心のもやもやを晴らすシンプルな方法。正直に「好き・嫌い」で分けるだけでいい

古川武士さん「心のもやもやを晴らすシンプルな方法」01

好きなことに対する興味だけで「心」を満たせておけばよかった子どもの頃と違い、大人になると、さまざまな「やるべきこと」や「考えるべきこと」に心は占められがち。その結果として、「シンプルに生きられなくなり、自分の価値観に沿うことに集中できなくなる」と指摘するのは、習慣化コンサルタントとして多くのビジネスパーソンをサポートする古川武士(ふるかわ・たけし)さん

そういう状況を脱するため、古川さんは、著書『書く瞑想 1日15分、紙に書き出すと頭と心が整理される』(ダイヤモンド社)を通じて、心の片づけをすすめます。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/玉井美世子

心のなかの本当に大切なものを残して、不要なものを捨てる

私は、著書『書く瞑想 1日15分、紙に書き出すと頭と心が整理される』(ダイヤモンド社)を通じて、「書く」行為によって「心の片づけ」をすることを提唱しています。「心の片づけ」とは、簡単に言うと心のなかにある自分にとって本当に大切なものを残して、不要なものを捨てることです。

すると、どういうメリットがあるのでしょうか? そのメリットとは、「シンプルに生きられるようになる」ことだと私は考えています。自分にとって大切なものを残して、不要なものを捨てるのですから、残るのは「本当に自分の価値観に沿うこと」や「自分の人生のミッションだと感じられること」になりますよね。

ともすれば、「ああいう資格の取得にも興味がある」だとか「プライベートではこんなこともしてみたい」と、心のなかは「あれもこれも」とごちゃごちゃになりがちです。でもそれらは、本当の意味でのあなたの目標や人生のミッションになりえるものでしょうか? つい欲張っていただけで、よくよく考えてみるとそうではないことも多いと思います。

でも、心の片づけをすれば、厳選された「本当に自分の価値観に沿うこと」が残ります。だからこそ、それらに向かって「これこそが自分のミッションだ!」と邁進できるのです。「あれもこれも」と欲張っている状態よりも「自分はこれをやるんだ!」と集中できますから、それだけ成果も挙がりやすくなりますし、結果として人生はより充実したものになっていくでしょう。

古川武士さん「心のもやもやを晴らすシンプルな方法」02

 

「出す」「分ける」のステップで行なう「心の片づけ」

では、心の片づけの具体的な方法を紹介しましょう。これには、出す」「分けるというステップがあります。最初のステップの「出す」ものは、いいことも悪いことも含めた心のなかに抱えているもやもやです。人間は「考える生き物」ですから、そのまま放置していると、さまざまな思いがどんどん心のなかにたまっていきます。それらを、「書く」ことでまずはいったん「出す」のです。

具体的には、私が放電・充電日記と呼んでいるメソッドによって出していきます。放電日記とは、「1日のなかであなたの感情、気分、エネルギーを下げたもの」。一方の充電日記は、対照的に「1日のなかであなたの感情、気分、エネルギーを上げたもの」です。

たとえば、こんな具合でしょうか。

【放電日記の例】

  • 今日もまた寝不足気味だった
  • 洗濯物がたくさんたまっている
  • 提出が遅れている報告書の作成を先延ばししてしまった

【充電日記の例】

  • ゆっくりと1時間の読書ができた
  • 動画サイトで好きなアーティストのライブ映像を観られた
  • 上司に提出した資料の出来をほめられた

こうして放電・充電日記を書くだけでも、心にとって大きなメリットがあります。それは、書き出す行為がもつ「浄化効果」です。心のなかにもやもやとたまっていたものを出すだけで、私たちはすっきりとした気分を味わえるのです。

古川武士さん「心のもやもやを晴らすシンプルな方法」03

自分の心に正直に「好きか・嫌いか」で「分ける」

このように、ただ出すだけでも心には大きなメリットがあるのですが、今度はそうして出したものを、次のステップとして「分ける」ことを考えてみましょう。

シューズボックスに詰め込まれている靴を整理したい人が、シューズボックスにあるすべての靴を出した状況を想像してみてください。すると、なかには「こんな靴、いつ買ったっけ?」と思うものや、「昔に流行っていたから買ったけど、もう履くことはないな」と思うような靴も見つかるはずです。それらを、本当に必要なものとそうでないものに分けたらすっきりしますよね。それと同じように、放電・充電日記によって心のなかのもやもやを出したら、分けるわけです。

放電日記に書いたことに「今日もまた寝不足気味だった」とあるなら、それはあなたの心の状態をマイナス方向に押し下げるもの。そうであるなら、そういう状態はなるべく避けたい、あなたにとって不要のものです。そうして分けることができたら、「どうすれば寝不足を解消できるか」「睡眠時間を確保するにはどうすればいいか」のように考えられます。

また、充電日記に「ゆっくりと1時間の読書ができた」とあったなら、それはあなたの心の状態をプラス方向に押し上げてくれるものです。そういうものは今後もしっかり実践していくべきでしょう。そして、放電日記の場合と同じように、「もっと読書できる時間をつくりたい」だとか「今度の週末は久しぶりにゆっくり書店を巡ってみよう」と考えられ、やはり人生をより充実したものに変えてくれるのです。

ただ、この「分ける」際に注意してほしいのは、シンプルに「好きか・嫌いか」という感情基準で分けること。大人の場合、どうしても「やるべきことかどうか」「あるべき姿かどうか」といった基準で判断しがちです。つまり、つい頭で「考える」ほうを優先してしまうのです。

そうではなく、心で「感じる」ことを優先しましょう。そうでないと、本当の意味での心の片づけにはなりません。頭で考えた結果、「本当に自分の価値観に沿うこと」を残せなくなってしまったら本末転倒です。「社会人としてやるべきことかどうか」といった基準ではなく、自分の心に正直に「好きか・嫌いか」で判断してほしいと思います。

古川武士さん「心のもやもやを晴らすシンプルな方法」04

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【プロフィール】
古川武士(ふるかわ・たけし)
1977年生まれ、大阪府出身。習慣化コンサルティング株式会社代表取締役。関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。約5万人のビジネスパーソンの育成と1万人以上の個人コンサルティングの現場から「習慣化」が最も重要なテーマと考え、日本で唯一の習慣化をテーマにしたコンサルティング会社を設立。オリジナルの習慣化理論・技術をもとに、個人向けの習慣化講座、企業向けの行動変容・習慣化研修を行なっている。真の自己実現の鍵は書くことであると考え、著者自身の経験と豊富なコーチング経験から、「感情ジャーナルメソッド」を開発。活用した体験者から「人生が変わった!」「やりたいことが見つかった!」という声が寄せられている。『書く瞑想 1日15分、紙に書き出すと頭と心が整理される』(ダイヤモンド社)、『30日で人生を変える「続ける」習慣』『新しい自分に生まれ変わる「やめる」習慣』(以上、日本実業出版社)、『マイナス思考からすぐに抜け出す9つの習慣』『力の抜きどころ』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書は多く、計22冊95万部を超え、中国・韓国・台湾・ベトナム・タイでも広く翻訳されている。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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