「また、仕事でイライラが出てしまった……」
締切直前のミーティングで、自分の意見が通らず、思わず感情的な口調になってしまう。「もっと冷静に話せばよかった」と後悔する日々。職場での感情的な反応が増えていることに、最近は不安を感じている。
じつは、このイライラは特別なことではありません。仕事中のストレスをコントロールできない、感情的な対応を後悔する―。そんな経験は誰にでもあるものです。
では、このイライラに、どう向き合えばいいのでしょうか?
職場でのイライラは、あなたの仕事の進め方を見直すきっかけになるかもしれません。メンタルヘルスの観点から適切な対処法を見つけることで、それは仕事の質を上げるヒントにもなるのです。
本記事では、仕事でイライラを感じやすい人向けに、ストレスとうまく付き合いながら成長につなげる具体的な方法をご紹介します。
感情の「本当の理由」を見つける
職場でイライラしたとき、あなたはその感情をどうコントロールしていますか?
たとえばこんな場面を考えてみましょう。急な仕様変更の連絡を受けて、思わずきつい口調で「なんで今更こんな変更が?」と反応してしまう。そして後で「感情的になってしまった」と後悔する。
じつは、心理学では私たちの感情にはふたつの層があると考えられています。表面に現れる「怒り」や「イライラ」といった感情は「二次感情」と呼ばれ、その裏には別の感情が隠れているのです。この裏にある本来の感情のことを「一次感情」といいます。*1
先ほどの例で感情を分析してみましょう。表面的な二次感情は「怒り」として現れていますが、その裏にはじつは「不安」や「焦り」という一次感情が潜んでいます。
「このスケジュールで本当に間に合うのか?」
「これまでの作業が無駄になってしまうのでは?」
つまり、職場でのイライラの原因を探っていくと、あなたが大切にしている「期限を守りたい」という責任感や、「質の高い仕事をしたい」というプロ意識が見えてきます。
このように、感情を分析して二次感情の裏にある一次感情を理解することは、効果的な感情コントロールの第一歩となります。なぜなら、それはあなたの仕事への向き合い方や価値観を映し出す「情報」となるからです。
では、この「情報」をどのようにストレスマネジメントや仕事の質の向上につなげられるのでしょうか?
感情を「早期警戒システム」として活用する
前述のように、職場での感情的な反応には、必ずその裏に隠れた一次感情があります。このメカニズムを理解し、活用することで、効果的なストレスマネジメントが可能になります。
具体的な例で見てみましょう。
ある営業マネージャーは、部下の報告を聞くたびにイライラして声を荒げてしまうことに悩んでいました。感情分析をしてみると、その怒り(二次感情)の裏には、「チームの目標が達成できないかもしれない」という不安や、「自分のマネジメントが間違っているのでは」という自信のなさ(一次感情)が隠れていることがわかりました。
この気づきは、職場での人間関係を改善する重要なヒントとなります。なぜなら、イライラや怒りが表面化する前に、その原因となる一次感情に気づけるようになるからです。
これは、まるで心の「早期警戒システム」のようなものです。
たとえば、
- 締切が迫るプロジェクトで、進捗報告を受けるとき
- 重要な意思決定を迫られる場面
- チーム内での意見の食い違いが生じたとき
このような状況で、自分の中に不安や焦りといった一次感情が芽生えていることに気づけば、それが怒りやイライラという形で表出する前に、適切な対処が可能になります。
このように、感情をコントロールするということは、単に「イライラを抑える」ことではありません。仕事において重要なのは、一次感情を早期に察知し、建設的な対話や行動につなげていくことなのです。
イライラを「キャリアの道しるべ」に変える
職場でのストレスやイライラは、じつはあなたのキャリアについて重要な「情報」を送っているかもしれません。
仕事で日々の細かな作業に対して頻繁にイライラを感じるとします。この場合、表面的な二次感情としての「イライラ」の裏には、「もっと充実した仕事がしたい」「違う形で成長したい」といった一次感情が隠れています。この一次感情こそが、あなたのキャリアを考える上で重要な「情報」となるのです。
たとえば、業務効率が上がらないことへのストレスは、単にその作業が「面倒」なだけでなく、「より本質的な仕事に時間を使いたい」というメッセージかもしれません。こうした「情報」を読み解くことで、職場でのイライラ改善に向けて、具体的な行動が見えてきます。
まず、現状の業務を分析し、効率化できる部分を見つけ出す。作業のテンプレート化や、ツールの活用でスキルアップの時間を生み出せないか。その時間で、自分が本当にやりたい仕事のスキルを磨く機会を作れないか。
そして、具体的な業務改善の成果を出しながら、上司とのミーティングなどで、今後のキャリア計画を相談していく。「ただストレスを感じる」から「情報として活用する」への転換が、ここでのポイントです。
このように、職場でのイライラは決してネガティブなものだけではありません。その感情を「情報」として読み解き、具体的な行動計画を立てることで、一歩ずつキャリアを前に進めていくことができるのです。
イライラから見えるあなたの「本当の気持ち」を活かす
仕事でのイライラは、決して「困った感情」ではありません。その裏にある一次感情は、あなたの「本当の気持ち」であり、職場でのストレス解消や、よりよい仕事への重要な「情報」なのです。
本記事で見てきたように、この「本当の気持ち」という情報は2つの方法で活用できます。
ひとつは日々の業務における「早期警戒システム」として。イライラが表面化する前に、自分の本当の気持ちに気づき、適切な対処ができれば、職場の人間関係改善につながります。
もうひとつは「キャリアの道しるべ」として。本当の気持ちである一次感情から読み取れるメッセージは、あなたの目指したい仕事のヒントになるかもしれません。
仕事でイライラを感じたときは、その裏にある本当の気持ちは何か、少し立ち止まって考えてみましょう。「なぜ」そう感じるのか。その問いかけの習慣が、職場でのストレスに対処するための第一歩となります。
職場での感情的な反応は、誰もが経験するものです。でも、それを「困った感情」と片づけるのではなく、その裏にある本当の気持ちを理解し活かすことで、よりよい職場づくりや仕事の質の向上につながるはずです。
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イライラの裏にある「本当の気持ち」は、あなたの仕事やキャリアをよくするための大切な情報です。その気持ちに早めに気づき、適切に対処することで、よりよい仕事の進め方が見えてくるはずです。ぜひ明日から、あなたの感じる「イライラ」を、成長のためのヒントとして活用してみてください。
※引用の太字は編集部が施した
*1 カウンセリングサービス心理学講座|怒りは二次感情!怒りの奥にある本当の気持ちとは?
*2 メンタルケア研究室|真実の感情を探る!偽りの感情に振り回されていた不快感を解決
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。