“職場に苦手な相手がいる人”のためのコミュニケーション術|たった3つの質問からはじめる人間関係の作り方

悩んでいる様子の座った女性

「この人とは、どうしてもわかり合えない……」

チーム会議から戻る足取りが重くなるあなた。職場で苦手な人との関係に悩む毎日。なにげないひとことから始まったすれ違いが、いつしか修復できないほどの溝になり、仕事での人間関係に支障が出始めているのを感じます。

上司かもしれません。同僚かもしれません。毎日顔を合わせる相手だからこそ、この状況をなんとかしなければ……と不安が募ります。「早く帰りたい」「別の部署に異動できないかな」。そんな思いが頭をよぎることも。

じつは、職場の人間関係の改善に悩むビジネスパーソンは決して少なくありません。むしろ、仕事を続けていく中で誰もが一度は経験する悩みかもしれません。

では、苦手な人とのコミュニケーションを改善し、ストレスなく働ける関係性を築くには、どうすればいいのでしょうか?

その答えは、「共感を生む質問力」にあります。

本記事では、職場で苦手な人との距離感を適切にコントロールしながら、円滑な人間関係を築くための具体的な質問術をお伝えしていきます。明日からすぐに実践できる職場での雑談のコツと、相手との関係を良好に保つためのポイントをご紹介します。

共感を生む質問の基本原則〜相手の関心領域を探る〜

職場で苦手な人とコミュニケーションをとるとき、共感を生む質問が重要です。会話のきっかけとして「質問」は欠かせませんが、形式的な質問ではかえって関係がぎこちなくなってしまうことも。大切なのは、相手の関心領域にフォーカスした質問をすることです。

社員教育や研修などを手がける株式会社ジェイック取締役の近藤浩充氏は次のように話します。

私たちにとって、一番の関心事は常に「自分自身」です。従って、自分が興味・関心あるテーマを誰かに話す時に私たちは心地よさを感じ、その話題を振ってくれて熱心に話を聴いてくれた相手には好感を覚えるものです。 *1

筆者自身も、興味のある話題が出ると心を開きやすく、前向きな気持ちでコミュニケーションをとれた経験が何度もあります。そのようにして関わった相手には安心感も覚えたものです。

仕事の人間関係を改善するコツは意外とシンプル。相手が興味を持っていることについて、丁寧に掘り下げていく質問をすることです。たとえば、相手が前向きに取り組んでいるプロジェクトについて「どんな点にやりがいを感じているんですか?」と質問してみる。このように相手の関心事に焦点を当てた質問から、自然と会話が広がり、共感がうまれます。それが、職場での良好な人間関係づくりにつながっていくのです。

談笑するビジネスパーソンたち

共感を生む3つの質問術

よりよい職場の人間関係づくりに向けて、実践的な質問術をご紹介します。株式会社ジェイックの近藤浩充氏が指摘するように、相手の関心事に焦点を当てた質問は、コミュニケーションを円滑にする効果があります。以下の3つの質問アプローチは、その具体的な実践方法です。

経験エピソードを引き出す

苦手な同僚や上司とのコミュニケーションを改善するには、まず相手の経験を引き出す質問から始めるのが効果的です。過去の経験を語ってもらうことで、相手の価値観や考え方への理解が深まり、自然な共感が生まれやすくなります。

たとえば、次のような質問をしてみましょう。

  • あなたが得意な◯◯のスキルを私も勉強したいと思っているんです。よかったらどうやって勉強したのか聞かせてもらえませんか?
  • スポーツが好きと聞きました。学生時代は運動系の部活に入っていたんですか?
  • この前出張で◯◯に行っていましたよね。おいしいものは食べられましたか?

