているようで、もたらす結果は全く違います。

前者のメタ的発話の特徴は、パズルを解く役が自分の思考の一環に組み込み、役立てることができるという点です。④の場合で考えると、相談役が発したメタ的発話がきっかけとなって、パズルを解く役が方針を立てたり変えたりすることができます。

一方、メタ的発話に当たらない後者の発言は、相談役が考えた案をパズルを解く役に提示し、その解法を検討するように要求しています。それが、パズルを解く役の頭の中になかった提案だった場合、パズルを解く役は、それまでの思考を一旦中断しなければなりません。解法をもう一度初めから考え直すということになるので、閃きに繋がるまで時間がかかってしまいます。

また、これは②③のような、聞き手が居ない、または喋らない場合にも当てはまります。パズルを解く役が自分で発した言葉がメタ的発話である場合、それは自然な思考の流れになっている証拠ですが、メタ的発話以外の発言である場合、思考が飛び飛びになっていることを表しています。つまり、メタ的発話の量は、思考が自然な流れで組み立てられているかどうかを表していると言えるのです。

ここまで紹介してきた研究を離れて、実生活での相談の場面に視点を移しましょう。あなたが誰かから相談を受ける際、相談しに来る人は、自分の思考を自然に組み立てることができず問題の解決策が分からないから、あなたに相談をしに来ているはずです。言い換えると、自らに対してメタ的発話ができていない、ということ。ですから、相談を受けたあなたは、メタ的発話を使ってその人の思考を整理してあげると、相手の閃きを促すことができるのです。

ここで大事になるのが、「聞き手は、問題の解決に直接影響を与える発言をしない」ということです。

相談されると、ついつい自分の意見を言いたくなってしまうのが人間というもの。ですが、問題を直接解決してあげるのではなく、その人が問題を解決できるように思考を誘導できる人が、本物の聞き上手というわけです。「雄弁は銀、沈黙は金」ということわざもあるように、あまり語らないほうがよいでしょう。

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メタ的発話って、どうすればいいの?

でも、いきなり「メタ的発話で思考を誘導しろ」なんて言われても、どうしたらいいかわからないですよね。ここで、具体例と併せてメタ的発話の方法を見てみましょう。

例えば、「新商品のおしぼりの売れ行きがよくない」と相談にきた部下がいたとします。

この場合、「この繊維は変えた方がいい」だとか、「おしぼりはそもそもだめだ」といった発言は、よいアドバイスではありません。仮にそれが正解だったとしても、それは現時点ではあなたの一意見にすぎないのです。仕事をやってきた部下に考えさせて、その結果として同じ結論に至った場合と比べると、“問題解決の質”で劣ります。

ですから、部下に“思考のきっかけ”を与えてあげる必要があります。あなたの発言をきっかけにして、部下が解決策を閃くような思考に至ればよいのです。

適切なアドバイスの例としては、「この触り心地は消費者の求めているものだろうか」や、「残る改善点はどこだろうか」などといったものでしょう。また、「おしぼりという商品の魅力はなんだろう」など、根本から考えさせることも時には必要になるかもしれません。

相手が閃きにたどり着けるよううまく手助けすることが、よき相談相手になるための秘訣です。最初は難しいかもしれませんが、あなたも信頼される聞き手を目指してみてはどうでしょう?

(参考)
大川愛, et al.(2016),「思考の言語化が洞察問題解決に及ぼす影響」,群馬大学教育実践研究, pp 161-166.
リクルートマネジメントソリューションズ|思考力を鍛える~なぜ、問題解決はうまくいかないのか~