なぜあの人は会話があんなに上手いのか。コミュ力強者に学ぶ「会話IQ」の高め方

会話が弾まずチームに溶け込めないと悩むビジネスパーソン

資料の完成度も、プレゼンのロジックも、どんな業務も問題がないはず。コミュニケーションだってとっている。でも、なぜだか会話が弾まず、チームにもうまく溶け込めていない気がする――こうした悩みは、論理的・認知的な知能の「IQ」だけでは解決できません。

心理カウンセラーの五百田達成氏は、コミュニケーション能力が高い人の頭のよさを「会話IQ」と定義しています。*1

今回は、ビジネスシーンにおける会話IQを高めるヒントとして、頭がよくて会話が上手な「話しかけやすい人」の特徴を3つご紹介します。

特徴1. 相手の心を推測しながら質問する

相手の話に耳を傾けながらセルフトークを実践するビジネスパーソン

話しても会話が広がらない人は、「質問力」に問題があるのかもしれません。話しやすい人は相手の状況を考えながら整理し、的確な質問を重ねていく傾向があります。

もしかしたら、こんな質問をしていませんか?

  • <話の流れを汲まずに、自分がしたい質問をする>
    「いま〇〇の勉強をしていて、数年後にはその職種で挑戦するつもり」
    「それはすごいね! そう言えば◇◇って知ってる?」

  • <自分の話をしたいから、とりあえず質問をする>
    「このまえ京都に行かれたんですよね? いいですね~。どうでした? 京都。じつは私も北海道旅行を計画しているんですよ。私の学生時代の友人がね……」

もちろん、いずれも悪意があるわけではありません。しかし、相手の状況や気持ちを察知できていないため、一方向になりやすく、会話が広がらないのです。

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一方で、会話能力の高い人は、相手の心を推測しながら質問を選びます

一般社団法人コーチング心理学協会・代表理事の徳吉陽河氏は、質問力が高い人について、“表情や姿勢・トーン・会話の流れ・文脈などから相手の状態や関心事、悩みなどを推測できる” と話します。だからこそ、「こうやったら、こういう結果になってしまうのでは」と予期する能力も高いそうです。*2

とすれば質問力が高い人は、相手が「実務スキルをあげるために何かの勉強をしている」と話せば、「仕事と勉強の両立は大変なのではないか」「将来転職も考えているのかも」と、まず相手の背景や意図を考えるでしょう。そして、こう伝えるかもしれません。

 
 
「仕事をしながら勉強を続けるのは大変そうですね。どんな目標を立てて取り組んでいるんですか?」

これなら相手は、意気揚々と話し始めてくれるはずです。

徳吉氏は質問力を高める練習として、自分自身に質問をする「セルフトーク」の実践を提案しています。「自分はどう感じたの?」などとセルフトークで自分と向き合い、答えを導き出したり漠然とした悩みを整理したりしながら、他者への質問力も向上させるそうです。*2

このセルフトークを日々実践しながら、会話のなかでも取り入れてみましょう。相手の言葉に相づちを打ちながら、こんなふうにセルフトークしてみるのです。

 
 
  • 自分だったらどんな言葉を返されたい?
  • この人と自分の関心事の共通点は何かな?

会話の途中でメタ認知を働かせる高度な試みですが、これにより思考のノイズ(自分が話したいことなど)が整理され、相手が本当に求めている言葉を自然に選べるようになるはずです。

ぜひ「自分への問いかけ」を、会話を豊かにする新しい習慣にしてみてください。

特徴2. 相手を安心させる優しい戦略家

やさしい表情で後輩の話を聞くビジネスパーソン

「相手が心を開いてくれない」と感じる場合、もしかしたら "この人に話したら安全だ" という信頼が不十分である可能性があります。じつは「話を盛り上げる」以上に、相手が安心して話せる空間をつくることが重要なのです。

これは、心理学で「ホールディングスペース」と呼ばれるものです。公認結婚家族療法士(LMFT)のサラ・エプスタイン氏によれば、ホールディングスペースには以下の要素があります。*3

 
 
  • スマートフォンを触るなどほかの作業をやめ、会話に意識を向けて集中する

  • 相手の意見を否定したり評価したりせず、受け入れる姿勢を示し、相手が安心して話せる環境をつくる

  • 会話を自分中心にせず、話を遮らずにしっかりと聞く

  • 言葉だけでなく、声や表情などから相手の気持ちや立場を想像し、理解しようとする姿勢を示す

こうした関わり方は、単なる「共感や受容」に見えるかもしれません。でもじつは、これも知性のあらわれです。

感情を理解し適切に扱う「心の知能指数(EQ:Emotional Intelligence Quotient)」と、人と状況を読み、関係をうまく動かす「社会的知性(SQ:Social Intelligence)」にあたります。

