「もう勉強したくない! 大学生だからって、勉強ばかりはつらいよ……」
「暇があるとはいえ、仕事の勉強なんてしたくないなぁ」
気分が乗らず、なかなか勉強に取りかかれないことは、誰にでもありますよね。
そんなときに試してほしい、11個のテクニックをご紹介します。「勉強したくない」というネガティブな気分を吹き飛ばし、やる気を引き出す助けになれば幸いです。
勉強したくない原因
そもそも、なぜ「勉強したくない」という心理になるのでしょうか? 次のような原因がありそうです。
勉強そのものが嫌い
まず考えられる原因は、「勉強そのものが嫌い」。
仕事や将来のためにしぶしぶ勉強しているなら、やる気になれないのも当然でしょう。「勉強が好きだ!」と胸を張って言える人のほうが少ないかもしれません。
勉強が嫌いなら、好きになる努力をするか、嫌いである事実を受け入れたうえで工夫する必要があります。
勉強の目標や動機がわからない
勉強とは、業務遂行やキャリアアップ、進学など、目的を果たすためにやるのが普通ですよね。なんのために勉強しているのかわからないなら、やる気が出なくて当たり前です。
目標の立て方が不適切な場合も、やる気が出にくくなる可能性があります。
勉強に取りかかるきっかけがない
目標はあっても、なかなか勉強に取りかかれず、ずるずる先延ばしにしてしまうこともありますよね。
人間は、「始める」ことを面倒くさがる生き物です。先延ばしグセを克服するには、このあと紹介する「ギャンブル勉強法」などのテクニックを使ってみてください。
心身のコンディションが悪い
身体の調子が悪い、頭が働かない、疲れがたまっている……などの要因もあるでしょう。勉強に取り組むには、規則正しい生活を送るなど、コンディションを整える必要があります。
あなたは、どの原因に当てはまりますか? 勉強したくない原因がわかったら、具体的な解決法を試してみましょう。
「もう勉強したくない」の解消法
勉強したくないときは、これからご紹介する11の方法を試し、気分を切り替えてみてください。
とにかく始めてみる
まず試してほしいのは「無理やりにでも勉強を始める」という強硬手段です。
脳科学者の中野信子氏いわく、「人間は何かを始めるときに、最もストレスを感じます」。「勉強を始めるのは面倒くさい」と感じるのが自然なのです。
また、脳には「キリがいいところまでやらないと気がすまない」というクセもあるそう。つまり、「始める」という最初の難関さえ乗り越えれば、集中して取り組みやすくなるのです。
始める前は面倒だったけれど、取りかかってみたら意外に没頭できた――勉強に限らず、そんな経験はありませんか?
これは「作業興奮」といいます。行動しているうち、ドーパミンという神経伝達物質が分泌され、やる気が湧いてくるのです。
「とにかく勉強を始める」という方法には、作業興奮を引き出す効果も期待できます。最初は少しつらいかもしれませんが、「1分だけ」「1問だけ」とハードルを下げ、とにかく勉強に取りかかりましょう。
勉強部屋をなくす
勉強部屋や勉強机など、「勉強専用の場所」を決めていないでしょうか? その場所こそ、「勉強したくない」という心理の原因かもしれません。
勉強場所を決めていると、わざわざそこへ向かう手間が発生します。勉強自体の大変さに加え、勉強前に発生する労力も、「面倒くさい」という感情の原因になりうるのです。
図書館など、家の外で勉強すると決めている場合、なおさら面倒でしょう。外出準備や移動などの労力を思うと、勉強がますます面倒になりますね。
私たちは、行動を始めるときに大きなストレスを感じるもの。スムーズに勉強に取りかかるには、「始めるストレス」をなるべく減らすことが大切なのです。
脳科学者の瀧靖之氏が言うように、勉強専用のスペースに向かうまでもなく、思い立ったらすぐ勉強できるようにしましょう。たとえば……
- 勉強道具や本棚をリビングに置く
- テキストを出しっぱなしにしておく
- リビングやキッチンなど、楽な場所でやる
こうやって、楽に勉強を始められる環境を整えておくと、「面倒くさい」という感覚が弱まります。ちょっと暇ができたとき、サッと勉強に取りかかりやすいですよ。
ギャンブル勉強法
やる気を手軽に引き出せるテクニックが、精神科医のゆうきゆう氏が提唱する「ギャンブル勉強法」です。
「負けたら勉強を始める」と心のなかで宣言し、ギャンブルを行ないます。ギャンブルといっても、身近な道具を使った簡単なものです。 たとえば……
- コイントスで【裏】が出るか【表】が出るか
- サイコロで【奇数】が出るか【偶数】が出るか
- 音楽配信アプリのランダム再生で、流れたのが【邦楽】か【洋楽】か
