「また積読が増えてしまった……」
デスクには未読のビジネス書が何冊も積み重なっている。自己啓発本、マーケティングの専門書、最新のマネジメント理論——どれも「仕事に活かせる」と思って買ったはずなのに、開くことすらままならない日々。
「仕事に活かせる知識を得たいのに、じっくり読書する余裕はない……」
この悩み、多くのビジネスパーソンが抱える「積読問題」ではないでしょうか。本を読みたいけれど忙しくて読めない。知識を増やしたいけれど長時間の読書は現実的ではない。そんなあなたにこそ試してほしいのが、「1冊15分読書」×「コーネル式ノート」という効率読書の新習慣です。
この記事では、「忙しいから読めない」という悩みを「忙しくても読める」に変える短時間読書術を、実践例を交えて解説します。
必要な情報を得るだけなら「1冊15分」で読める!
「仕事に役立てるために読書をしたい」と思うものの、一冊読んでまとめる労力を考えるとつい先延ばしにしてしまう……こんなお悩みを抱えている方は多いはず。
しかし、娯楽のためや、教養を身につけるための読書と違い、知識を得るための読書なら、一から十まで完璧に読み切る必要はありません。むしろ、「必要な情報を効率的に拾う」という意識をもつことがポイントなのです。
教育に関するコンサルタント業などを営む、株式会社士教育代表取締役の犬塚壮志氏も、読書効率を高めるには「娯楽目的のためでない本を読む場合、『問題解決』というリターンを本からどれだけ得ることができたのかが」大切だと述べています。
犬塚氏は「問題解決のための読書で重要なことは、『全部読む』ではなく、『どこを読むか』」と語り、そのスタイルを追求した結果、「1冊15分程度」で読めるようになったそう。*1
とはいえ、「そんな短時間でさっと目を通しても、知識にならないのではないか……」と思うかもしれません。必要な情報を効率的に得て、確実に知識にするためには、読書の前後にする行動が鍵となります。
効率的な読書のための2つのポイント
📚 読書前にすること:読書の目的を決める
- 「なんのために」「どんな情報がほしいのか」を明確にする
- どこを重点的に読むべきかがすぐに分かるようになる
例:「明日から使えるお客様との雑談スキルを学びたい」
📝 読書後にすること:疑問や気づきをメモする
- 「読んで終わり」では内容を忘れてしまう
- メモによって確実に知識に変換できる
これらを行なうには、「コーネル式ノート」の活用がおすすめです。
「コーネル式ノート」で確実に知識を得る
コーネル式ノートとは
コーネル式ノートは、コーネル大学の元教授ウォルター・パーク氏が考案したノート術。学習効率や情報整理を高めるために用いられるフレームワークとして広く知られています。画像のように、ノートを3つのエリアに分けることが特徴です。
コーネル式ノートの3つの構成要素
📔 「ノート」
授業内容や会議のメモ、アイデアなどの詳細を自由に書き込むスペース。
🔑 「キュー」
ノート欄に書いた要点やキーワード、見出し、質問などをあとから整理して書き込むスペース。
📋 「サマリー」
1日の学習内容や会議内容を振り返り、要点をまとめる(総括する)スペース。
「一冊15分」読書にコーネル式ノートがぴったりな理由
「忙しくて読書の時間がとれない」という人にとって、読書後に長々とメモをとるのは面倒なはず。しかし、インプットした情報を自分の言葉でアウトプットする行為は、記憶の定着率を高めるために重要な行動です。
脳科学を専門とする篠原菊紀氏は、記憶における「アウトプット」の重要性を以下のように語っています。
脳には出力依存性というものがあるので、「インプットしよう、記憶しよう」とするだけでは情報はなかなか入っていきません。逆に、「情報を使おう」「表現しよう」とすれば入っていきやすくなる。*3
つまり、本を読むだけでは知識は頭に残りにくく、読んだ内容を自分の言葉で表現することで脳に定着しやすくなるということです。
そこで、おすすめなのがコーネル式ノート。「手軽かつ簡潔にメモでき、あとから見返しやすい」という特徴があり、負担なく記録をとることができます。
コーネル式ノートのメリット
- ✅ シンプルな3つのセクションに分かれているため、迷わずメモできる
- ✅ 急いで書いても見やすくまとまるので、あとで見返しやすい
- ✅ まとめ欄があることで、学んだ内容をアウトプットしやすい
「一冊15分読書」×「コーネル式ノート」のやり方
具体例を交えながら、「一冊15分読書」×「コーネル式ノート」の方法をご紹介します。
今回は、中間管理職になったばかりの人が「リーダーとしてのコミュニケーション方法を学びたい」と考えて、『リーダーは話し方が9割』(すばる舎)を手に取ったとしましょう。
「一冊15分読書」×「コーネル式ノート」のやり方
❶ 読書の目的を決める(2分)
この本からどんな情報を得たいのかを決め、コーネル式ノートの一番上に記入します。
今回は「リーダーとして、チームメンバーが働きやすくなるような指示出しや声かけができるようになりたい」という目的を設定しました。
▶︎▶︎つまり、この本から「部下に対しての指示出しや声かけ」に関する情報を引き出せればOK。
❷ 読書する(15分)
まずは目次にざっと目を通します。「特に2章・3章に目的に関連しそうな見出しが多い」と当たりをつけ、そこから優先的に読んでいきます。
ビジネス書や自己啓発本の場合、重要な箇所が太字で書かれていることや、最後に短い要約があることが多いもの。まずはそこを流し読みします。
▶︎▶︎太字や要約部分を流し読みし、重要そうなページに印をつける。
❸ 疑問や気づきをメモする(3分)
印をつけたページを見ながら、「実際に明日から会社で使えそうな情報」を書き出します。
「ノート」 | 情報を簡潔に書き出す |
「キュー」 | 要点やキーワード、見出し、質問など |
「サマリー」 | 感想や、実践するときに気をつけることを簡単に記入 |
このような流れで読書し、メモをとれば、短時間で必要な知識を得ることができます。
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「1冊15分」×「コーネル式ノート」なら、短時間で要点を掴み、確実に知識を定着できます。忙しいあなたこそ、効率的な読書習慣を始めてみませんか?
*1 ダイヤモンド・オンライン|読書効率を最大化する「理系脳読書術」
*2 Cornell University Learning Strategies Center|The Cornell Note Taking System
*3 STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。