心理療法士で世界的ベストセラー作家でもあるエイミー・モーリン氏は、社会的知性の兆候をこう表現します。*4

  • 効果的な傾聴:相手が言っていることに真摯に耳を傾ける
  • 会話力:話す相手をよく洞察したうえでの機転が利いた会話
  • 印象管理:誠実さを保ちつつ、相手に思慮深い印象を与える考慮
  • 非論争的な受容:相手の意見を否定せず耳を傾ける

つまり、"相手の感情や意図を理解・考慮できる知性" が安心して話せる空間をつくり、いい関係性に基づいた会話をかたちづくるのです。

「相手を安心させる優しい戦略家」として、相手に意識を向ける姿勢を心がけてみてください。

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特徴3. 共感的ロジックがうまい

頭がよくて会話能力の高い人は、論理だけに偏らず共感することも忘れていません。たとえそれが至極真っ当な正論でも、相手が飲み込みやすいかたちに翻訳して届ける知性があると言えるでしょう。

つまり、冷静な分析だけでなく、相手の立場に寄り添い話を構成すること――いわば「共感的ロジック」がうまいのです。

たとえば、同僚が仕事の悩みを打ち明けたとき、「それなら優先順位を変えればいい」「時間配分を見直せば解決するよ」とだけ伝えても、相手は「気持ちをわかってくれない……」と思い、それ以降は敬遠されてしまうかもしれません。

前出の五百田氏はこう説明します。*1

相手に寄り添い、「そうだよね、わかるよ」という気持ちを表せてはじめて、相手との心理的距離を縮めることができるのです。

まずは "この人はわかってくれる" と信頼を得たうえで、適切に話を進めることが大切です。「話しやすい人」は、この論理と共感のバランスをとるのが上手なのです。

では具体的に、どうすればよいのでしょう?

五百田氏は「『自分が話したいこと』を考える割合をぐっと減らし、相手の様子や話の内容に脳のリソースを集中させてみてください」と伝えています。*1

頭のなかで「自分の体験を話す」「アドバイスをする」ための準備をやめて、相手に意識を向けるのです。たとえば後輩が「初めての案件で不安を抱えている」と相談しにきたとしましょう。五百田氏のアドバイスを参考にすれば、この差が見えてくるはずです。

  

<NG>
「とにかく経験を積めば慣れるよ。自分も最初は〜~(体験談)」

<OK>
「それは不安になるよね。慣れない案件だと余計にそう感じるのはわかるよ。どの部分が一番気になってる?」

このように共感の言葉が示されれば、相手は心の距離を縮め、そのあとの論理的な説明もスムーズに受け止めるはずです。

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***

仕事は他者との共同作業です。だからこそ論理的思考だけでなく、相手の視点で考える力も求められます。ぜひ今日からでも、"優しい知性" を意識してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q.会話IQとは何ですか?

A.心理カウンセラーの五百田達成氏が定義した概念で、コミュニケーション能力の高い人が持つ "頭のよさ" を指します。IQ(論理的・認知的な知能)だけでは解決できない対人関係の課題に対し、「相手ありきの姿勢をもつこと」「論理と共感を兼ね備えること」など、会話における総合的な知性のことです。

Q.話しかけやすい人になるためにまず何をすればいいですか?

A.まずは「セルフトーク」を実践してみましょう。会話中に「自分だったらどう返されたい?」「相手の関心事と自分の共通点は?」と自分に問いかけることで思考のノイズが整理され、相手が求めている言葉を自然に選べるようになります。

Q.ホールディングスペースとは何ですか?

A.心理学で使われる概念で、相手が安心して話せる空間をつくることを意味します。具体的には、会話に集中する・相手の意見を否定しない・話を遮らずに聞く・相手の気持ちや立場を想像するといった関わり方のことです。

Q.共感的ロジックとはどういう意味ですか?

A.論理的に正しいことをただ伝えるのではなく、まず相手の気持ちに寄り添い、共感を示したうえで論理的な説明を届ける会話の技術です。「そうだよね、わかるよ」と心理的距離を縮めてから本題に入ることで、相手がスムーズに内容を受け止められるようになります。

Q.EQとSQの違いは何ですか?

A.EQ(心の知能指数)は自分や他者の感情を理解し適切に扱う能力を指し、SQ(社会的知性)は人間関係や状況を読み、関係をうまく動かす能力を指します。EQが「感情を理解する力」だとすれば、SQは「その理解を対人場面で実際に活かす力」と言えます。どちらも話しかけやすい人に不可欠な知性です。

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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