結果を予想し、ギャンブルに挑戦しましょう。たったこれだけで、驚くほど簡単に「勉強モード」のマインドに切り替わります。
なぜ、これほど効果的なのでしょう? ゆうき氏によると、ギャンブルの結果が、勉強に取りかかる「理由づけ」をしてくれるのだとか。
「半年後の試験」「10年後のキャリア」など、遠い未来のために行動するのは難しいですよね。しかし、「いまギャンブルに負けてしまったから」という現在の理由なら、行動を起こしやすいのです。
ちなみに、ギャンブルで勝ってしまったら、勉強を始めなくてOK。数分後くらいには、同じギャンブルに挑戦しましょう。
レンジ法
目標設定も、勉強への意欲を左右します。目標は高ければいいわけではありません。
あまりに高すぎると、達成を難しく感じ、挫折してしまうかもしれません。目標が低すぎても、自分の成長を感じにくいでしょう。
目標設定の際は、脳科学者の澤口俊之氏がすすめる「レンジ法」を使ってみてください。「問題集を1日1~3ページ進める」のように、目標の上限と下限を設定するのです。
- ストレッチ目標:頑張ればクリアできそうな目標
- ミニマム目標:余裕でクリアできそうな目標
このふたつを設定してみてください。挫折のリスクを減らしつつも、挑戦する意欲をキープできます。
報酬を意識する
澤口氏によると、人間は「報酬への期待」を感じたときにやる気を出すのだそう。金銭はもちろん、充実感や周囲の評価など、「もらえたら嬉しい」と思うならなんでも「報酬」です。
- 友だちにほめてもらえそう
- 年収がアップしそう
- 仕事の幅が広がりそう
- 自信がもてそう
こんなふうに、「勉強を頑張ったら、どんないいことがあるかな?」と考えてみましょう。自然と意欲が湧いてくるはずです。
「自分へのごほうび」を用意するのもいいですね。
- 10問解き終わるごとにチョコレートを食べられる
- ノルマをクリアできたらゲームで遊んでいい
こんなごほうびを決めておくと「報酬への期待」が生まれ、行動の動機づけができます。
英語パーソナルトレーニングジム「ENGLISH COMPANY」が導入している「行動科学マネジメント®」の日本における第一人者・石田淳氏によると、報酬による動機づけには「グラフ」も使えるそう。自分の行動を数値化してグラフに記録し、行動データの動きを眺めることが「ごほうび」になるとのことです。
「自分はこんなに頑張ったんだ!」「このまま数字を伸ばすぞ!」と思えそうですね。
- 解いた問題
- 得点
- 覚えた単語
などを数字やグラフで記録し、振り返ることを習慣にしてみましょう。
好きな単元からやる
どうしても気の進まない単元があるなら、飛ばしてしまうのも手です。「テキストは前から順番にやらなきゃ」とこだわらず、興味がもてる単元から学んでいくほうが、楽しく続けられるはず。
前出の瀧氏によると、脳には「ある能力が伸びると、それにともなってほかの能力も一緒に伸びる」性質があるそう。
たとえば楽器の演奏を練習すると、指が動きやすくなりますよね。すると、裁縫や工作など、楽器演奏以外の技術も向上するかもしれません。
勉強でも同じです。単元や分野をひとつでも究めれば、知識・能力の幅が広がり、ほかの単元も理解しやすくなる可能性があります。
「好きこそものの上手なれ」という言葉がありますね。あなたが「好き!」と感じるものから学び、「上手」の範囲を増やしていきましょう。
頑張っている人をまねる
私たちの脳には、他人の動作を反映する「ミラーニューロン」という神経細胞があります。これを活用してみましょう。
脳科学者の篠原菊紀氏は、こう語っています。
あなたの近くに憧れの上司や仕事のできる先輩がいるなら、その人の近くで行動を共にしたり、「あの人だったらこんなふうに振る舞うだろう」と想定して真似たりすることで、その人と同じようなパフォーマンスを習得できるようになるのです。
(引用元:プレジデントオンライン|鏡を見るとポジティブになる脳科学の根拠 太字による強調は編集部が施した)
「勉強をバリバリ頑張っている自分」になりたいなら、勉強をバリバリ頑張っている友人や同僚、上司、有名人などを見習ってみましょう。その様子をミラーニューロンがまねてくれるはずです。
前出の中野氏によると、文章を読むだけでもミラーニューロンが活性化するそう。サクセスストーリーの小説や、資格試験の合格体験記を読むだけでも、やる気が出そうですね。
身体を動かす
脳神経外科医の築山節氏によれば、歩く、手を使う、しゃべるといった「単純で大雑把な行為」で、勉強へのやる気を高められるそう。「運動系」という脳の機能を十分に使うことで、思考やモチベーションが活性化しやすくなるとのこと。