経験を話してもらう雑談を重ねていくうちに、相手もあなたに対して心を開きやすくなります。これで仕事におけるコミュニケーションもとりやすくなるはずです。

会話をするふたりのビジネスパーソン

相手の価値観を感じる質問をする

株式会社ジェイックの近藤浩充氏が指摘するように、人は自分の関心事について話すときに最も心を開きます。相手の大切にしている価値観や目標、ライフスタイルについて質問することで、相手について深く理解できるようになるでしょう。相手にも「この人は自分の価値観をわかってくれている」と感じてもらえれば、信頼関係構築につながります。

たとえば、次のような質問をしてみましょう。

  • 仕事が落ち着いたらやりたいことや行きたいところはありますか?
  • 大変なプロジェクトを担当していたと聞きました。つらいときはなにを頼りに乗り越えたんですか?
  • 今年度も残りわずかですね。この一年で大きな変化や出来事はありましたか?

このように、相手の価値観がうかがえる質問を雑談のなかに織り交ぜてみるのです。相手をよく知るきっかけとなり、相手とのコミュニケーションのハードルも下がるでしょう。

コーヒーを片手に雑談をするふたりのビジネスパーソン

将来の展望を聞く

相手のキャリアや成長への関心を示す質問は、特に上司と部下の関係改善に効果的です。将来に関する質問を通じて、相手の可能性を認め、期待している気持ちを伝えることができます。

たとえば、次のような質問をしてみましょう。

  • いまのプロジェクトの次はどんなプロジェクトに挑戦してみたい?
  • これから身につけていきたいスキルはある?
  • 5年後、10年後、「こうなっていたらいいな」と思う理想のイメージはある?

これらの質問を実践する際の重要なポイントは、相手に寄り添い、じっくりと話を聴く姿勢です。形式的な質問で終わらせるのではなく、相手の答えから新たな質問を見出し、対話を深めていくことで、自然な共感が生まれていきます。

「わかります」は逆効果?本当の共感を生むリアクション術

「そうなんですよね、私もそう思います!」「わかります、私も同じ経験がありました!」
相手の話を聞いたとき、共感を示そうとしてこのように反応していませんか? じつはこの反応には大きな落とし穴があります。

一般社団法人日本メンタルアップ支援機構代表理事の大野萌子氏は、このような自分主導の反応を「同感」と定義し、共感を示したつもりが逆効果になる可能性を指摘します。*2

「わかります」が危険な理由

「私も同じです」「私もそう思います」という反応は、私たちが相手に共感を示そうとしてよく使う言葉です。しかし大野氏によれば、これは自分の経験や感情を中心に置いた「同感」にすぎず、相手の経験や感情を自分のものに置き換えてしまう危険性をはらんでいます。さらに「あなたの気持ちは私が全部わかっている」というメッセージになり、相手を依存させかねない、と付け加えます。

では、本当の意味で相手の気持ちに寄り添うには、どうすればよいのでしょうか。

あたたかな雰囲気の場でハグをするビジネスパーソン

相手に寄り添う「共感」の実践法

たとえば、プロジェクトの困難に直面している同僚が悩みを話してくれたとき。「わかります。私も先週似たような経験をして……」と自分の話を始めるのではなく、「そんな状況で不安を感じられたんですね」と、相手の経験に焦点を当てて応答する。これこそが相手の感情に寄り添う本当の「共感」なのです。

職場でよりよい対話をするためには、「あなたはそう感じたんですね」「そのような状況で戸惑われたのですね」といった表現を心がけましょう。

そして「それについて、あなたはどのように考えていますか?」と、相手の考えを深く聞いていく。このように、相手の経験や感情に焦点を当て、それを理解しようとする姿勢が、職場での信頼関係構築につながります。特に苦手な相手との関係改善において、この姿勢は重要な役割を果たすのです。

***
苦手な相手との関係改善に、特別なスキルは必要ありません。相手の関心に寄り添う質問と、真摯に耳を傾ける共感的な応答。このふたつの組み合わせから、よりよい職場の人間関係は始まります。明日の一歩を踏み出すヒントとなれば幸いです。

※引用部分の太字は筆者が施した

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。

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