会議室で「素晴らしいアイデアですね!」と言われた瞬間、あなたの心は躍ったはず。
でも次に続いた「ただ、もう少し整理して再提案してもらえますか」のひとことで、その期待は一気に萎んでしまった——。
頭のなかでは完璧な提案ができているのに、いざ話し始めると「あれ、何から説明すればいいんだっけ?」となってしまう。資料をつくっても、なぜか相手の心に刺さらない。
もしかすると、あなたもそんな経験をおもちではないでしょうか。
安心してください。この問題、アイデアの質とはまったく関係ありません。単純に「伝え方の型」を知らないだけです。
じつは、見開き1ページのノートがあれば、その悩みは今日から解決します。頭のなかのモヤモヤしたアイデアを、相手が思わず「それ、やりましょう!」と言いたくなる提案に変える方法をお教えしましょう。
「ピラミッドストラクチャー式・提案ノート」とは
この手法は、マッキンゼーで使われている論理展開の技法「ピラミッドストラクチャー」を段階的に進めていくもの。
ピラミッドストラクチャーとは、結論を一番上に置き、その下に「なぜそう言えるのか?」の理由を並べる構造のことです。
身近な例で言うと
という流れです。
問題は、いきなりフレームワークを使いこなすのは難しいという点。頭のなかは散らかったアイデアでいっぱいなのに、最初から論理的に整理するなんて無理ですよね。
そこで今回は、このピラミッドストラクチャーをノート見開き1ページで整理して完成させていく方法をご紹介します。
これだけで、思考はぐっと整理され、説得力が増すはずです。
では早速見ていきましょう。
具体的な書き方
基本構造:見開き左右の役割分担
「ピラミッドストラクチャー式・提案ノート」の基本構造は以下のとおりです。
📋 基本構造
では次に、この構造を用いた実践例を挙げましょう。
実践例:社内DX推進提案の場合
この提案の主は、すでに「営業部門にAIアシスタントを導入して、提案書づくりを自動化したい」という結論をもっているとします。
問題は、その結論を "どう相手に納得させるかたちに整理するか" です。ここで「ピラミッドストラクチャー式・提案ノート」を使うと、説得の流れがぐっと明確になります。
◎ 左ページ上
発散メモ
根拠や懸念を思いつくまま書き出します。
この時に大切なのは、結論を補強する材料を洗い出すという意識です。
提案資料づくりに毎回3時間以上。営業担当者の残業が増加。AIで定型部分を自動生成できる。他社はすでにAI導入済み。導入コストとROIの試算必要。導入時期は新年度がベスト。研修で1週間あれば定着可能。
◎ 左ページ下
要素摘出
発散メモから重要な要素を拾い上げて羅列します。
提案を後押しする材料をカテゴリごとに整理すると、相手に伝えやすくなります。
- 効率化:提案資料作成時間の短縮
- 働き方改善:残業削減、業務負担軽減
- 競合優位性:他社との差別化、スピード感
- 実現性:ROI試算、研修計画
◎ 右ページ上
ピラミッドストラクチャー
結論を頂点に置き、要素を説得の筋道に変換します。
左ページ下で拾い上げた重要な要素を使って構造化していきます。
【結論】 営業部門にAIアシスタントを導入すべき
【理由1:効率化】
┗提案資料作成時間を半減
┗営業活動に集中可能
【理由2:働き方改善】
┗残業削減
┗モチベーション向上
【理由3:競合優位性】
┗他社導入済み
┗顧客対応スピードが向上
【理由4:実現性】
┗ROI試算済み
┗研修スケジュール想定済み
◎ 右ページ下
文章化
ピラミッドストラクチャーを流れるような文章に仕上げます。
「一番上→下左側→下右側」の要素を順に拾い上げ、調整しながら組み立てていきます。
「営業部門にAIアシスタントを導入することで、提案資料づくりの時間を半減でき、営業活動に集中できます。残業削減により働き方改善も実現し、従業員のモチベーション向上が期待できます。他社がすでに導入を進めている状況をふまえ、顧客対応スピードの向上も見込めます。ROI試算と研修スケジュールも整っており、新年度導入が最適です」
なぜこの方法が効果的なのか
このノート術が機能する理由は、思考の自然な流れに沿った構造だからです。
多くの人は「とりあえず思いついたことを書き出す→重要なポイントを見つける→論理的に組み立てる→相手に伝わるかたちにする」という順番で考えています。この手法は、その自然な流れを見える化したものに過ぎません。
また、見開き1ページという制約があることで「本当に重要な要素だけ」を選び抜く必要が生まれ、結果として相手に刺さる提案になりやすいのです。
運用のポイント
このノート術を効果的に活用するためには、継続的な運用が重要です。運用のポイントをお伝えしておきましょう。
💡 運用のポイント
- その場で整理
アイデアが散らかってしまわないうちに、打合せや雑談メモをすぐにピラミッド化するのがおすすめです。ピラミッド化は「結論と理由の骨格を押さえる」作業なので、 ここさえ残せば思考の流れを再現できるはずです。 - 翌日までに肉づけ
構造にデータや事例を追加することで、そのまま提案に使えるでしょう。この作業と文章化をセットで進めると効率的です。 - ストックして再利用
ノートを貯めておけば「提案の資産」に。過去案を組み合わせ新提案に応用できます。
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「ピラミッドストラクチャー式・提案ノート」は、単なる整理術を超えて「創造的思考と論理的伝達の架け橋」として機能するはずです。
アイデアの質を保ちながら伝達力を高めることで、あなたの提案は必ず相手の心に届くでしょう。
STUDY HACKER 編集部
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