具体的には、
- ウォーキング
- 部屋の片づけ
- 短い会話
- 音読 など
複雑なことはせず、あくまで単純な行為で脳をウォーミングアップしましょう。いきなり難しいことに挑戦し失敗すると、ネガティブな気持ちになってしまい、やる気は湧いてこないからです。
ウォーキングなら「家の近所を1ブロックだけ」、片づけなら「机の上だけ」くらいに留めてください。
10〜15分で休憩する
せっかく出たやる気も、ずっと続くわけではありません。前出の篠原氏は、こう語ります。
計算課題などのタスクを行っているときの脳活動を調べると、集中力は開始15~20秒ほどでピークとなり、7分もすれば、ダレてくる。そこからはなだらかに下がり、10分、15分ぐらいで切れてしまう。
(引用元:NIKKEI STYLE|脳を鍛えるコツ3つ 脳トレは筋トレより早く効果あり)
やる気を維持するには、10~15分ごとの休憩がいいのです。
心身を手軽にリフレッシュするなら、深呼吸。篠原氏によれば、副交感神経が優位になって落ち着き、集中しやすくなるそう。
冷たい水を飲んだり、首を冷やしたりするのもおすすめ。脳がクールダウンし、思考がクリアになります。
「もう勉強したくない!」と嫌になってしまったら、こうやって心身を休ませ、やる気を回復させましょう。
生活習慣を見直す
「健全な精神は健全な肉体に宿る」と言われるように、やる気を出すには、身体のコンディションを保つことも大切。睡眠不足だったりお腹が空いたりしていれば、勉強する元気が湧かないのも当然です。
「神楽坂こころのクリニック」は、無気力から抜け出す方法として、次のような生活習慣をすすめています。
- 1日3食、だいたい決まった時間にとる
- いろいろな食材をまんべんなく食べる
- 便意がなくても毎朝、便座に座る
- 1日1回は外に出て、少し歩く
- 特に午前中は日光に当たる
- 22時頃までに布団に入る
やる気が出ない日が続くなら、生活習慣を見直してみましょう。
「勉強したくないのが当たり前」と割りきる
無理にやる気を出そうとせず、「勉強したくないのが当たり前」と割りきってしまうのも手です。勉強を楽しもう、好きになろうという考えを捨て、「やらなければならない事務作業」として処理しましょう。
司法書士、社会保険労務士など多くの国家資格をもつ並木秀陸氏の著書には、こうあります。
勉強が好きすぎる人は落ちる、
勉強が嫌いな人は受かる
(引用元:並木秀陸(2022),『はぶく勉強法 20万人が証明 インプットを8割削って一発合格』, 秀和システム.)
勉強嫌いな人は、最小限の労力で勉強を済ませようとするため、効率よく勉強をこなす可能性が高いからです。
ある資格をとらないといけないとき、 勉強嫌いな人はこう思うでしょう。「最小の労力で合格するには、どうすればいいかな?」
「勉強したくない」は、「効率のいい勉強の仕方を考えよう」につながるのです。
反対に、勉強好きの人は、長時間の勉強が苦になりません。試験に出ないようなことまで覚えようとするので、勉強の効率が悪くなる可能性があります。
「勉強したくない」という気持ちを受け入れることで、得られる成果もあるのですね。
***
「勉強したくない」と感じるときは、ご紹介した方法で心や身体を奮い立たせ、やる気を引き出してみましょう。
(参考)
プレジデントオンライン|脳が目覚める3ステップ講座
マイナビニュース|人間は、そもそもなまけもの? 「面倒くさい」が消え「やる気」が出る方法/精神科医・西多昌規
瀧靖之(2017),『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える「脳を本気」にさせる究極の勉強法』, 文響社.
ゆうきゆう(2006),『ゆうき式逆転発想勉強術 「勉強したくない!」を活用する』, スリーエーネットワーク.
PHPオンライン衆知|脳科学から見えてきた!やる気を高める4つの方法
ダイヤモンド・オンライン|成果が出ない人もヤル気にさせる「ごほうび」の威力とは
プレジデントオンライン|鏡を見るとポジティブになる脳科学の根拠
プレジデントオンライン|脳が目覚める3ステップ講座
プレジデントオンライン|【1】「脳とやる気」1秒で勉強意欲に火がつく法
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並木秀陸(2022),『はぶく勉強法 20万人が証明 インプットを8割削って一発合格』, 秀和システム.
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。