「森保監督のノート術」を仕事に取り入れてみた結果。「メモをとりながら考える」効果が絶大だった

2色のペンで色分けした仕事ノート

FIFAワールドカップカタール2022では、ワールドカップ優勝経験をもつ強豪国のドイツとスペインを日本が破り、世界中のサッカーファンを大いに驚かせました。

そのなかでひときわ注目を集めたのは、森保一監督が試合中に書き込んでいた「森保ノート」と呼ばれるものです。じつはこのノート、使い方次第でビジネスパーソンにも有用なんですよ。

今回は、その世界が注目する「森保ノート」を、ビジネスパーソンが日々気軽に活用できる「仕事ノート」に落とし込んでみました。

「森保ノート」とは

海外でも人気が高い日本の漫画『DEATH NOTE(デスノート)』には、最悪の状況を与えたい人物の名前を書き込むと、それが実現してしまう「デスノート」が登場します。だから世界中のサッカーファンは、森保監督がデスノートを使っているなどと冗談を言っているのだとか。しかし、実際には

特に試合の前半、何分に何があったかなど試合の流れを書いている

そうです。

(引用元:J-CAST テレビウォッチ|森保一監督の「森保ノート」が話題 羽鳥慎一も「デスノート」と絡めて冗談

また、「文春オンライン」の記事(2022年12月7日公開)に載せられた「森保ノート」の写真を見てみると、“日本に不可能はない” といった文字も見てとれます。印象づいたこと、引っかかったこと、生じた思い、考えなど、脳がピン留めしたことを、どんどん書き込んでいくノートなのかもしれません。

ちなみに森保監督は、「文具メーカー『コクヨ』のノートで、試合用はB6サイズ、練習用はA6サイズ」といった具合に使い分けているそうです(カッコ内「J-CAST テレビウォッチ」記事内より)。

メーカーは選べませんが、A6サイズの小さなノートならコンビニでも買えるはず。筆者も手元にあったA6サイズのノートで、森保監督のノート的な「仕事ノート術」に挑戦してみようと思います。

A6サイズのノート

青と赤の色分け

森保一監督はノートを書く際、「ポジティブな要素は青、課題などは赤」といった具合に色分けしながら書いているそうです(カッコ内「J-CAST テレビウォッチ」記事より)。

じつは、世界記憶力グランドマスターの称号をもつ池田義博氏も、メモやノートをとる際には青と赤の2色のみを使うのだとか。同氏は効率性の観点から「どんな色を使うか、などに思考の時間を割かれるのは非常にもったいない」ため、2色に決めているとのこと。

赤は「ポイントとなる部分」に、青は「心理学的に心を落ち着かせてくれて集中力を高めてくれる色」なので、「いつも冷静に集中して思考ができるようにという思いも込めて」使っているそうです。

(カッコ内引用元:幻冬舎plus|頭のいい人のノートは「青」と「赤」のペンだけ使っている) 

このように、同じ色でも色に課す内容は人それぞれ。自分が何に重きを置くかによって変わってくるのかもしれません。いずれにせよ、仕事で使うなら効率よく2色使いがよさそうですね。

ただし、筆者の場合は文字そのものを色分けするのは面倒なので、黒で書いた文字を囲む、下線を引く、印をつけるなどで2色のペンを活用することにしました。使う色と、色のルールは以下のとおりにします。

  • 「ポジティブな要素」や「留意しておきたいこと」=
  • 「課題」や「とても重要なこと」=

こうして仕事やプライベートを過ごすなか、どんどん書き出し……、

筆者が書いた仕事ノート。2色のペンを反映させる前

2色のペンを反映させてみました。

2色のペンで色分けした仕事ノート

研究成果や偉人の言葉、書籍情報に、何かの解釈、ちょっとしたアイデアから、単純な備忘録まで――筆者が書いたノートは、はたから見ると支離滅裂ですが、自分自身にとってはすべて何かしら仕事につながる内容で、合点がいくものばかりです。

なおさら色分けで “その言葉の位置づけ” が簡単に区別でき、見つけやすさもあるので、本人が見ると整理されているようにさえ感じてしまいます。ひとめでザッと把握できるほどの分量しか書けない、このメモ帳サイズも一役買っているのかもしれませんね。

メモをとりながら考える

『考える人のメモの技術』(ダイヤモンド社)の著者で、コクヨ株式会社 ワークスタイルコンサルタントの下地寛也氏が、STUDY HACKERのインタビューで語ったところによれば、

