昨今、多くのメディアで「自己肯定感」の重要性について見聞きします。ただ、その重要性を理解しても、自己肯定感を高める具体的な方法を知る必要があるでしょう。
そこでアドバイスをお願いしたのは、著書『鋼の自己肯定感』(かんき出版)が注目を集める宮崎直子(みやざき・なおこ)さん。自己肯定感を高めるための、「言葉のワーク」の基本を教えてもらいました。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹
まずは自分の自己肯定感の状態を知る
「自己肯定感」を高めるためには、いまの自分の自己肯定感がどういう状態にあるのかを知ることから始めましょう。そのための「自己肯定感バロメーター」を紹介します。これは、次のような基準で自分の自己肯定感を10点満点で自己評価するものです。
【自己肯定感バロメーター】
- 0点:自分のことが24時間365日、とにかく大嫌いという状態
- 5点:自分のことを好きなときもあれば嫌いなときもある。自分のなかで好きな部分もあれば嫌いな部分もある。そして、その割合がほぼ五分五分の状態
- 10点:自分のことが24時間365日、無条件に大好きという状態
自己肯定感が5点という状態は、「自分のことを好きなときと嫌いなとき」、あるいは「自分のなかで好きな部分と嫌いな部分」の割合がだいたい五分五分であるときですから、その割合が7:3なら7点になります。
みなさんの結果はどうでしたか? ただ、もし現時点での自己肯定感が低かったとしても心配する必要はありません。なぜなら、自己肯定感はいつからでも高めることができて、かつ7、8点くらいにまで上げることができれば決して下がることはないものだからです。
自己肯定感とは、「ありのままの自分を無条件に受け入れて愛すること」。「無条件」なのですから、一度上げることができれば、何があろうとも下がることはないということです(『自己肯定感を「上げたい」のに「上げられない」人は、“こんな勘違い” をしている。』参照)。
自己肯定感を左右する、言葉、思考、行動、感情
自己肯定感バロメーターによって自分の自己肯定感の現在地を知ることができたら、次に「言葉、思考、行動、感情」の関係を理解しましょう。これら4つは、言葉は思考に、思考は行動に、行動は感情に……といった具合に、互いに影響を与えながら自己肯定感を左右します。
言葉が思考に与える影響の例として、ある実験を紹介しましょう。その実験は、数学の能力が同程度である複数のアジア人女性をふたつのグループに分けて数学のテストを受けてもらうもので、グループAにはテストの前に性別を記入してもらい、グループBには人種を記入してもらいました。
すると、グループAよりグループBの人たちのほうがはるかに好成績を残したのです。これこそが、言葉が思考に影響を与えたことの表れです。世界には、「女性は男性より数学が苦手」「アジア人は数学が得意」という数学に関するステレオタイプがあります。
そのため、グループAの人たちは「女性」だと記入したことで「私は女性だから数学が苦手だ」という思考に、グループBの人たちは「アジア人」だと記入したことで「私はアジア人だから数学が得意」という思考になり、それがテスト結果を左右したと考えられます。
このように、言葉、思考、行動、感情は互いに影響を与えており、かつ自己肯定感を左右するというのが私の考えです。そのため、自己肯定感を高めるための具体的なワークは、「言葉のワーク」「思考のワーク」のように、それらの要素をベースとしたものとなります。
自分に向かって「私は自分が大好きです」と言うだけ
ここではスペースに限りがあるため、「言葉のワーク」のうちで最も基本的なものを紹介しましょう。自分に向かって朝と晩に決まった言葉を言うだけのワークですから、自己肯定感を高めるワークのなかで一番取り組みやすいものです。
その言葉とは、「私は自分が大好きです」というもの。鏡の前でにっこりと笑いながら言うと、さらに効果が上がります。少なくとも3週間は続けてください。習慣を定着させるには少なくとも3週間が必要だとされるからです。
ただし、冒頭で紹介した自己肯定感バロメーターによって4点以下など点数が低かった人の場合、「私は自分が大好きです」と口にすることに抵抗を感じることもあるでしょう。自分で「これは嘘だ」と思いながらこの言葉を口にしても、自己肯定感を高める効果は期待できません。
「私は自分が大好きです」と言えない人は、「私は毎日少しずつ自分を好きになっていっています」と言ってみましょう。
もしこれでも抵抗を感じるなら、「私は毎日少しずつ自分を好きになることを学んでいます」「私は毎日少しずつ自分を好きになることの大切さを学んでいます」という言葉のうち、しっくりくるものを選んでください。そうして、徐々に「私は自分が大好きです」と言えるようになることを目指しましょう。
重要となるポイントは、きちんと「私は」と言うことです。日本語では主語を省略しがちです。普段の会話では「私は」と言うことは多くないかもしれませんが、このワークでは「私は」ときちんと言うことで肯定的なセルフイメージをもつことができ、自己肯定感を高める効果も高まっていきます。
【宮崎直子さん ほかのインタビュー記事はこちら】
自己肯定感を「上げたい」のに「上げられない」人は、“こんな勘違い” をしている。
シリコンバレーのエリートが高い自己肯定感をもつ理由。彼らは “これ” の達人だった
【プロフィール】
宮崎直子(みやざき・なおこ)
シリコンバレー在住&勤務歴22年。アラン・コーエン氏のもとでホリスティックライフコーチのトレーニングを受けた認定ライフコーチ。三重県の漁師町生まれ。保守的な田舎が肌に合わず、日本脱出を夢見て育つ。父の影響で人はどうすれば幸せに生きられるのか10代で考え始める。津田塾大学英文学科卒業後、イリノイ大学で社会言語学や心理言語学を学んで修士号を取得。日本NCRでプロダクトマネジャーなどを務めたのち、シリコンバレーに移住。ベンチャー企業からNTT子会社までさまざまなIT企業でマーケティング・営業職に携わる。ソフトウエア会社を起業し大手コンピュータ会社に売却。稲盛和夫氏の盛和塾シリコンバレーに8年間塾生として所属、広報を務めつつ、仏教やニューソートに基づいた真我や自我について深く学ぶ。中村天風氏、斎藤一人氏などの教えにも触れ、アドラー心理学、ポジティブ心理学、マインドセットも学ぶ。さらに、アラン・コーエン氏やアンソニー・ロビンズ氏のコーチングプログラム開発者からメンタリングを受ける。現在、鋼の自己肯定感をもち幸せに人生を謳歌する人が増えるよう活動中。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。