最も成長できるのは適度に○○を感じるとき。学びを得やすい「ラーニングゾーン」への入り方

大平信孝さん「適度に不安を感じるラーニングゾーンを目指す」01

「このままじゃまずい……」「現状を変えたい……」とは思っているものの、なかなか行動に移せないという人はいませんか? その理由に関して、「目標実現のスペシャリスト」であるメンタルコーチの大平信孝(おおひら・のぶたか)さんは、「不安を過剰に感じている」ことを一番の問題として挙げる一方、不安は学びにとって重要なものだとも言います。その真意を聞きました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/玉井美世子

人が行動に移せないのは、「決められない」「着手できない」から

人が行動に移せない要因は大きくふたつに分けられます。ひとつめは、どんな行動をすべきか「決められないということ。なぜなら、いまの時代はあらゆることについての選択肢が非常に多いからです。

インターネットが普及し、誰もがスマホやタブレットなどを手にしているいま、「自分に必要なスキル、しなければならない勉強はどんなものだろう?」と検索してみると、それこそ無限に選択肢が出てくるはずです。

また、選択肢と同様に価値観が多様化していることも「決められない」理由でしょう。なぜだかよくわからないけれどモヤモヤとして「現状を変えなければ!」と思っても、多くの人たちの多様な生き方、価値観というものがインターネットやメディアを通じてどんどん入ってくる。そのため、「自分はどう生きればいいのか……」と迷い、いつまでも決められないのです。

人が行動に移せない要因のふたつめは、着手できないということ。仕事の効率化のために便利なツールが次々に登場している一方、人手不足が深刻化しているいまはビジネスパーソンひとり当たりの仕事量が増え続けていると言われています。そうなると、かつてはなかった便利なツールを使ったとしても、どうしても仕事に追われてしまう。やりたいこと、やるべきことをしっかりと決められた人であっても、それに着手できないのです。

また、今回の本題になりますが、人が「着手できない」ことのもうひとつの大きな理由は、「不安を感じすぎている」ということです。時代の流れが速まり、「先行き不透明」なんて言葉はもう何年も前から頻繁に見聞きしますが、このコロナ禍によっていよいよ先行きが見えづらくなっています。そうして、将来に対する強い不安によって身動きできなくなっている人が増えているのだと見ています。

大平信孝さん「適度に不安を感じるラーニングゾーンを目指す」02

学びや成長を左右する「不安の度合い」の3分類

でも、安心してください。不安を完全になくすことはできなくても、ある程度は減らすことができます。不安の度合いは、コントロールできるのです。不安の度合いは、次の3つに分けられます。

「不安の度合い」の3つの分類

  1. パニックゾーン:不安が強すぎて思考・感情・行動が停止している「パニック状態」
  2. ラーニングゾーン:学びや成長を得やすい「適度な不安状態」
  3. コンフォートゾーン:不安はないが成長・進歩もない「ぬるま湯状態」

大平信孝さん「適度に不安を感じるラーニングゾーンを目指す」03

先に述べた、不安を感じすぎて行動に着手できない人は、パニックゾーンにある人です。パニックゾーンに入ると、脳の防衛本能の働きによって、思考停止、感情停止、そして行動停止の状態になってしまいます。

でも、いっさいの不安がない状態もよくありません。それはコンフォートゾーンと言われ、まったく緊張感がない状態。あらゆることに、「ま、いいか」「なんとかなるでしょ」といったふうに感じるため、成長や進歩は見込めません。

そして、「不安の度合い」のもうひとつの分類がラーニングゾーンで、このゾーンは「適度な不安状態」を指します。適度に不安を感じているということは、どこかで「いまのままではよくないぞ」と思っている。過剰な危機感をもっているというわけではなく、いい意味での緊張感とパニックには陥らない冷静さをあわせもち、前向きな意識があるのです。そのため、「ラーニング」という名のとおり、学びや成長を得やすい精神状態であると言えます。

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不安を紙に書き出し、過剰な不安状態を抜け出す

勉強熱心な人ならラーニングゾーンに入りたいと思いますよね? そこでまず、自分の不安の度合いがどのゾーンにあるのか自己分析してみましょう。タイトルを目にしてこの記事を読んでくれているみなさんなら、どこかで将来に対する不安を感じていて、同時に「成長したい」と考えているはずです。つまり、ぬるま湯状態のコンフォートゾーンにある人はいないと考えられます。

問題となるのが、不安を感じすぎているパニックゾーンにある人です。ここで、パニックゾーンを抜け出してラーニングゾーンに入るための方法をお教えしましょう。それは、自分が感じている不安を紙に書き出すという方法です。不安を箇条書きにして、「見える化」しましょう。

とても簡単な方法ですが、その効果は抜群です。不安というのは、モヤモヤと頭のなかにあるからこそ対処が難しいもの。でも、実際に書き出して客観視してみると、その対処法が具体的に見えてきます。ですから、紙の左半分に不安を書き出したら、それらの右側にその対処法を書いてみてください

また、不安には放置しておくと増えていくという性質がありますが、逆に言えば対処するための何かしらの行動を起こせば減っていくということでもある。紙に書き出すという方法によって具体的な対処法が見えるのですから、あとは行動するだけ。ぜひ、パニックゾーンを抜け出して、適度な緊張感をもちつつバリバリとよい学びを得られるラーニングゾーンのすばらしさを味わってください。

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【大平信孝さん ほかのインタビュー記事はこちら】
「10秒アクション」が先延ばし癖解消に効く脳科学的根拠。脳をだませば “行動できる人” になれる!
「やる気が出ない」は1枚の紙で解消可能。“9つの過去” を書き出すだけで行動力がみなぎるワケ。
悩みが少ない人に共通する「鈍感力」。イヤなことを “さらっと受け流す” には大事なコツがある。
習慣化はまず「10秒でできること」から始めなさい。
習慣化がどんどん加速する! 「習慣化シート」と「三日坊主シート」のすさまじい効果
悪習慣をやめたい人が「やめよう」と念じる代わりにすべきたった1つのこと
デキる人の条件は「自分で決めて、動く」こと。行動量が爆上がりする「仮決め仮行動」メソッド
不安でも動けるようになる「週1回5分」の超簡単ノート術。行動を3つ決めるだけでいい

【プロフィール】
大平信孝(おおひら・のぶたか)
1975年生まれ、長野県出身。株式会社アンカリング・イノベーション代表取締役。第一線で活躍するリーダーのためのメンタルコーチ。中央大学卒業。会社員時代、自身がキャリア構築や部下育成に悩んだ経験から、脳科学とアドラー心理学を組み合わせた独自の目標実現法「行動イノベーション」を開発。これまで1万人以上のリーダーの人材育成・セルフマネジメント・キャリア構築に関する悩みを解決してきた他、アスリート、トップモデル、ベストセラー作家、経営者など各界で活躍する人々の目標実現・行動革新サポートを実施。その功績により、メディアからの注目度も上昇中。メルマガを毎日執筆し、オンラインサロン「行動イノベーションLabo」も運営する。『「続けられる人」だけが人生を変えられる ダメな自分がなりたい自分になる“1分ノート”』(青春出版社)、『今すぐ変わりたい人の行動イノベーション』(秀和システム)、『指示待ち部下が自ら考え動き出す!』(かんき出版)、『先延ばしは1冊のノートでなくなる』(大和書房)、『「続けられない自分」を変える本』(フォレスト出版)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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