「考える」とは、「情報と情報を組み合わせて、新たな発見をする」こと

なのだそう。でも人間の “忘れっぽさ” が、ときどきそれを邪魔しにやって来ます。たとえばいま、頭のなかにある情報やこの短時間で五感から入手した情報を組み合わせて、“何か” に必要なアイデアを考えているとしましょう。

しかし、私たち人間は「いま、まさに、さまざまな情報を組み合わせて、いいアイデアが生まれようとしています!」という瞬間に、「あれ? さっき何を考えていたんだっけ?」といった失態を演じてしまうこともあるものです。最後のパズルを、いわゆる “いまさっき考えていたこと” を、パチッとはめれば完成だったのに……。

だからこそ下地氏はこう説きます。

さっき考えていたことをいま考えていることと組み合わせると新しいアイデアを思いつけたかもしれません。でも、さっき考えていたことを思い出せなかったり「なんだっけ?」とも思えなかったりすれば、そういったチャンスや可能性をなくしてしまいます。ですから、そんなことにならないよう、「メモをとりながら考える」のです。

とりあえずメモしておくのではなく、現在進行形でメモをとりながら考えるわけです。同氏いわく、

メモをとりながら考えれば、1時間前に考えたこと、30分前に考えていたこと、そしていま考えていること、あらゆる情報を目にしながら考えることができる

とのこと。

(引用元:STUDY HACKER|「ただのメモ魔で終わる人」と「自分らしく考えながらメモをとれる人」の決定的違いとは

ならば森保監督も、サッカー日本代表として最善を尽くすため、アイデア創出のチャンスを逃さないよう注意を払い、熱心に考えているからこそ、試合中にメモをとっているのかもしれません。

また、森保監督は「ハーフタイムでコーチと話し、自分のメモと一致するところは選手に伝えている」とのこと(カッコ内「J-CAST テレビウォッチ」記事内より)。常にリアルタイムで実行できるアイデアを、必死に考えているのですね。

じつは、これが今回「森保ノート」を、日々の「仕事ノート」に落とし込もうと考えた一番の理由です。つまり――

  1. 脳がピン留めした情報・記憶・考えを書き出しながら
  2. 目の前あるいは継続的な物事の、最善を尽くすための方法を考え
  3. 書き出したものをシンプルに仕分け(色分け)て
  4. 周囲(あるいは自分の状況)との調整を図り
  5. リアルタイムでアクションにつなげていく

――といった、とても実践的なノートであるからです。

たとえば筆者が書いたノートのなかで、赤ペンにより目立たせた内容(ハンドグリップ・パソコンマイク・常識を疑う・何通りでも予測する)は、他者が見るとなんだか意味不明かもしれません。しかし、書くことでいくつもの情報が組み合わさり、それぞれが「ひとつの考え」になったのは事実です。

また、自分自身が赤ペンで印をつけた時点で重要な課題だと再認識でき、書き出すことでディテールがハッキリしてきたので、結果としてどれもすぐに実行できました

つまり、考えながらノートに書いたら、リアルタイムでアクションにつなげていけたわけです。

2色のペンで色分けした仕事ノート

これまでの内容をふまえると、「森保ノート」を参考にした「仕事ノート術」の利点は、

  • 「考える」を支えてくれる
  • アイデア創出のチャンスを逃さない
  • 考えのディテールをハッキリさせる
  • 考えをすぐに実行しやすい

ことだと言えるかもしれません。

***
森保監督のノート的な「仕事ノート術」を紹介しました。リアルタイムの実行だけでなく、のちのちノートを開いたとき、アイデアの種になったり、気づきを与えたり、大事なことを思い出させたりもしてくれるはずです。よろしければお試しくださいね。

(参考)
文春オンライン|日本代表・森保一監督「デスノート」に書かれていた“意外な一言”〈カメラマンが激写〉
STUDY HACKER|「ただのメモ魔で終わる人」と「自分らしく考えながらメモをとれる人」の決定的違いとは
J-CAST テレビウォッチ|森保一監督の「森保ノート」が話題 羽鳥慎一も「デスノート」と絡めて冗談
日刊スポーツ|【W杯】海外では「DEATH NOTE」恐怖の的…「森保特製ノート」コクヨが作製検討
幻冬舎plus|頭のいい人のノートは「青」と「赤」のペンだけ使っている

【ライタープロフィール】
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