仕事や勉強に取り組もうと思っても、なかなかやる気が出ずにダラダラと時間が過ぎてしまうことは、多くのビジネスパーソンが経験する問題です。
しかし、最初の4分間だけ頑張ることで、そのあとスムーズに作業を進められるとご存じでしょうか?
アメリカの心理学者レナード・ズーニンが提唱した「ズーニンの法則」は、まさにこの「最初の4分」に着目した法則です。
本記事では、ズーニンの法則と、仕事や勉強での具体的な活用方法を紹介します。
先延ばしにせず、効率よくやりたいことをやるために、ぜひ参考にしてみてください。
ズーニンの法則とは?
ズーニンの法則は、「最初の4分を頑張って乗り越えることで、脳が自然とやる気を出し、その後の時間も集中して取り組むことができる」というもの。アメリカの心理学者レナード・ズーニン氏が提唱しています。*1
なぜ「最初の4分間」だけ頑張ると、作業が進むようになるのでしょうか?
それには、「作業興奮」という脳の機能が関係しています。
これはドイツの精神科医エミール・クレペリン氏が発見された考え方で、「いったん作業を始めると、だんだんと集中し始め、やる気が起こり、夢中になったり楽しくなったりすること」を指します。*2
この作業興奮は「側坐核」の働きがカギになっているのです。
『すぐやる脳』の著者で脳神経外科医の菅原道仁氏は、作業興奮が起こる理由を「手(体)を動かすことで、その信号が大脳の『腹側淡蒼球(ふくそくたんそうきゅう)』に伝わり、さらに『側坐核』(神経細胞の集団)が刺激されるから」と説明しています。*2
つまり、体を動かす(実際に行動する)ことで、側坐核が刺激され、作業興奮が起こるわけです。
「始めるのが億劫でも、少し頑張ってやってみれば夢中になれる」ということが、脳科学的に証明されているのです。
ズーニンの法則も、この作業興奮の一種。「とりあえず4分だけ」と言われたら、重い腰を上げてみようかなと思いませんか?
ズーニンの法則 実践方法7選
では、ビジネスパーソンがズーニンの法則を活用する方法を具体的にご紹介します。
まずは、タイマーを4分間にセットすることからスタートです。
- メールの確認
溜まったメールは、4分間のうちに読めるだけ読んでみましょう。
未読メールが山積みで手をつけたくないときは、「とりあえず4分だけ」と決めて、その時間内でできるだけ開封するのです。
重要なものに目を通すだけでもOK。
気づけば返信まで進んでいるかもしれません。
- 報告書作成
報告書の作成は、4分間でとりあえずタイトルを打ち込んでみましょう。
「報告書を書かなきゃ…」と気が重いときは、まずタイトルだけ打ってみるのです。
その次は日付や項目を、思いついた順に打ち込んでとにかく手を動かします。
そうすれば、次第に気持ちが乗ってきて、想定よりも早く仕上げられるかもしれません。
- アイデア出し
アイデア出しは、4分間のうちに思いついたアイデアを5つ書き出してみましょう。
アイデアがなかなか出なくても、とにかく何か5つ書き出してみるのです。
完璧を求めず、書き出すことで次のステップにつながります。
- プレゼンの準備
プレゼンの準備は、4分間のうちにとりあえずスライドを開きましょう。
「プレゼン資料を作るのは大変そう……」と感じていても、とにかく4分間だけパソコンを開いて、スライドのファイルだけ作成するのです。
その次は、資料を手元に用意する、タイトルを入れる、簡単な見出しをつくる……など、思いついたことをやっていきます。
短時間でも手を動かせば、具体的にやるべきタスクが見えてきて、進めやすくなります。
- 会議の準備
会議の準備は、4分間のうちに議題を整理しましょう。
メモ帳やスライドに、話し合いたいポイントを箇条書きにするだけでもOK。
そうすればそのあと、ほかの詳細を詰めやすくなります。
- 勉強
勉強は、4分間のうちに教科書の3行を読んでみましょう。
「勉強しなきゃ…」と思うと腰が重くなるもの。
まずは4分だけ集中して、教科書の最初の3行を読んでみるのです。
読み終えたら次も「3行だけ」と繰り返すうちに、自然と勉強モードに入れるはず。
- 部屋の片づけ
部屋の片づけは、4分間のうちに机の上のゴミを捨ててみましょう。
「忙しくて部屋が散らかったまま。でもなかなか片付けられない……」という人は多くいます。全部片づけることを考えると、面倒でなかなか進みませんよね。
始めは4分間だけのつもりが、気づけばもっと長い時間集中していて、部屋がスッキリしているかもしれません。
筆者がズーニンの法則を仕事で実践してみた
実際に、ズーニンの法則を仕事に取り入れて効果を検証してみました。
筆者は、「文章を書き始めるまでに時間がかかる」と感じることがよくあります。
「ちゃんとした文章構成にしなければ」と思うあまり、できる気がせず、つい先延ばしにしてしまうのです。
そこでタイマーを4分間にセットし、なんでもいいから思いついたことを一行書いてみることにしました。
書き出した内容は、記事の文章になるものもあれば、「〇〇について再度調べておこう」といったタスクのメモもあり、本当に何も気にせず思いついたことを書き散らした状態。
ある程度書き出したあと、大まかに分類し、並べ替えて整理しました。
そんな作業をしているうちに、あっという間に4分経過。
すると、あんなに「やるのが億劫だな……」と思っていたのが嘘のように、頭が作業モードに切り替わっていることに気づきました。
そして、そのまま1時間、文章を書き進めることができたのです。
正直、最初のハードルを低くするだけで、こんなにスムーズに作業が進むとは思いませんでした。
今回の実践を通して、ズーニンの法則を取り入れると、始めるハードルが下がり、先延ばしで時間を無駄にすることを防げると感じました。
個人的に感じた注意点としては、「4分間続けても、どうしてもやる気になれない作業は潔く中断するべき」だということ。
やる気が出ないのに「4分間手をつけたし、しばらくやらないと……」と続けることを繰り返すと、次に始めるときに「どうせ4分だけといっても、実際はそのあとも嫌なことを長々とやらなきゃいけなくなるんだろうな……」という気持ちが先に湧いてきて、ズーニンの法則が活かせなくなると痛感しました。
4分間頑張ってみてもj無理だなと思ったら、すっぱり諦めてほかのことをするのがよさそうです。
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ズーニンの法則は、「最初の4分間を頑張るだけで、その後の作業がスムーズに進む」というシンプルながら効果的な手法です。
仕事、勉強、家事など、あらゆる場面で応用できます。「やり始めるのが億劫だ……」と感じたら、ぜひ実践してみてください!
※引用の太字は編集部が施した
*1 勉強の知恵袋|最初の4分だけやればOK!「ズーニンの法則」ならやる気は後からついてくる!
*2 マネー現代|結果を出せる人と出せない人の「決定的な差」…できない人でもうまくいく納得の方法
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。