- 資料作成で何度も修正を重ねて、結局締切ギリギリになってしまう
- 部下のやり方が気になって、つい細かく口出ししてしまう
- 失敗を恐れて、新しい提案や挑戦に踏み切れない
こんな経験はありませんか?
もしあるなら、あなたには完璧主義的な傾向があるかもしれません。
そしていま、その完璧主義に疲れを感じているのではないでしょうか。でもその傾向は、少し思考を変えるだけで大きな強みに変わります。
じつは「完璧主義」には2つの種類があるのです。
その2つとは
- 失敗も学びに変えて成長につなげる 「成長型完璧主義」
- 理想と現実のギャップに苦しみ、心身をすり減らす 「消耗型完璧主義」
今、完璧主義的な自分に疲れを感じているとしたら、それは「消耗型」の思考パターンに陥っているだけ。「成長型」にシフトすれば、その完璧を求める力は最強の武器になります。
この記事では、2つの完璧主義の違いと、あなたの完璧主義を「成長の原動力」に変える方法をご紹介します。
「完璧を追う人」は2種類いた!――成長型と消耗型の分かれ道
同じ「完璧を目指す」でも、そのスタンスはまるで違います。
◆成長型完璧主義の特徴
- 高すぎず低すぎない「ちょうどいい」目標を立てられる
- 努力の過程を楽しめる
- 失敗や否定を過度に恐れない
- 評価は気にするけど、振り回されるほどではない
◆消耗型完璧主義の特徴
- 達成が困難な目標をつい設定してしまう
- 失敗を恐れすぎて身動きがとれない
- 周囲の評価が気になりすぎて、小さなミスも許せない
- 自己評価が厳しいあまり、常にプレッシャーを感じている *1と*2を参考にした
つまり違いは、
- 目標が現実的かどうか?
- 失敗を「材料」にできるか、それとも「傷」にしてしまうか?
- 目標までのプロセスを前向きに楽しめるかどうか?
医学博士で心療内科医の海原純子氏は「目標に向かい努力するが、うまくいかない場合も結果を受け入れ、再スタートできる」ことがよい完璧主義としています。*1
これがまさに「成長型完璧主義」の考え方と言えるでしょう。
人間関係がラクになるのはどっち?――成長型完璧主義の力
成長型完璧主義と消耗型完璧主義の決定的な違いは、「完璧を求める矢印がどこに向いているか」です。
- 成長型完璧主義 → 矢印は自分自身に向いている
- 消耗型完璧主義 → 矢印が他人にまで向かってしまう
たとえば同僚に業務を引き継ぐとき、一度説明したことを何度も質問してきたり、手順どおりにやらずにミスをしたりして、「どうして教えたとおりにできないんだ!」とイライラした経験はありませんか?
こうしたイライラの背景に次のような心理があるのであれば、消耗型完璧主義に陥っているかもしれません。
- 😠 「手順書をしっかりと読まないのは、仕事の基本を守っていない証拠だ」
- 😠 「私が時間と労力をかけて説明したのだから、相手も自分と同じレベルで理解するべきだ」
このように相手にも完璧を求めて攻撃的な思考になると、関係性がギクシャクしてしまうでしょう。*2
一方、成長型完璧主義者は
- 😊 「説明がわかりにくかったかな?」
- 😊 「どう説明すれば相手に伝わるだろう?」
と考えます。
つまり、適切に状況をとらえ、建設的な対応をすることができるため、相手との関係性を悪くしてしまうこともないのです。
成長型完璧主義はこうしてチームをつくる
1. ダメ出しではない。「提案型フィードバック」で成長を支える
消耗型完璧主義者は批判に走りやすい傾向にありますが、成長型完璧主義者は提案ベースで相手を導くことができます。
相手が自分の思うように行動してくれなかったとしても、批判ではなく提案のかたちでフィードバックをするようにしてみましょう。
😠 批判:「どうしてできないの?」
😊 提案:「ここをもっとこうしたらよりよくなるのでは?」
😠 批判:「また同じミス? 注意が足りないんじゃないか」
😊 提案:「ミスしてしまうことが多いところを整理して、確認方法を変えてみるのはどう?」
😠 批判:「どうしていつも期限ギリギリなの?」
😊 提案:「もう少し期限に余裕をもてるよう、スケジュールの組み方を一緒に見直してみようか」
消耗型完璧主義の思考では、自分に厳しいぶん相手にも同じ厳しさを向けてしまいがち。しかし、成長型完璧主義では、提案により相手に適切な行動を促すことができるのです。
2. 失敗は「材料」に変換――データ思考で成長していく
成長型完璧主義者は自分の失敗も他者の失敗も「データ」として扱うことができます。
「もうダメだ」ではなく「改善のための材料が手に入った」と考えるのです。
- 😠 アドバイスしたのに、後輩がプレゼンで失敗した
😊 失敗も結果のひとつと受け入れ、改善に必要な材料とする - 😠 あの同僚はいつも同じミスをする
😊 同じミスを繰り返してしまうという問題を抱えているので、解決するためにどうすればいいのかを考える
「失敗するなんてもうダメだ」「あんなに言ったのにミスするなんて、あいつはダメなやつだ」と自分や相手の人格を否定するのではなく、次につなげるためのひとつのデータとしてとらえるのです。
そうすることで、人間関係がスムーズでありながら、成果を出し続けるチームをつくることができるでしょう。
3. 他責にせず“自分ごと化”――次の一手が見えてくる
チームで失敗したときも、成長型完璧主義者は「自分にできることはなかったか?」と考えます。
この姿勢が改善策を生み、次につながる挑戦を可能にします。
「自分は全力で取り組んだのに、あの人のせいで失敗してしまった……」
そんなふうに、足を引っ張っていたと感じるメンバーの顔が脳裏をかすめることもあるかもしれません。
しかし、そこで相手を責めても成果にはつながりませんし、チームの人間関係が崩れるだけです。
- チームメンバーとして、ほかのメンバーのミスを防ぐためにできることはなかったか?
- チームの全員が同じ失敗を繰り返さないために、自分が担うべき役割は何か?
こうした視点で振り返ると、他者がした失敗でも自分ごととしてとらえやすくなり、次の機会へ向けた改善策が見えてきます。
そしてそれは、常に前向きに挑戦を続けるためのステップとなるはずです。
***
完璧を目指すこと自体は悪くありません。完璧主義を「成長」に変えるか、「消耗」に変えるかは自分次第です。
「消耗型」で疲弊するより、「成長型」で自分も周囲も前向きに進めるほうがずっと健やかです。今日からぜひ、「完璧主義=成長型」にアップデートしてみませんか?
※引用の太字は編集部が施した
*1 時事メディカル|完璧主義は良くない??
*2 コグラボ|完璧主義がうつの原因に。陥りやすい人の思考・行動の傾向や改善方法をやさしく解説
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。